「あ、リアルはもういいな」
向 えなこさんは、青春時代どうでした?
えなこ 青春時代……。中2の頃、同じクラスに好きな人がいて、初めて告白したんですよ。でも私はすごくシャイだったので、直接は伝えられずにラブレターを書いたんです。親友に「渡してきて」って、お願いして。でも数日後にその2人が付き合っていて……。
向 わあ……すげえ……。
えなこ でもそれ以降ちょうど深夜アニメにハマって、そこからはアニメオタク一本でやっていくことになったんで。「あ、リアルはもういいな」と思えたんです(笑)。それが青春の思い出ですかね。
──ちょっとほろ苦いですね。向さんは学生時代にお付き合いされた方とかはいましたか?
向 いえ、いないです。告白して、終わって。その後の高校時分は、とにかく暗い奴だと思われていました。端っこで、クラスメイトのスクールカースト上位の人たちを「あいつら面白くないよな」って3年間言い続けていました。今で言う「リア充爆発しろ」的な感じだったんです。
えなこ 私は高校の頃、どうしてかスクールカースト上位のほうにいたんですよ。結構モテたりとかも……しました!(笑) 文化祭なんかでクラスのみんなでコスプレ喫茶をやろうとなると「私、衣装持ってる」みたいな感じになったりして。当時は偏見を持たれがちなコスプレでしたけど、運がよかったんだと思います。
向 ああ。やっぱりスクールカースト上位だったんですねえ……。
──残念ですか(笑)。
向 いやいや、ハイブリッドだなっていう。僕らの世代ってもう、アニメ好き=スクールカーストが低いみたいなところもあったので。えなこさんくらいの世代の方ががんばってオタクの地位を上げてくれているんだなと。
──今は学生時代に限定してお話ししてもらいましたが、そこに限らず青春を感じた甘酸っぱい思い出はありますか?
向 僕は初めての彼女が芸人だったんです。「今日ライブあるから来て」って言われて行ったら、すごくスベっているのを見てしまって。これは、どう慰めるんだ……っていうことがありました。「慰めなんていらない」みたいなけんかもありましたし。恋って難しいなという時期がありましたね……。えなこさんは青春っぽいイタい思い出ありますか?
えなこ さっきお話した中学生のときの事件が衝撃的すぎて、もうリアルはダメだと思って、乙女ゲーとかに手を出したんですよ。そこで、しばらくそのキャラクターに恋をした期間があって。胸の高鳴りが止まらなくて……。画面の中の人だから、告白もできないし。どうしたらいいんだって、勝手にドキドキしていました。夜寝られないくらいだったんです。
向 そんなに。すごいな……。
えなこ いろんなアニメとかゲームをやっていると、ある日ビビビッとくるキャラクターがたまに出てきて、その人のことしか考えられなくなるんです。歩いているときも、この後お家に帰ったら、あの人がいないかなとか、隣にいたり、一緒に寝たりできたらいいのになって妄想しちゃうんですよね。そういう青春らしい感情で思い出すのは、それしかないですね(笑)。
向 僕は正直そこまでは……。小学生のときなんかはね、「きんぎょ注意報!」というアニメのわぴこちゃんっていう主人公が好きで、彼女が出てきたらブラウン管にキスしてましたけど。それを後ろでお母さんが見ていて、「終わった。この子は……終わった!」って思っていたという話も後で聞きましたけど(笑)。でも、えなこさんみたいに「ここにいるんじゃないか」っていうのは……。
えなこ 本当ですか。妄想しませんか。
向 それはもはや山崎まさよし(の楽曲「One more time, One more chance」)みたいですよね。「いつでも探しているよ どっかに君の姿を」「こんなところにいるはずもないのに」みたいな(笑)。僕はなかったです。
えなこ コンビニで2人分の何かを買ったりしませんか。
向 いやいやいや。しませんよ! それはやっぱり、えなこさんの青春ですよ。ほろ苦さのほうですけど。
えなこ あとで自分で全部食べてるんですけどね(笑)。
向 確かに。そりゃそうですよね(笑)。
「ドッペルゲンガーにはリア充になってもらいたいです」
──思春期症候群は、思春期特有の悩みが原因となって引き起こされるようなのですが、おふたりは思春期特有の悩みってありましたか。
向 なんでモテないかとか……? でも思春期独特じゃねえな、ずっと思ってるな(笑)。中学1年生の時、仲がよかった子が徐々に、体格も変わってきて、バンドをやりだしたりするんですよ。その子にどんな感じで接すればいいんだろうというのが悩みでしたね。どういう距離感でいけばいいのかなと。急に茶髪にしているし、「尾崎(豊)、ええで」とか言い始めてるし……。関係性を保つために、僕も彼が興味を持っている何かを覚えるべきなのか、趣味が違うんで離れたほうがいいのか……。
えなこ 私は特に悩みはなかったです。コスプレは関心持ってくれるけどアニメやゲームの深い話は結局わからないみたいな人もいて、嫌になってしまうときはありましたけど、そのときはもうSNSが発達していたので。学校外にいる別のオタク仲間とよく遊んでいたので、そっちに逃げてたんですよね。そういう自分なりの解消手段があったから。
──もし、そこで解消手段がなかったとして、思春期症候群を発症したとすると、どんな現象が起こったと思いますか?
