「アマネ†ギムナジウム」|古屋兎丸×こざき亜衣の“思春期こじらせ系”師弟対談

先生は思春期と痛い子が好きですよね(こざき)

こざき あの「アマネ」で気になってることがあって。私、笹井さんが好きなんですけど、悪い人じゃないですよね……?

こざき亜衣が気になっている笹井。天音のノートを見ても「宮方さんって…やっぱり面白いや!」とほがらかに笑ったり、天音のお願いを聞いて球体関節人形7体を自宅に預かってくれたりと、とてもいい人として描写されている。

──笹井さんは、天音が派遣社員として働く職場のイケメン上司ですよね。

古屋 ああ、笹井さんはいい人だよ。あの人が悪い人だったら救いがないじゃん。

こざき よかった、悪い人だったらどうしようかと……。

古屋 救いがないのは天音の妄想というか、あの人形たちだね。あの中はドロドロな感情が渦巻いてるから(笑)。

こざき 先生はホント好きですよね、思春期と痛い子が。

古屋 まあね(笑)。でも大人になっても思春期の経験を引きずってる女の子って、結構いると思うし、天音に共感できる人も多いんじゃないかな。

こざき 私はすごくわかります。スケッチブックまるまる1冊ジャンヌ・ダルクの絵を描いた人間なので……(笑)。

──それはすごいですね。

古屋 そうだ、こざきさんにその話聞いて「幻覚ピカソ」でジャンヌの話を描いたんだよ。「こいつ、病んでやがる」と思って(笑)。

こざき 強い女の人に憧れてたんですよね。

古屋 それって完全に「あさひなぐ」に通じてるよね。

こざき そうなんです……全然変わってないです、私。昔から戦う女の子が好きなんです。

コザキくんに「うちの妹、上手いんで」って言われて(古屋)

──アシスタント時代のお話もお聞きしていきたいのですが、まずはこざきさんが古屋さんのアシスタントに入った経緯を教えてください。

こざき亜衣との出会いを楽しそうに語る古屋兎丸。

古屋 きっかけは、こざきさんのお兄さんのコザキユースケくんからの紹介です。以前、彼がうちのアシスタントをやってたことがあって。人手が足りなくて「誰か上手い人紹介して」って言ったら「じゃあ妹を送り込みます!」と。そしたら、ギャルっぽいメイクした女の子がやって来た(笑)。

こざき 22、3才の頃ですね。

──デビューされる前ですか?

古屋 デビューも何も、まだ何者でもない頃ですよ。

こざき 絵はずっと描いていたんですけど、ちゃんとマンガを描いたことはなくて。ちょうど大学を辞めてフラフラしてたんですよね。

古屋 コザキくんに「うちの妹、上手いんで」って言われて半信半疑だったんだけど、試しに描かせてみたら確かに上手くて。初めて描いた背景、覚えてる?

こざき 覚えてます、覚えてます。「ライチ」の最初のほうですよね。

「ライチ☆光クラブ」より、こざき亜衣が古屋兎丸のアシスタントとして初めて背景を手がけたページ。 ©「ライチ☆光クラブ」古屋兎丸/太田出版

古屋 第2話冒頭の登校シーンの背景を描いてもらって。それを見て「できるな」と思って、いろいろ描いてもらうようになった。特に火傷とか洋服のシワとか、質感の表現が上手くて。

こざき あとライチの頭にかぶせる、王冠みたいなやつ。アレを描く係でした。

古屋 「こいつ描けるぞ」ってなってからは、無茶ぶりをするようになって(笑)。「彼女を守る51の方法」では、逃げ惑うギャルたちを100人ぐらい描いてもらったり、「幻覚ピカソ」では、びっちり埋め尽くされた土偶を描いてもらったり。

こざき ありましたね。土偶はちょっとだるかったな(笑)。

古屋 でも「わかりやしたー」みたいな軽いノリで、上手いこと描いてくれたよね。

──アシスタントはいつまで務めてらしたんですか?

こざき 「あさひなぐ」の連載が決まるまでやってました。途中で1年ぐらいブランクがありますけど。

古屋 1回辞めてたんだよね。5週連続掲載が決まって……あの作品はどこに載ったんだっけ?

こざき亜衣

こざき モーニングです(笑)。

古屋 そうだった、講談社だ。

こざき 短期連載の後、本格連載するって決まって。尼さんのコメディを描こうと思って、尼寺に修行にも行ったんですけど、私が全然ダメダメで本格連載には至らなかったんです……。都合いい感じで古屋先生のところに出戻ってきて(笑)。

古屋 でも尼寺のエピソードが「あさひなぐ」に活きてるじゃん。

こざき そうなんですよね。修行に行った3日間、無駄じゃなかった(笑)。

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耽美な人形作家・宮方天音の素顔は、地味な派遣社員。ある日、贔屓にしていた画材屋を訪れた天音は、店主・西園寺徳一から店じまいをすることを告げられる。途方にくれる天音だったが、代わりにもらった50年前の粘土を元に、どうにか7体の少年たちを作り上げる。無事、個展を終えた天音は、徳一から告げられた「粘土の秘密」を思い出し、人形たちに“あること”をしてしまい──。

こざき亜衣「あさひなぐ」22巻
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中学まで美術部だった東島旭は、「強い女」になるため二ツ坂高校薙刀部に入部する。まったくの素人からでも活躍できる可能性がある“高校部活界のアメリカンドリーム”、それが薙刀。その言葉を胸に刻み、日々旭は強くなるため練習に励むのだ!

古屋兎丸(フルヤウサマル)
古屋兎丸
1994年にガロ(青林堂)より「Palepoli」でデビュー。以後、精力的に作品の発表を続け、緻密な画力と卓越した発想力、多彩な画風で、ヒット作をコンスタントに発表する。主な著書に舞台化、映画化を果たした「ライチ☆光クラブ」をはじめ、「インノサン少年十字軍」「幻覚ピカソ」「人間失格」「帝一の國」など。現在モーニング・ツー(講談社)にて「アマネ†ギムナジウム」、ゴーゴーバンチ(新潮社)にて「少年たちのいるところ」をそれぞれ連載中。「帝一の國」は3度にわたり舞台化されたほか、実写映画が4月より公開される。
こざき亜衣(コザキアイ)
こざき亜衣
「さよならジル様」でちばてつや賞一般部門大賞を受賞。2011年より、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「あさひなぐ」を連載開始。「あさひなぐ」は2015年に第60回小学館漫画賞一般向け部門を受賞し、映画化と舞台化も決定している。