コミックナタリー PowerPush - 真田ジューイチ「危ノーマル系女子」

ストーカー、殺人鬼、電波系、ドM… アブノーマルなヒロイン集う、「ヒャッコ」作者の新境地

女の子が何人もいて全員が美人なはずない

──「危ノーマル系女子」にはストーカー、殺人鬼、電波系と、ひと癖もふた癖もあるヒロインが7人も出てきます。

「危ノーマル系女子」1巻

「ヒロイン全員が変な属性を持っている」っていうのが作品のコンセプトなんですよね。僕の作品はキャラクターが主軸だと思っているので、それぞれの属性に合ったデザインになるように差別化しています。ただ1巻で7人全員が出てくるから、後発のキャラクターはほかと被らないようにするのが大変でした。

──特に難産だったキャラクターはいますか。

ストーカーキャラの十華は結構悩みました。ストーカーっていう言葉から連想するビジュアルって、あんまりないじゃないですか。強いて言うならキモい感じになるんでしょうけど、それをマンガの中でやるわけにもいかないですし。表紙も飾っている一番のメインヒロインなので、ほかのキャラとの兼ね合いも考えて、結局美人という設定にしました。ただ「危女」は全員が全員を美人には描かないようにしようと思っているんです。

──えっ、それはなぜでしょう。

「危ノーマル系女子」より、奥居赤鐘。

フィクションではあるんですけど、リアル寄りな世界観だから、女の子が何人もいて全員美人というのはできすぎかなという気がして。特に吸血鬼の赤鐘あたりはやや崩れた顔つきにしています。

──確かに赤鐘は、連載の中でもだんだん人間離れしたビジュアルに変化してきています。

もともと吸血鬼という設定もあって、口が裂けたりしてますからね(笑)。でも特徴的な部分があるキャラクターというのは、描いていて刺激的ですね。

十華はちょっと読み方を変えると“ストーカー”に

──真田先生といえばキャラクターのネーミングが特徴的だという印象があります。「ヒャッコ」では、メインキャラクターの名前を四神から取っていましたが、「危女」でもそういった法則性はあるんでしょうか。

登場人物の名前には、各キャラクターの持っている属性を入れています。十華(とおか)ならちょっと読み方を変えると“ストーカー”になる、みたいな感じで。ほとんどダジャレなんですけど(笑)。

──ああ、言われてみるまでまったく気づかなかったです。

サイン会で「このキャラクターの名前ってこういう意味ですよね?」って言ってくださる方もわりといるんですよね。ぱっと読んだだけではわからないようにしているつもりではあるんですけど。一応7人それぞれの名前に意味を持たせているので、意識してみてもらえると。

「危ノーマル系女子」第1話より。

──なるほど。ではそのヒロインたちに囲まれて毎日を過ごす、主人公シンヤのキャラクターはどのようにしてできあがったのでしょうか。

先ほどのコメディ色の強い作品にする予定もあった、という話ともリンクしているんですけど、もともとシンヤはヒロインたちに振り回されて、慌てふためくというキャラクターだったんです。ただサスペンスの方向に舵を切ると決めたときに、ヒロインと淡々と付き合える性格にしたほうがこの物語には合っているんじゃないかなと思って。最終的に今のようなキャラに落ち着きました。

2巻構成だとキャラに深みが出ない

──以前、お話をお伺いした際に(参照:「エルフを狩るモノたち2」特集、矢上裕のカレー作りに密着&真田ジューイチ・TOBIを迎えての座談会)「危ノーマル系女子」は当初、2巻程度で終わらせる予定だったと仰っていました。

当初の構想通り上下巻に収められなかったのは、ひとえに僕の見通しの甘さが原因ですね(笑)。1巻はわりと自分の中でのイメージ通り、7人のヒロインを紹介しつつ、シンヤが女の子たちとワイワイするっていう話が描けていたんです。ただ2巻で構想から逸れてしまって。

──2巻では少女ばかりを狙う殺人鬼と、それを探る主人公のシンヤたちのエピソードが展開されますね。

「危ノーマル系女子」2巻表紙に使用された十華のカット。

最初は前後編にするつもりだったんです。でも気づいたら単行本の3分の2を超えていて、終わってみればまるまる1巻使っていた(笑)。完全に想定外だったんですけど、描いている途中で、全2巻だと作品に雰囲気が足りないないなと考えたりもして。

──雰囲気、というのは。

全2巻って連載が始まってトップスピードのまま終わっちゃうような長さなので、キャラに深みが出ないというか物足りない。一応最初と最後の話だけはほぼ固まっていたので、いっそのことヒロインたちをもっと掘り下げて、それぞれに深みを与えられるような長い話にしようと決めたんです。そのほうが面白くなりますし。

各キャラクターのファンは今後の展開に注意

──では今後の展開についてもお伺いできますか。

基本的にはメインヒロイン7人のお話を展開していきます。3巻ではネクロマニアの女性とか、新キャラも出ましたけど、これはあくまでイレギュラーですね。

──7人をさらに掘り下げていく。

「危ノーマル系女子」のカラーカット。

そうですね。自分ではやっぱりキャラクターものだと思っているので。掘り下げていく中で、各キャラクターのファンの方は注意、というか。

──注意という表現なんですね(笑)。

どんな裏が出てくるかわからないですからね。自分では面白いのかどうか迷いながら描いている部分もあるんですが、出せるものはすべて出しているので引き続き読んでもらえるとうれしいです。

真田ジューイチ「危ノーマル系女子(3)」発売中 / 616円 / ほるぷ出版 / Amazon.co.jp
真田ジューイチ「危ノーマル系女子(3)」

お待ちかねの第3巻登場!!
新キャラ登場で、複雑に絡み合う“危女”の面々。
「“狐”という名の男に遭った事はないか、少年。」

COMICメテオ

連載タイトル

真田ジューイチ「危ノーマル系女子」/宮場弥二郎「UNCOntrollable」/矢上裕「エルフを狩るモノたち2」/TOBI「お前ら全員めんどくさい!」/九段そごう「俺とヒーローと魔法少女」/藤原里「俺ともやしとお花屋さん」/由伊大輔「温泉幼精ハコネちゃん」/カヅホ「カガクチョップ」/緋呂河とも「神様桜木プロデュース」/将良「思春期ビターチェンジ」/氷川翔「篠崎さん気をオタしかに!」/ユキヲ「邪神ちゃんドロップキック」/森岡浩之、米村孝一郎「星界の紋章」/もりた毬太「宙のアポリア」/藤原里「にゃんこい!」/けものの★「人身御供の緋山さん」/犬星「ひまわり町サンロードガールズ」/吉永裕ノ介「ブレイクブレイド」/万丈梓「変則系クアドラングル」/山崎毅宜「ほしの女王様」/武川慎「道割草物語」/とこみち「ゆーあい」/三星めがね「恋愛暴君」

真田ジューイチ(サナダジューイチ)

真田ジューイチ12月19日生まれ。愛知県出身、大分県育ち。Webマンガ誌のCOMIC SEED!にてマンガ家デビューを果たす。その後「夕日ロマンス」などの作品を発表。カトウハルアキ名義で執筆した「ヒャッコ」はTVアニメ化、ゲーム化も果たしている。現在COMICメテオにて「危ノーマル系女子」を連載中。