えなこ 私も麻衣と同じように、見えなくなったんじゃないかな。でも見えなくなりっぱなしは仕事ができないから困りますね。都合よく見えたり見えなかったりするといいんですけどね(笑)。
向 僕の場合はどうでしょうね。ううん。(手元の作品資料を観て)思春期症候群はいろいろ種類があるみたいですよね。同じ日がループされる現象とかドッペルゲンガーなんかもあるのか……。うん、ドッペルゲンガーですね。もう1人自分がいて、そいつがリア充担当をやるんです。
えなこ ああ、いい!
向 そいつは茶髪でバンドもやっている。で、僕は僕で、今のままアニメ好きでという感じで。……でも、リア充側のほうが僕を馬鹿にするかもしれませんね。「いつまで『エヴァンゲリオン』言うてんねん」って。
──(笑)。では最後に、おふたりが思う、作品の注目ポイントを改めて教えていただけますか?
向 思春期症候群という現象がなぜ起こっているのか、どう解決していくのかが気になりますね。あとまだ出ていないキャラたちが、いったいどう咲太と絡んでいくのか。それと豪華な声優陣ですよね。種﨑(敦美)さんがいいんですよ。別の属性喫茶の作品(「ブレンド・S」)での演技が、とにかくよかったんですよね。加えて咲太役の(石川)界人さんのこのテンションもいいなと。とにかく見どころが多い作品だなと思います。
──ちなみに、向さんが思う今後の理想の展開はどんなものですか?
向 麻衣の思春期症候群が早々に解決して、ここからはもうクリスマス会ですね。「思春期症候群ってなんだったんだろうねえ」って言って終わり、ぐらいの感じが僕はうれしいです(笑)。
──えなこさんはいかがですか?
えなこ 物語のキーになるのが思春期症候群だと思いますので、これを治すのか、はたまた付き合っていくのか。そのあたりの謎にも注目しつつ、咲太が誰とどんな関係になっていくのか。今のところ、メインヒロインは麻衣ちゃんかもしれないけど、新しい子もその関係性に入ってくるかもしれませんし、咲太も1人で生きていくことを選ぶかもしれない。とにかく、まったく先が読めないお話なので、毎週見てくださいという感じですね。それで、私の理想の展開は……完全に妄想ですけど、思春期症候群が悪化していくんですよ。1人ひとり脱落して行く。
向 極端だなあ(笑)。
えなこ 感染して全身蝕まれて、で、理央もドッペルゲンガーと戦って。
向 キャラクターがどんどん減っていく(笑)。
えなこ 結局麻衣ちゃんも自分自身が嫌になって、最終的に消滅して、見えなくなっちゃうんですよ。そして……エンド。
向 僕とえなこさんと、どっちのエンドになるのか。皆さん楽しみにしていてください。まあ、視聴者としては、どっちにもなってほしくないでしょうけどね(笑)。