音楽ナタリー PowerPush - 東京カランコロン×鳥飼茜

マンガと音楽における“UTUTU”=リアリティってなんだ?

東京カランコロンのニューアルバム「UTUTU」のリリースを記念して、メンバーのいちろー(Vo, G)&せんせい(Vo, Key)と、2人がリスペクトするマンガ家・鳥飼茜の対談が実現した。いちろーが手がけたアルバムの収録曲「そうだ、フェイシャルへ行こう!」や亀田誠治のプロデュースによるリード曲「ヒールに願いを」といった女性目線のナンバーは、鳥飼の作品にインスパイアされて制作した楽曲。今回の対談では互いの作品についてはもちろん、“うつつ=リアリティ”というアルバムのテーマに関しても興味深いトークが展開された。音楽とマンガ、リアリティとエンタテインメントを巡る刺激的な会話をたっぷりと楽しんでほしい。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介

 
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マンガが2巻、3巻で描くことを1曲でやらなくちゃいけない

──いちろーさんが鳥飼先生のマンガを読んだきっかけは?

左からいちろー、せんせい、鳥飼茜。

いちろー 「このマンガがすごい!」でランクに入った作品をチェックしていく中で、「おんなのいえ」(「このマンガがすごい!2014」オンナ編で第9位を獲得)を読んだんですよ。すぐに「これ、面白い!」と思って、それから何回も読んで。

鳥飼茜 うれしいです。

いちろー 僕は今31歳で、登場人物と年齢が近いというのもあるし、もともと女性が主人公の話が好きなんですよね。男の話って、すごく単純じゃないですか。結局、「成功したい」とか「強くなりたい」「上に行きたい」ということしかないというか。女の人にはもっといろんな選択肢があると思うんです。仕事をがんばるのか、母親としての幸せを選ぶのか、とか。そういう女性独特の複雑な心境を描いた物語に興味があるんですよね。

鳥飼 女性が描いた作品ではなくて、主人公が女の人っていうのが好きなんですか?

いちろー でも、僕がいいなと思うマンガは女性が描いているものが多いですね。少年誌のエンタテインメントも好きですけど、「これを歌詞にしてみよう」とは思わないというか。

──せんせいは鳥飼先生の作品をどんなふうに捉えてますか?

せんせい

せんせい いちろーさんに「これ、読んでみて」って「おんなのいえ」を教えてもらったんですけど、最初は「へー、面白い!」って感じでした。この対談が決まったあとも4巻分読み直したんですけど、次の日になってみたら、次の話を楽しみにしている自分がいましたね。私も関西出身やから(「おんなのいえ」の主要な登場人物は関西出身)、お母さんのしゃべり方のノリやったり、友達同士のやりとりとかも、めっちゃわかるんですよ。新しい発見というよりも、共感したり、友達の話を聞いている感覚やったかも。自然にマンガの世界に入っていけましたね。

──会話がすごくリアルですからね。鳥飼先生が姉妹と母親を中心にした物語を描こうと思ったのは、どうしてなんですか?

鳥飼 担当編集さんとも話をして、まず「描きやすいものをやろう」ということになったんです。私も妹がいるんですよ。お父さんもいるようないないような感じの家だったし、“お母さん、姉、妹”の設定であれば、ナチュラルに描けるかなって。連載は次から次に描いていかないといけないから、やりづらい設定だとどうしても苦しくなってくるんですよね。

いちろー なるほど。

鳥飼茜

鳥飼 あとは大阪弁ですよね。私も大阪出身だから、母親のセリフを考えるときは、頭の中で1回、自分の母親に言わせてみるんです。もし私がお母さんにこういことを聞いたら、どういう言い回しで答えるだろう?って。具体的に「この人です」というモデルがいるわけではなくて、関係性ですよね。「仲のいい友達に相談したら、1回落としてから上げてくるだろうな」とか。そういう距離感は考えますね。

いちろー あるインタビューの中で「キャラクターが勝手に動いていくことでストーリーができあがる」ということも言ってましたよね。

鳥飼 「おんなのいえ」の場合はそうですね。

いちろー もうひとつ、僕が「これはすごい」と思う基準は、格言めいたセリフが出てくるかどうかなんです。恋愛や仕事のこと、人物やストーリーのリアリティだけではなくて、「どうやって生きていくか」とか「人間とは何か」みたいなことがあると、さらに引き込まれるというか。自分が歌詞を書くときもそうなんですよ。細かいディテールを積み上げるだけではなく、「生きるってなんなの?」「どうすれば前向きになれるの?」という内容を入れたいと思うので。

鳥飼 マンガの場合は長く連載を続けていく中で、もっと普遍的なことに広げていけると思うんですよ。でも、曲って3、4分しかないじゃないですか。その中で“生きがい”みたいなことを入れるのは大変ですよね。マンガが2巻、3巻で描くことを1曲でやらなくちゃいけないっていうか。

