音楽ナタリー Power Push - ウォルピスカーター

先々まで見据えた“ウォルピス社”の戦略

ウォルピスカーターがニューアルバム「ウォルピス社の提供でお送りしました。」をリリースした。

“高音出したい系男子”の異名を持つウォルピスカーターが約1年ぶりに発表する今作には、ニコニコ動画の“歌ってみた”カテゴリで人気のカバー曲のほか、164、koyori、MI8k、はりーPといったクリエイター陣による書き下ろし曲、ウォルピスカーター自身が作詞に挑戦した万玄斎とのコラボ曲など、計12曲が収められている。音楽ナタリーではウォルピスカーターに2度目のインタビューを実施。「好きな曲を詰め込んだ」1作目と異なり、戦略的に曲のテイストなどを統一させたという今作の制作背景を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 小坂茂雄

求められるものを変えて、ライブへ

──前回のインタビューでライブへの出演について「もう無理だなと思って辞めたんです」(参照:ウォルピスカーター「ウォルピス社の提供でお送りします。」インタビュー)とおっしゃっていましたが、昨年末のAfter the Rainのイベントに出演しましたよね(参照:2人で1つのAfter the Rain、仲間や観客に支えられ年越し公演完遂)。

ずっと「ライブには出たくない」って言い続けてきたんですけど、後々の展開を考えて「やっぱりライブもやらなきゃいけない」というのは自分の中でも薄々感じていたんです。だから自分のTwitterでさりげなく、ライブに出ることを想定した発言をするようにしていて。

──Twitterのプロフィール欄に「ライブ 出ません」って書いてあったんですが、いつの間にかなくなっていました。

ウォルピスカーター

ライブの出演が決まりそうな時期に消しました(笑)。それだけじゃなくて、僕は“高音出したい系男子”だから、どうしても高い音域の曲が求められるんですけど、それに応えられるのは動画だけで。「実際にライブで歌うときはそんなに音域の高い曲は歌えませんよ」っていうのを定期的に発言することで、予防線を張っておいたんです。要は求められるものを変えていこうって。

──前回のインタビューでも音域の高い曲は何日もかけて録るとおっしゃっていましたもんね。

そうなんです。ぶっつけ本番で音域の高いボカロ曲をフルコーラスで歌うのはかなり厳しいですから。

──年末のライブでは「4年ぶりにステージに立った」とおっしゃっていました。ライブに出演することに対しての葛藤はありましたか?

もちろんありました。単純に「出たくないな」っていう。でも4年前より歌もうまくなったし、ライブが楽しみっていう気持ちも20%くらいはあったんです。20%ですけど(笑)。

「僕らでまふまふさんを支えなきゃいけない」

──そもそもなぜAfter the Rainのイベントに出ることになったんですか?

まふまふさんから「出てみない?」って声をかけてもらったんです。最初は気が動転して「大丈夫です」ってよくわからない断り方をしたんですけど、もう一度お誘いいただいたときに「考えさせてください」って返事をして。「ゲストで2曲ぐらい歌ってみてほしい」ということだったので、それくらいなら大丈夫かなと思って、出させてもらうことになりました。

──イベント当日は主催者の1人であるそらるさんが急遽出演できなくなり、まふまふさんを中心に出演者全員でそらるさんが歌う予定だった曲をフォローしてイベントを実施しました。演者はもちろん、お客さんも含めて一体感の強いライブだったと記憶しています。

ウォルピスカーター

本当にイベント直前にそらるさんが出演できないことが決まって。それからまずはゲストだけで集まって話し合ったんですよ。「ゲストの僕らでまふまふさんを支えなきゃいけない」って話をしてから、スタッフさんやまふまふさんを入れて、「イベントを成功させましょう」って一致団結したんです。責任感みたいなものもあって、一体感はすごく強かったですね。結果僕は2曲どころじゃなく、倍くらい歌うことになったんですが(笑)。

──After the Rainの曲で、ウォルピスさんがまふまふさんのパートを歌い、まふまふさんがそらるさんのパートを歌うという珍しいコラボもありました。

僕、もともとまふまふさんのファンで「まふまふさんの曲だったらだいたいいけます」なんてポロッと言っちゃったんですよ。そしたら「じゃあコレとコレよろしく」ってなっちゃって。まあでもなんとか乗り切れました。

──実際にステージに立ってみてどうでしたか?

無事に終わってよかったなって気持ちが一番ですね。ライブ中は必死だったし、終わったあとはちょっとグッタリしてました。それと年末のライブだったのに新年を迎えた感じがあまりしなくて(笑)。みんなとカウントダウンをしたはずなのに、年が明けた感覚がしばらくなかったです。

ニューアルバム「ウォルピス社の提供でお送りしました。」 2017年2月22日発売 / Subcul-rise Record

Amazon.co.jp限定 本人によるボイトレCD付
初回限定盤 [CD2枚組+特典CD] 2700円 / SCGA-00055~6
「ウォルピス社の提供でお送りしました。」
通常盤 [CD+特典CD] 2300円 / SCGA-00057
通常仕様
初回限定盤 [CD2枚組] 2700円 / SCGA-00055~6
通常盤 [CD] 2300円 / SCGA-00057
DISC 1(全仕様共通)
  1. 潜水艦トロイメライ
    [作詞・作曲:トーマ]
  2. Good Morning, Polar Night
    [作詞・作曲:ゆっけ]
  3. 夕刻リビドー
    [作詞・作曲:koyori]
  4. メリュー
    [作詞・作曲:n-buna]
  5. ストリップマインド
    [作詞・作曲:MI8k]
  6. ヤンキーボーイ・ヤンキーガール
    [作詞・作曲:トーマ]
  7. 雨き声残響
    [作詞・作曲:Orangestar]
  8. 無花果
    [作詞・作曲:164]
  9. 20億走
    [作詞:ウォルピスカーター / 作曲:万玄斎]
  10. 愛に奇術師
    [作詞:作曲:koyori]

  11. [作詞・作曲:針原翼]
  12. 晴天前夜
    [作詞・作曲:針原翼]
DISC 2(初回限定盤付属)
  1. 君の知らない物語
    [作詞・作曲:ryo]
  2. 魂のルフラン
    [作詞:及川眠子 / 作曲:大森俊之]
  3. God knows…
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:神前暁]
ウォルピスカーター1stワンマンLIVE
~2017年度 ウォルピス社株主総会~

2017年5月13日(土)
東京都 下北沢GARDEN

ウォルピスカーター
ウォルピスカーター

ニコニコ動画を中心に活動する男性ボーカリスト。“高音出したい系男子”の異名を持つ。2012年の初投稿以来、ニコニコ動画に“歌ってみた”動画を多数公開している。2015年4月に投稿した「アスノヨゾラ哨戒班」(Orangestar)の歌唱動画が580万再生を記録した。2016年1月、1stアルバム「ウォルピス社の提供でお送りします。」をリリース。同年12月にはAfter the Rainのカウントダウンイベント「After the Rain COUNTDOWN PARTY 2016-17」に出演し、4年ぶりにオーディエンスの前でライブを行った。2017年2月に2ndアルバム「ウォルピス社の提供でお送りしました。」を発表し、5月には初のワンマンライブとなる「ウォルピスカーター1stワンマンLIVE ~2017年度 ウォルピス社株主総会~」を開催する。