コミックナタリー Power Push - 「僕だけがいない街」9巻

悟が命懸けで守った、大切な人々との絆を描く外伝集 三部けいが雛月、賢也、佐知子、愛梨への思いを語る

「僕だけがいない街」とは?

あらすじ
周囲で「悪い出来事」が起こると時間が巻き戻り、その事件を未然に防ぐまで同じ場面を何度も繰り返す不思議な現象「リバイバル(再上映)」に悩まされる青年・藤沼悟。とある事件に巻き込まれた彼は、その元凶と対峙するため「リバイバル」で小学生時代まで時間を逆行してしまう。同級生・雛月の失踪に事件との関係を見出した悟は彼女を助けることを決意し、未解決事件の真相に迫っていく。
「僕だけがいない街」1巻
主人公・藤沼悟
マンガ家としてデビューするもなかなか目が出ず、ピザ屋のアルバイトで生計を立てる29歳の青年。リバイバル(再上映)現象で、大人の記憶を持ったまま小学5年生へと時を遡ってしまう。頭の中で考えていたことを口に出してしまう癖があり、「声に出てた」というシーンは本編に全17回登場する。
  • 単行本2巻収録の第9話「失敗の始まり」より。
  • 単行本2巻収録の第11話「くり返す光景」より。
  • 単行本2巻収録の第11話「くり返す光景」より。

9巻の主役は、悟の大事な仲間と家族

9巻に収録されるのは、本編の完結後にヤングエース(KADOKAWA)で連載された外伝シリーズ「僕だけがいない街 Re」。主人公・悟が事件解決に奔走する中で、彼の戦いを近くで見守ってきた人々のエピソードが掘り下げられている。ここでは収録話のあらすじと、各話で主役となっているキャラクターを紹介する。

「僕だけがいない街」9巻

エピソード「雛月加代」

意識不明の重体となった悟。中学生となった雛月は、眠り続ける悟の支えになろうと部活にも入らず学校と病院を往復する生活を送る。悟が事件に遭った、1988年3月以降の物語。

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雛月加代
悟の小学校時代のクラスメイト。リバイバル前の世界では1988年3月に失踪し、連続誘拐殺人事件の最初の被害者となる。雛月が母親から虐待を受けている事実を知った悟は、周囲の協力を得て彼女を救う。
  • 単行本4巻収録の第21話「隠れ家」より。
  • 単行本5巻収録の第28話「おかえりなさい」より。
  • 単行本2巻収録の第11話「くり返す光景」より。
口癖は「バカなの?」
マンガ内で雛月が初めてしゃべった「バカなの?」は、その後も彼女の口癖として物語中でたびたび発せられる印象的なセリフ。当初は相手を突き放す辛辣な言葉という印象だったが、悟や同級生たちとの関係が変化していくにつれ「バカなの?」も、不器用な雛月なりの愛情や信頼などが詰まった特別な言葉となっていく。雛月が「バカなの?」と言うシーンは、最新9巻も合わせると全12回になる。

エピソード「小林賢也」前・後編

裕福な家に生まれ順風満帆な人生を送っているが、ケンヤの心にはいつも虚ろな感情がつきまとっていた。しかし虐待を受ける雛月を救おうと動き出す悟に対し、彼女の状況を察しながら傍観するしかなかった自分の未熟さにケンヤは気がつく。

小林賢也
仲間だけが入れる秘密のアジトを悟と共有するクラスメイト。冷静沈着で子供らしからぬ洞察力を持ち、悟に協力するうち彼も連続誘拐殺人事件の犯人を追うことになる。小説版「僕だけがいない街 Another Record」では、弁護士になったケンヤの視点から真犯人逮捕のその後の物語が披露されている。
  • 単行本2巻収録の第7話「失われた時間」より。ゲームの話ができないと嘆く友達に、違う趣味の人間が集まることの楽しさを説く大人なケンヤ。
  • 単行本7巻収録の第37話「足音」より。ケンヤは大人になり、弁護士になる夢を叶えた。

エピソード「藤沼佐知子」

女手ひとつで悟を育てる母・佐知子は、悟とともに過ごす日々に何を感じ考えていたか。悟視点で描かれた本編のエピソードを佐知子側から見る、母親の愛情が詰まった日記風物語。

藤沼佐知子
元テレビ局の報道アナウンサーで、鋭い観察眼を持つ。悟にはわからなかった不審者による女児誘拐に気が付き、事件を未然に防いだことも。しかしその一件をきっかけに、自分の正体に佐知子がたどり着くことを恐れた犯人は彼女を殺害。悟が大リバイバルをする原因となる。実年齢よりも若々しく見え、52歳という年齢を知る悟は「妖怪め」と心の中でツッコミを入れていた。
  • 単行本1巻収録の第2話「死刑囚」より。年齢に対して若すぎる佐知子の外見に「妖怪め」と、息子の悟が心の中でツッコミを入れる。
  • 単行本1巻収録の第4話「誘拐未遂」より。リバイバル現象が起きているにも関わらず、その原因がわからなかった悟。母・佐知子は、鋭い観察眼で誘拐未遂に気が付いた。

エピソード「片桐愛梨」

カメラマンを目指し、デザイン事務所に務める愛梨。しかし自分の写真を上司から否定され、彼女は仕事を辞めてしまう。本編ラストの1日が、愛梨の視点から描かれる。

片桐愛梨
悟と同じピザ屋でアルバイトをしている女子高生。言葉は口に出して言っているうちに本当になると信じ、夢や目標に対してまっすぐに突き進む。殺人犯の濡れ衣を着せられた悟を信じ、警察から匿う。一人称は「愛梨」と、自分のことを名前で呼ぶ。
  • 単行本1巻収録の第1話「走馬灯」より。夢を語ることにためらいを持たない愛梨。
  • 単行本1巻収録の第3話「死神」より。悟との距離感が縮まったことで気を許し、愛梨の一人称が「あたし」から「愛梨」に変わった。
三部けい「僕だけがいない街(9)」 2017年2月4日発売 / KADOKAWA
「僕だけがいない街(9)」
コミック / 626円
Kindle版 / 626円

ケンヤ、アイリ、佐知子、そして雛月……悟が“時”を賭けて奔走していたその裏で、悟の周りにいた彼・彼女らは何を考え、何を思っていたのか? 本編に描き切れなかった悟と仲間の“絆”を描く三部けい渾身の外伝!

三部けい「僕だけがいない街(1)」 発売中 / KADOKAWA
「僕だけがいない街(1)」
コミック / 605円
Kindle版 / 560円

毎日を懊悩して暮らす青年漫画家の藤沼。ただ彼には、彼にしか起きない特別な症状を持ち合わせていた。それは……時間が巻き戻るということ! この現象、藤沼にもたらすものは輝く未来? それとも…。

三部けい(サンベケイ)
三部けい

北海道出身。近年の作品は月刊少年エース(KADOKAWA)掲載「神宿りのナギ」、月刊ビッグガンガン掲載「非日常的なネパール滞在記」、ヤングガンガン掲載(ともにスクウェア・エニックス)「鬼燈の島—ホオズキノシマ—」など。