ナタリー PowerPush - のび太(WHITE ASH)×田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)
the pillowsを語る
the pillowsの結成25周年を記念したアニバーサリー作品第2弾として、トリビュートアルバム「ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-」がリリースされた。今回ナタリーでは、このアルバムで「White Ash」をカバーしたWHITE ASHののび太(Vo, G)、「Fool on the planet」をカバーしたUNISON SQUARE GARDENの田淵智也(B)による対談を企画。the pillowsの魅力、カバーした楽曲に関するエピソードなどについて存分に語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 高田梓
ピロウズは洋楽ファンからも邦楽ファンからも愛される音楽性
──まずは田淵さん、のび太さんの交流について聞かせてもらえますか?
田淵智也 最初に会ったのは、一昨年の年末のイベントかな(2012年12月31日に渋谷CLUB QUATTROで行われた「LIVE DI:GA JUDGEMENT 2012」。UNISON SQUARE GARDEN、WHITE ASH、9mm Parabellum Bullet、THE BOHEMIANSなどが出演)。WHITE ASHの音は聴いてたんだけど、ライブを観たのはそのときが初めてで。もっと粗削りかと思ってたんだけど、ライブの音もめっちゃよかったから、「やだな」って嫉妬して。
のび太 ありがとうございます。僕はその前からフェスやイベントでユニゾンのライブを観させてもらってたんですよ。最初に観たときは3ピースとは思えないほどのパワフルさに度肝を抜かれましたね。先入観を見事に覆されましたね。とにかく突き抜けてて。
──UNISON SQUARE GARDENとWHITE ASHは今回、ピロウズのトリビュートアルバム「ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-」に参加しましたが、ピロウズとの出会いはいつ頃ですか?
のび太 僕は中学、高校と全然音楽に関係ない卓球部だったんですよ。大学で軽音楽部に入ってからいろんなバンドを知って、ピロウズもそこで初めて聴きました。最初に聴いたアルバムは「Fool on the planet」――今回ユニゾンがカバーしてる曲がタイトルになってるアルバムですね――だったんですけど、「うわ、めっちゃカッコいい!」と思って。邦楽なんだけど、洋楽との中間に存在してるという感じがしたんですよね。そのバランス感覚がすごいな、と。
田淵 俺はたぶん高2だと思うんですけど、友達がずっと「ピロウズがいい」って言ってて、聴かせてもらったら、ホントにめっちゃよくて。「これ、全部買わないといけない気がする」と思って、かなり短いスパンでCDを全部そろえました。高校生のときってわりとお金があったんですよ。バイトしたお金を食費とかに使わなかったから。
──それをどんどんCDやライブに注ぎ込んで(笑)。今振り返ってみると、ピロウズのどんなところに惹かれたんだと思いますか?
田淵 中2、中3の頃がちょうどメロコアブームだったんですけど、あんまりなじめなかったんですよね。その頃はとにかくTHE HIGH-LOWSが好きで、「THE HIGH-LOWSだけ聴いてた」って言っても過言ではないくらいだったので。もちろん「いいな」と思うものはあったし、バンドでコピーとかもしてたんだけど、「ずっと聴いていたい」と思うようなバンドにはなかなか巡り合わなくて。なんて言うか、言葉がわからない音楽が苦手なんですよね、俺は。メロコアのバンドは英語の歌詞も多いし、日本語詞であっても――最近のJ-POPもそうなんですけど――異常にわかりやすいものに対して、逆に「僕にはわからない」って思うこともあって。でも、ピロウズの「Crazy Sunshine」の「全世界の腰抜けモンキー 未完成のゲームに夢中」っていう歌詞を聴いたとき、「すげえわかる!」って思ったんですよね。この言葉は自分にすごくしっくり来るなって。その出会いは今でも覚えてますね。
──メロディと言葉のマッチングが独特ですからね、ピロウズの曲は。
のび太 (山中)さわおさんの書く曲って、確かにスッと言葉が入ってきますね。説教くさくないし、照れくさくもないし。僕は洋楽から音楽に入ったんですけど、ピロウズは日本語の言葉がすごくカッコよく聞こえて。
田淵 いい温度感なんだよね。あと、洋楽ファンからも邦楽ファンからもいい感じで愛される音楽性だと思うんですよ。さわおさんは洋楽ファンからも信頼を得ているし、僕みたいに“言葉”から入るヤツもいるし。今回のトリビュートに参加しているバンドもそうですけど、そこがうまく共存してるからこそ、幅広いバンドに支持されてるんじゃないかなって。俺自身はピロウズのポップなところに惹かれたんじゃないかと思うんだけど。
さわおさんは自然体のカッコよさがにじみ出てる
──ピロウズの曲はバンドでコピーしてました?
