ナタリー PowerPush - コロッケ

DVDが2タイトル同時発売 芸歴33年、新たな挑戦を語る

モノマネ一筋33年、コロッケ渾身のDVDが2タイトル同時に発売された。単独撮り下ろしライブDVD「コロッケ アコースティックものまねライブ」は、谷村新司、松山千春、長渕剛の「ものまねコンサート」をはじめ、コロッケの名人芸の数々を堪能できる作品だ。

もう一方のDVD「コロッケ 爆笑ものまね楽語会 ~大笑い文七元結~」では、コロッケが芸能人のモノマネを駆使して人情噺「文七元結(ぶんしちもっとい)」に挑戦。コージー冨田、ホリ、葉月パル、古賀シュウを交えて5人全員が武田鉄矢のモノマネで展開する「長屋の花見」など、貴重な映像も収録されている。

今回、お笑いナタリーではコロッケに初インタビューを敢行。それぞれのDVDがどのような経緯で誕生したのか、さらには発想の膨らませ方やエンターテインメント観など、たっぷりと話を聞くことができた。

取材・文 / 遠藤敏文 撮影 / 辺見真也

マイク1本で何ができるんだっていうことに対する挑戦

──今回DVDが2タイトル同時発売されます。まずは「アコースティックものまねライブ」のほうから、この企画が生まれた経緯を教えてください。

DVD「コロッケ アコースティックものまねライブ」の一場面。

基本は、マイク1本で何ができるんだっていうことに対する、1つの自分なりの挑戦です。いま、モノマネやる人って、パロディ派とコピー派に分かれてるんですよ。それを両方ひっくるめて音楽的な形でやる人が減ってきてるんですね。コピー派は、ちゃんとモノマネやってうまいんだけど、ふざけない。で、パロディ派は、どっちかっていうとトークがメインになってきていて、その人の歌とかモノマネを絡めるようなエンターテインメント性が薄れてきていると。ある意味モノマネ界というものに喝を入れる部分と、自分に対しての「まだまだマイク1本でもできますよ」という部分の両方があるんです。

──いままでのDVDと比べるとタイプが違いますね。

はい。今回はシンプルにモノマネを見ていただこうと。着替えたり、いろんなセットを使ってやるのもあるんですが、アコースティックなものっていうのは僕の中で原点なんです。モノマネに対してもそうだけど、お笑い界に対しても、今笑いがエンターテインメントしてないと僕は思っていて。例えば、「10代、20代にウケればいい」みたいな印象というか。子供からおじいちゃん、おばあちゃんまでウケるっていうことを考えてない子たちが多いんじゃないかな。それって僕の中では笑いじゃないと思っていて。

──みんなで楽しめる笑いが昔に比べて減っていると。

DVD「コロッケ アコースティックものまねライブ」の一場面。

そうですね。そこはちょっと自分なりに、本当のお笑いやエンターテインメントっていうのはこういうことじゃないかなっていうところを示したいと思っていて。それもマイク1本でどういう形でできるかっていう。今の子たちって1人でステージに上がっても30分持たないと思うんですよ。せいぜい10分、15分だと思うんです。僕はやっぱり2時間とか3時間、平気でやりますから。今回のDVDは、若手に対する自分なりのメッセージっていう意味合いもあります。いまは、ひな壇にいて、誰かがイジってイジられてっていう繰り返しが多いから。1人で「どうぞ!」って言われたときに何ができるか。それを見せたいです。

モノマネは似てないほうがいい

──子供からお年寄りまで笑わせるコツは?

コロッケ

モノマネに関して言えば、僕はモノマネっていうのは、似てるからいいとか、似てないからどうだとかっていうことにこだわるものでもないと思ってる人なんで(笑)。というよりも、むしろ似てないほうがいいと思っていて。2割3割似ていれば、僕の中では全然OKなんですね。あとの7割8割は、オリジナル。自分のふざけ方、自分の崩し方。元になっている人を知らなくても楽しめるのが大事なんです。最近はよくインターネットでも「コロッケのモノマネ似てない」とか書かれるんですけど、僕の中ではゴキゲンなコメントで(笑)。似てないのに33年モノマネやってる芸人ってどうなんだっていう。だから、似てる、似てないにこだわってないってことが、わかってもらえると嬉しいです。

──このDVDでは、一瞬だけスギちゃんのモノマネが出てきたり、選曲もきゃりーぱみゅぱみゅやAKB48の曲が入っていたりと、そのとき話題になっている人を積極的に取り上げている印象を受けました。

コロッケ

自分の中で“残してる感覚”みたいなものがあるんです。20年後、30年後に見たときに、「あ、コロッケこのときこんな人やってたよ」って振り返ることができるじゃないですか。テレビだと録画しないと流れていくけど、DVDだと形に残ってるんで。僕のテーマでもあるんですけど、20年、30年経ったときに後輩のモノマネ芸人が僕のDVDを見て「あっ、先にやられてた!」ってガッカリするっていう(笑)。僕がもう死んじゃって、何十年か経ったときに誰かがロボットを思いついてやり出すんだけど、「これ見た?」って別の誰かがこのDVDを持ってきて、「実は……」「うわっ」っていう。「歌って踊って顔がズレていって……ダメだ、この人もうやってるわ!」って。僕は、やっぱチャップリンなんかその最たるものだと思う。哀愁がある笑いもできる、世相を斬ることもできる、さみしさ、切なさ、楽しさもある。すべてにおいてそれを笑いにつなげた一種の革命家みたいなもんですよ。だから僕も革命を起こすほどでもないけど、「やっぱりあの時代からモノマネって変わったよね。コロッケってやっぱずーっと変なことやってたよね」って言われるようになりたいですね。