音楽ナタリー Power Push - ウォルピスカーター
先々まで見据えた“ウォルピス社”の戦略
ゼロから言葉を生み出す苦しみ
──さらに今作にはウォルピスさんが初めて作詞に挑戦した曲「20億走」が収録されています。作詞の作業はいかがでしたか?
これを毎回やるのは厳しいなって感じでした(笑)。僕ら“歌い手”って二次創作者というか、基本的にカバーを歌う人なんですよね。なのですでに曲が完成しているものに対して、自分だったらどういうアプローチで個性を出していけばいいかって考えていけばいいんですけど、作詞や作曲ってオリジナルを作る行為だから今までの感覚とは全然違って。ゼロから言葉を生み出す苦しみを味わいました。納期のギリギリまで書けなくて、レコーディングも最後になった曲ですね。
──作曲を手がけた万玄斎さんには何か相談したんですか?
万玄斎は僕と同い年で、親交もあったから作詞のアドバイスみたいなものをもらったんですけど、最終的に彼のアドバイスはあまり参考にせず自分で書きました。一度書いたものを見せたら、僕が書いた歌詞より言葉が増えて返ってきて。どういうことか聞いてみたら「休符があるのが怖くて耐えられないから、文字を増やしちゃった」って言ってました。歌うのは僕なのに(笑)。
──「20億走」の詞はどういうイメージで書き上げたんですか?
もともと曲の方向性を「ロックバラードみたいな感じにしよう」って2人で決めていたんです。悲しい曲とまではいかないけど、ちょっと寂しい感じの雰囲気になったので、苦しみを歌う曲なのかなあって考えて。端的に言うと最初から最後まで「死にたい」っていう気持ちを歌ってる曲です(笑)。
──ただ歌詞の最後は「それでも」で結ばれていて、希望を表しているのかなと思いました。
「そうは言ってもやっぱり死ねないよね」っていう意味で「それでも」って書いたんです。ネガティブなりに前向きというか。僕のネガティブな内面が濃く出た曲になったなあ。
──自分で書いた詞を歌う感覚ってどうでしたか? 今までの歌入れと何か違いはありましたか?
自分で書いた詞を歌うときはけっこう心構えが変わるのかなって思ってたんですけど、意外といつも通り歌っている自分がいて。歌詞の捉え方はどの曲でも一緒なんだっていう発見がありました。
一番のリスペクトは本家のまね
──今作の初回限定盤にはアニソンのカバーを収録したCDが付属します。アルバムのコンセプトである“大人っぽさ”とは真逆で、アップチューン3曲入りの内容ですね。
このCDに関しては好きを詰め込みました。歌いたい曲がたくさんあったので、3曲に絞るのが大変で。僕とリスナーさんの年齢差っていうのがけっこうあると思っているので、自分が好きな曲をみんなが知っているかなっていうのはちょっと気になりました。
──そういう意味では「魂のルフラン」は年齢層高めのファンが喜びそうな選曲ですね。
おじさんに響いてほしい曲です。同年代の人にもCDを買ってもらいたいですね。
──ウォルピスさんは普段ボカロ曲をカバーすることが多いですが、アニソンのカバーとなると心構えは変わるものなんですか?
変わりますね。アニソンをカバーするときって、僕は大体本家様のまねをするんです。カバーでリスペクトの気持ちを出すには、まねをするのが一番かなって僕は思っていて。大好きなアニソンだから歌うときに自然とまねになっちゃうんですけどね(笑)。だから本家の癖みたいなものがそのまま僕のカバーにも出てるときがあります。今回の特典では僕のカバーと原曲を聴き比べてもらっても面白いかもしれません。
──「まねをする」とは言いますけど、そもそも今回の3曲は女性ボーカルの曲ですよね。
はい。だからものすごくきついですよ。
──そうは言ってもキーを下げることは……。
絶対にしないですね。でも「魂のルフラン」なんかはすごく歌いやすいキーでした。
「アスノヨゾラ哨戒班」がライブで歌えたら“高音系男子”
──5月にはウォルピスさんにとって初のワンマンライブとなる「2017年度 ウォルピス社株主総会」が東京・下北沢GARDENで開催されます。これはどういうイベントになるんでしょうか?
