音楽ナタリー Power Push - ZAQ

「hopeness」に詰め込んだ希望と決意

「女性シンガーソングライターっぽいこと」を歌ってみた

──ところがカップリング1曲目の「ヒロインは嘘」の詞は、1コーラス目のAメロから最後の大サビまで、徹頭徹尾、二股を掛けられた女の子の恨み節で貫かれています。

「女のシンガーソングライターといえば、こういう歌でしょ!」ということで(笑)。

──だから「これ実体験?」なんて思ったりもしたんですけど、「失恋した瞬間こそ歌詞がポジティブになる」っておっしゃるし、この詞はなんだ?と(笑)。

アイロニーに充ち満ちた実験です! 「希望にあふれたメッセージを届けていた人が、突然ズドーンっと落ちたことを歌ったら面白いかなあ」ということで、ドロドロの恋愛を書きたくなっちゃって(笑)。「お前、女やなあ」っていう詞、男の人が引くような詞を書きたかったんですよね。

──であれば、実験成功です。正直、ちょっと引きましたから(笑)。

ありがとうございますっ!(笑) 友達の1人にアホな恋愛ばっかりする「なんでそんな男ばっかり選ぶの?」ってツッコみたくなる子がいるので、その子の気持ちになって書いてみました。

──自分が悪い男に引っかかったわけでもないのに、なぜ「女性シンガーソングライター、かくあるべし」というスローガンのもとラブソングを書こうと?

やっぱり「hopeness」を聴いた人をズドーンッと落としてみたかったからですね。

──でも人がズドーンッと落ちる物語は何も悲恋ものだけじゃない。別の物語を書いてもいいのに「重たいラブソングを歌いがちな女性シンガーソングライター」像を背負ったのには何か意図がある気がします。

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「hopeness」のアレンジの話と一緒で、そのとき私が興味を持ったからそうしただけというか、単にヒネくれてるんですよ(笑)。女の子の中には自分の抱えている悲しみに浸りたがる子もいることだし、そういう子たちに聴いてもらえたらいいな、とも思ってはいるんですけど、それ以上に「女性シンガーソングライターが、女性シンガーソングライターっぽいことをベタに歌ってみたら面白いんじゃないか?」っていう気持ちが強かったですから。

──なるほど(笑)。で、この曲のサウンドなんですけど、全部生ですよね?

「女性シンガーソングライターの失恋ソングといったら、生楽器のハードロックバラードだろう」と(笑)。だからカップリングのほうがレコーディングにお金がかかってるんです。全部スタジオで録らなきゃいけなかったから。

「バラ色の人生」って何色だよ?

──もう1つのカップリング曲「薔薇の腰かけ」ではまたもレトリックが一転。幸せを求めて旅する少女の姿を客観的視点で描いています。

最初は「旅する少女の目に映る風景だけを切り取ろう」と思っていたんですけど、書き進めているうちに少女が旅する理由が気になっちゃって。それで「ちょっとだけ説教しよう」ということになり……。

──サビの「『バライロノジンセイ』とは何色か知らず」というラインが生まれた?

そうですね。お前「バラ色の人生」とか言ってるけど、それ何色だよ?と(笑)。

──赤いバラも咲いていれば、ピンクや白や黄色も咲いてるし、青いバラも作れるらしいし。

それで、バラ色の人生という幸せを求めてひたすらに旅を続けるんだけど、実は幸せの正体なんて知らない女の子の話にしてみました。

──あのラインにはハッとさせられました。それこそなんの疑問も覚えずに「バラ色=ハッピーな色」だと思い込んでいただけに、ZAQさんにツッコまれて初めて「確かにバラ色って何色だ?」って気付けたというか。

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ヒネくれた人間だからこそ、私はいち早く気付いちゃったのかもしれないですね(笑)。でもその発見のおかげで詞の中で「バラ色」とメーテルリンクの「青い鳥」を対比させることができて。一般的に幸せの象徴だとされている2つの色を比べてみることで幸せの形のあいまいさを描けたし、「説教しよう」とはいっても、“生と死”や“愛情と憎悪”を扱ったほかの2曲ほど強いメッセージを込めていないのもいい感じだと思ってますし。パンチラインは1カ所でいい。「『バライロノジンセイ』とは何色か知らず」っていうラインをしっかり届けられて、その上で「hopeness」と地続きなんだけど、もっとハウスに寄せたスムーズなアレンジとメロディを楽しんでもらえれば、と思っていたので。

みんなダブステップとかヒップホップとか好きでしょ?

