3年生たちにしかわからない、深い絆にシビれる

──烏丸と言えば、3年生同士の深い絆を描いたエピソードもよく登場します。

みんな同じ高校生ですけど、厳しい寮生活をくぐり抜けてきた3年生たちは、やっぱりとても大人なんですよね。1年生たちには見せない顔があって、彼らにしか共有できない思いというものがある。3年生だけが集まって、本音で語り合うところは、ジーンと来ますよね。烏丸さんともう1人3年生を選ぶなら、三遊間を烏丸さんと一緒に守っているサードの古谷さん。この2人にはグッときます。

──エースの金川も含め、チームの主力選手として、野球部の将来をよく案じていますね。

彼らには彼らなりの、上級生としての葛藤や愛情がある。にもかかわらず、下級生の前ではわざわざ口にしない。下級生は下級生で、言われなくても「3年生は何かすごい」ということを勝手に肌で感じ取っている。この暗黙の信頼関係というのが「いいなあ」って思います。

──ちなみに先ほど、烏丸の魅力は「ルックスではなく、生き様」だとおっしゃいましたが、ヴィジュアル面では誰がオススメですか？

断然、朝日出コーチです！ イケメンだし、少しSっぽいところがあるのもいい。目の保養になります。野球部のOBという設定なので、なきぼくろ先生にいつか、若き日の朝日出コーチが登場する話を描いてもらいたいです。

PL出身者が、先輩に緊張する理由がわかった

──ここからは作品全体についてのお話も聞いていきたいのですが、松嵜さんが「バトルスタディーズ」を読み始めたのはいつ頃ですか？

実はかなり最近のことで、3カ月ぐらい前からなんです。野球関係のお友達から、「面白い野球マンガあるよ」と、作品の存在を教えてもらって。すぐに電子書籍で購入しました。

──第一印象はいかがでしたか。

衝撃的でした。序盤に新入部員のお母さんから、「DL学園に入ると選手が潰されるって本当ですか？」と聞かれて、野球部長さんが華麗に質問をスルーしていたとき、「この野球部ヤベーなっ！」と（笑）。

──DLのモデルとなったPL学園の野球部が厳しい場所だということは、ご存じでしたか？

宮本慎也さんがメディアでPL学園の先輩方と共演されるとき、いつも緊張されているので、上下関係に厳しい学校だというのは知っていましたけど、具体的な中身については、この作品を読んでよく理解できた感じです（笑）。もちろんPL学園が高校野球の強豪校であることや、昨年の夏で休部になってしまったこと（※2）などは、いろいろな報道で耳にしていました。

──作中に登場する寮生活のエピソードで、驚いたものは？

どれもビックリでしたけど、「先輩がいる前で水は飲めない」というのは、単純に「ダメだよー」と思いました。アンダーシャツに付いた自分の汗を吸うとか、怖すぎるっ！ あと夜中の洗濯やボール磨きが終わらなくて、寝られないというのもかわいそうだなって。将来のために体を作らなきゃいけない大事な時期なのに……でも、「もし甘やかされてしまったら強い精神力が生まれないのかなあ」「すぐに天狗になるのかなあ」など、あれこれと考えながら読みました。

──線引きの難しい問題です。

それと野球に直接関係ない部分で、DLの国語の授業がニュース番組の鑑賞だったり、音楽の授業が「Mステ」の視聴だったりは、PLでも本当そうだったの!?と（笑）。授業でテレビを観ないと、世間の話題や流行がわからなくなっちゃうほど、情報が遮断された生活を送っているんだろうなあと思いました。

──松嵜さんは女子校のご出身ということで、中学・高校時代は狩野たちのような野球部員とは、あまり接点はなかったわけですよね。

野球部どころか、同年代の男の子たちと接する機会もほとんどなかったです。だから狩野くんたちの姿を見て、「今プロ野球で活躍している選手たちも、高校時代はこんなふうにがんばっていたのかあ」と感動しちゃいますね。ひとつのことにここまで本気になれるってすごいです。“自分の好きなものに対してバカになれる魅力”と言うか。変にキラキラしていないのがいい。さわやかな笑顔よりも、必死の形相。“キラキラ”ではなく、“ギラギラ”が「バトルスタディーズ」の醍醐味ですよ。

──ご自身は学生時代、どんな部活動を？

私は放送部でした。超厳しい先輩でしたよ（笑）。自宅で練習して来なかった下級生がいたら、「何でやらなかったの？」「やってって言ったよね？」みたいな、ハハハ。けっこう、淡々と“キレているアピール”をするタイプだったので、後輩たちから見たら、烏丸さんのような怖さがあったかも。