「ライブ」とは言ってますけど、巷で行われているライブとは少し違う形にしようと考えて「株主総会」と銘打っているんです。そもそも僕って、歌いたい気持ちもあるんですけど、何より“しゃべりたい”って欲があるんですよね。だからライブもあるけどトークもある、そんなイベントになると思います。
──これを皮切りに今後はライブを行う機会も増えるのでしょうか?
いやあ、増やさないといけないとは思っていますけど、やっぱりライブに対する苦手意識はまだあるんです。もちろんステージに立ってしまえば楽しんで歌えるんですよ。ただ始まるまでがものすごくしんどい。舞台袖で血圧が跳ね上がるような人間なので。
──いつか慣れるときがくると思いますが。
僕は絶対慣れないと思いますよ(笑)。
──前回のインタビューの最後に「ライブで歌い切れてこそ、“高音系男子”になれる」とおっしゃっていました。すでにライブにも出たわけですから、 “高音出したい系男子”から“高音系男子”になったということでしょうか?
いやまだまだです。ライブではまだキーが低めの曲しか披露できていませんから。ライブに出て、かつキーの高い曲を歌い切るまでは“高音系男子”は名乗れないと思っています。
──具体的にはどの曲を歌えたら“高音系男子”になれるんですか?
そうだなあ。「アスノヨゾラ哨戒班」をちゃんとライブで歌えたら、ですかね。ありがたいことにニコニコ動画では500万回以上再生されていて。僕の代名詞のように言われることも多い動画ですから、いつかこれを皆さんの前で披露して“高音系男子”になれる日を夢見ています。
ニューアルバム「ウォルピス社の提供でお送りしました。」 2017年2月22日発売 / Subcul-rise Record
- Amazon.co.jp限定 本人によるボイトレCD付
- 初回限定盤 [CD2枚組+特典CD] 2700円 / SCGA-00055~6
- 通常盤 [CD+特典CD] 2300円 / SCGA-00057
- 通常仕様
- 初回限定盤 [CD2枚組] 2700円 / SCGA-00055~6
- 通常盤 [CD] 2300円 / SCGA-00057
DISC 1(全仕様共通)
- 潜水艦トロイメライ
[作詞・作曲:トーマ] - Good Morning, Polar Night
[作詞・作曲:ゆっけ] - 夕刻リビドー
[作詞・作曲:koyori] - メリュー
[作詞・作曲:n-buna] - ストリップマインド
[作詞・作曲:MI8k] - ヤンキーボーイ・ヤンキーガール
[作詞・作曲:トーマ] - 雨き声残響
[作詞・作曲:Orangestar] - 無花果
[作詞・作曲:164] - 20億走
[作詞:ウォルピスカーター / 作曲:万玄斎] - 愛に奇術師
[作詞:作曲:koyori] - 声
[作詞・作曲:針原翼] - 晴天前夜
[作詞・作曲:針原翼]
DISC 2(初回限定盤付属)
- 君の知らない物語
[作詞・作曲:ryo] - 魂のルフラン
[作詞:及川眠子 / 作曲:大森俊之] - God knows…
[作詞:畑亜貴 / 作曲:神前暁]
ウォルピスカーター1stワンマンLIVE
~2017年度 ウォルピス社株主総会~
2017年5月13日(土)
東京都 下北沢GARDEN
ウォルピスカーター
ニコニコ動画を中心に活動する男性ボーカリスト。“高音出したい系男子”の異名を持つ。2012年の初投稿以来、ニコニコ動画に“歌ってみた”動画を多数公開している。2015年4月に投稿した「アスノヨゾラ哨戒班」(Orangestar)の歌唱動画が580万再生を記録した。2016年1月、1stアルバム「ウォルピス社の提供でお送りします。」をリリース。同年12月にはAfter the Rainのカウントダウンイベント「After the Rain COUNTDOWN PARTY 2016-17」に出演し、4年ぶりにオーディエンスの前でライブを行った。2017年2月に2ndアルバム「ウォルピス社の提供でお送りしました。」を発表し、5月には初のワンマンライブとなる「ウォルピスカーター1stワンマンLIVE ~2017年度 ウォルピス社株主総会~」を開催する。