「おんなのいえ」第1巻表紙

いちろー でも、「おんなのいえ」は1巻ですでにそういう話が出てきますよ。有香(主人公の大前有香)が友達のちえみちゃんと観覧車に乗ってる会話もそうだし。そういう深いセリフが自然に入っているかどうかも大事ですよね。

せんせい 歌に関して言えば、もっと瞬間瞬間の感情を歌ってると思うんですよ。大きいストーリーを歌うというより、一瞬の言葉でイメージを広げていくというか。

いちろー まあ、この2人は歌詞の書き方が全然違うからね。

せんせい 真逆ですね。

いちろー 僕は言葉があふれてしまって、削るのが大変なんですよ。メロディによって文字数が制限されるから、「この言葉を入れたいけど、入らない」という戦いですよね。だけどせんせいの場合は……。

せんせい 1つの言葉にいろんな色とか風景、感情を乗せていく感じですね。

いちろー あと、歌詞以外にもいろいろな要素があるから、そっちに任せることもできるんですよね。「せんせいの歌声だったら大丈夫」とか「このメロディだったら伝わるはず」ということもあるし。きっとマンガにもあると思うんですよ。言葉がなくても、「この顔の表情で伝わる」みたいなことが。

鳥飼 うん、そうですね。

ニューアルバム「UTUTU」 / 2014年1月14日発売 / avex trax
CD+DVD 3780円 / AVCD-93007/B
CD 2700円 / AVCD-93008
CD収録曲
  1. 夢かウツツか
  2. 恋のマシンガン
  3. 僕の辞書
  4. ヒールに願いを
  5. ビバ・ラ・ジャパニーズ
  6. △□
  7. ネオンサインは独りきり
  8. 左耳から白旗
  9. 笑うドッペルゲンガー
  10. そうだ、フェイシャルへ行こう!
  11. かいじゅうになって
  12. 終点から始発へ
  13. 東京カランコロンカラオケメドレー ~メンバー合いの手入りスペシャルver.~(※CD+DVD盤のみボーナストラック)
CD+DVD盤 DVD収録内容
  • ビデオクリップ集(全9曲)
  • クラブでワンマ ん@SOUND MUSEUM VISIONライブ映像
  • おまけの映像
ツアー情報
東名阪でワンマ ソツアー~友達になりたい!~
  • 2015年3月4日(水)大阪府 梅田Shangri-La
  • 2015年3月5日(木)愛知県 名古屋APOLLO BASE
  • 2015年3月12日(木)東京都 WWW

※以上、全日程対バンあり

ワンマ んツアー2015
  • 2015年4月4日(土)香川県 DIME
  • 2015年4月5日(日)徳島県 club GRINDHOUSE
  • 2015年4月18日(土)長野県 ALECX
  • 2015年4月19日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2015年5月6日(水・祝)北海道 札幌ペニーレーン24
  • 2015年5月8日(金)宮城県 仙台CLUB JUNK BOX
  • 2015年5月10日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
  • 2015年5月14日(木)岡山県 IMAGE
  • 2015年5月16日(土)長崎県 DRUM Be-7
  • 2015年6月6日(土)福岡県 BEAT STATION
  • 2015年6月7日(日)広島県 ナミキジャンクション
ワンマ んツアー2015~ホールでワンマ ん~
  • 2015年6月12日(金)愛知県 名古屋市青少年文化センター アートピアホール
  • 2015年6月13日(土)大阪府 NHK大阪ホール
  • 2015年7月10日(金)東京都 中野サンプラザホール
東京カランコロン(トウキョウカランコロン)
東京カランコロン

いちろー(Vo, G)、せんせい(Vo, Key)、おいたん(G, Cho)、佐藤全部(B)、かみむー氏(Dr)からなる5人組バンド。2009年5月より現メンバー編成にて活動開始。翌2010年6月に自主制作音源を発表してインディーズチャートで1位を獲得。同年10月には初の全国流通盤となる「東京カランコロンe.t.」をリリースし、12月に初の自主企画ライブ「ワンマ ソ」を行う。2012年までインディーズシーンでミニアルバム、シングル2枚を発表し、8月にavex traxよりメジャーデビュー盤となるミニアルバム「ゆらめき☆ロマンティック」を発表。その後順調に作品リリースやライブを重ね、2015年1月にメジャー3rdフルアルバム「UTUTU」をリリースする。

鳥飼茜(トリカイアカネ)
鳥飼茜

大阪府出身のマンガ家。2004年、講談社「別冊少女フレンド DX ジュリエット」にてデビュー。「ドラマチック」「わかってないのはわたしだけ」を発表する。2010年、講談社「モーニング・ツー」にて「おはようおかえり」で青年誌初連載。2013年には講談社「BE・LOVE」にて「おんなのいえ」、「モーニング・ツー」にて「先生の白い噓」、2014年には祥伝社「フィール・ヤング」にて「地獄のガールフレンド」を連載開始。「おんなのいえ」は宝島社の「このマンガがすごい!2014 オンナ編」で第9位を獲得した。