田淵 やってましたよ。ユニゾンを始めてからも、仲間と一緒にピロウズの曲をコピーして、ライブをやったり。全員すごく好きだったから、(ステージ上での)動きだったり、「ライブではこういう終わり方なんだよね」っていうところまでコピーして。
のび太 僕もWHITE ASHとは別に、ドラムの剛とピロウズをコピーするバンドをやってました。「Thank you, my twilight」「Ride on shooting star」「その未来は今」、あとは「Mighty lovers」とか。ちょうど「GOOD DREAMS」(2004年)くらいのときですね。僕が一番聴いたアルバムは「MY FOOT」(2006年)なんですよ。だから、ピロウズのファンの方からすると「おまえ、(ファンになったのは)意外と最近だな」ってことになるかもしれないけど(笑)。
田淵 気になるよね、そういうのは。僕らがピロウズを聴き始めたのは“第3期”(1996年~)と呼ばれている時期だから――俺はたぶん「Thank you, my twilight」(2002年)くらいからかな――“第1期(1989~1993年)が大好き”という方と話したりすると「申し訳ない」って思ったり。
──「いつから聴き始めたか」っていうのは人によって全然違うと思いますよ。25年のキャリアがあって、今も新しいファンが増え続けてるバンドなので。
のび太 ずっとキラキラしてるイメージなんですよ、さわおさんは。年上なのにいつまでも若いっていうか。自然体のカッコよさがにじみ出てるんですよね。
田淵 以前、テレビでGLAYのJIROさんがコメントしてたんですけど、さわおさんのことを「子供のような音楽ファン」と言ってて。音楽を聴くっていうことに対して本当に無邪気だし、知らないバンドがあると、次に会うときまでに必ず聴いてるらしいんですよね。そういう姿勢が、いつまでも新鮮な気持ちで音楽に接する回路につながってるのかな、と。
収録曲 / アーティスト
- White Ash / WHITE ASH
- この世の果てまで / グッドモーニングアメリカ
- インスタント ミュージック / 9mm Parabellum Bullet
- Funny Bunny / Base Ball Bear
- スケアクロウ / WEAVER
- エネルギヤ / Scars Borough
- ノンフィクション / 東京カランコロン
- 開かない扉の前で / カミナリグモ
- Fool on the planet / UNISON SQUARE GARDEN
- カーニバル / シュリスペイロフ
- Blues Drive Monster / a flood of circle
- ハイブリッド レインボウ / ふくろうず
- ストレンジ カメレオン / 髭
- No Substance / THE BOHEMIANS
参加アーティスト
the pillows(ぴろうず)
山中さわお(Vo, G)、真鍋吉明(G)、佐藤シンイチロウ(Dr)の3人からなるロックバンド。1989年に結成され、当初は上田ケンジ(B)を含む4人編成で活動していた。1991年にシングル「雨にうたえば」でメジャーデビュー。初期はポップでソウルフルなサウンドで好評を博すが、上田脱退後の1994年以降は徐々にオルタナ色を取り入れたサウンドへと変化していく。一時は低迷するが、精力的なライブ活動を続ける中で固定ファンを獲得。2004年には結成15周年を記念してELLEGARDEN、BUMP OF CHICKEN、ストレイテナー、Mr.Childrenなどが参加したトリビュート盤が制作され、the pillowsの存在を知らなかった若年層にもアピールすることに成功する。また、2005年にはアメリカ、2006年にはアメリカとメキシコでツアーを敢行。海外での人気と知名度も獲得する。結成20周年を迎えた2009年9月には初の日本武道館公演を行い、大成功を収めた。2012年にはバンドを一時休止し、山中と真鍋はそれぞれソロアルバムをリリース。翌年再始動してからは再び精力的な活動を展開している。2014年2月には結成25周年を記念してトリビュートアルバム「ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-」が発表された。キャリアを重ねるごとに勢いと力強さを増し、今や日本のロックシーンには欠かせないバンドとしてリスペクトされている。
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