──今回のシングルにはもう1曲、ZAQさんと一緒に「Animelo Summer Live」のステージにも上がったトラックメーカー・A-beeさんによる「hopeness」のリミックス版も収録されています(参照:アニサマ2013初日“週末超人”ももいろクローバーZ緊急参戦)。

このリミックス、カッコいいですよねえ。私のボーカルを聴かせることなんかほとんど無視して、すごくコアなことをやっていて。

──ベン・シムズやSurgeon的、UKハードテクノっぽくお色直しされていますよね。

A-beeさんって今、すごく忙しい方なので捕まえるのが大変だったんですけど、すがるようにお願いした甲斐がありました(笑)。

──そのハードテクノであったり、「薔薇の腰かけ」のハウスであったり、「hopeness」のジャズファンクであったりの魅力をアニソンファンに伝えたいって気持ちはあったりします?

ありますね。どれも好きなジャンルだから、みんなとその面白さを共有したいし、おこがましい話かもしれないけど、私の作る横ノリの曲が存在することでアニソンというジャンルに広がりが生まれるんじゃないか?という気もしています。それにどのジャンルも、世界的に見ればアニソンよりリスナーが多いじゃないですか。そういう売れてるジャンルを取り入れれば、もっとCDが売れるかもしれないですし(笑)。

──あはははは(笑)。

それは半分冗談ですけど(笑)、「売れてるってことはみんなが好きなジャンルってことだから、アニソンファンだって好きなはず」という思いはあって。「OVERDRIVER」なんかも「ダブステップに乗せてラップしてる曲とかみんな好きでしょ?」「私も超好きだし」って言いながら作ってましたから。

──「スクリレックスやケンドリック・ラマーのことが好きなら、私の曲も聴いてみてよ」と。

そうそうそう(笑)。「いい感じでしょ?」って。今はダブステップやヒップホップやジャズファンクとは違うブームが私の中できてるので、また新しい「ちょっとこれ聴いてみてよ」っていう曲を作ることになると思います。

ZAQ
ZAQ ニューシングル「hopeness」 / 2016年2月3日発売 / Lantis
DVD付き限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / LACM-34447
アニメジャケット盤 [CD] / 1404円 / LACM-14447
CD収録曲
  1. hopeness
  2. ヒロインは嘘
  3. 薔薇の腰かけ
  4. hopeness cut out A-bee remix
  5. hopeness(OFF VOCAL)
DVD付き限定盤付属DVD収録内容
  • hopeness Music Video
  • Making of hopeness
ZAQ(ザック)
ZAQ

シンガーソングライター。3歳の頃からピアノを始め、音楽大学のピアノ科に進学。当時触れたアニメソングに衝撃を受け、アニソンシンガーを目指すように。そしてニコニコ動画主催のコンテストでファイナリストとなったことを契機に、2012年、アニメ「未来日記」のキャラクターソング「正義戦隊ゴ12th!!」のサウンドプロデュースを手がけてクリエイターデビュー。その後もさまざまなアニメ作品に楽曲を提供し、また同年10月にはアニメ「中二病でも恋がしたい!」のオープニングテーマ「Sparkling Daydream」でアーティストデビューを果たす。以来順調にシングルリリースを重ね、2014年4月には初のオリジナルフルアルバム「NOISY Lab.」を発表。また2013年以来、毎年、国内最大級のアニメソングイベント「Animelo Summer Live」に出演している。そして2016年2月、士郎正宗と六道神士が原作を手がけるテレビアニメ「紅殻のパンドラ」のオープニングテーマにして10枚目のシングル「hopeness」をリリースした。