音楽ナタリー Power Push - 瀧川ありさ
みんなを幸せにしたい 覚悟を決めた1stアルバム
「Again」は“あの子”の歌
──「夏の花」の続編という「Sugar」に登場する太陽はどういう存在でしょうか。
この曲は、ひとりぼっちで思い出の海に来たんだけど、「別に私は平気よ」っていう大人でポジティブな女性を描いた曲なんですね。だから、ここでの太陽は、太陽に引け目を感じていない人。そういう女性に憧れて、なりきって描きました。
──では「Again」の太陽は?
「BOY’S CHRONICLE」と同じ意味合いの太陽ですね。10代の頃からずっと見ていた子たちが、大人になって、才能を持っていても、それ故にたくさん傷付いている。それは、あまりにももったいないっていう思いを描いた曲なんです。私が太陽のように憧れている“君”の存在のことを歌っているんです。
──その君というのは?
元モーニング娘。の鞘師(里保)さんの曲なんですけど。たくさんの人が彼女のことを太陽だと思っているのに、彼女は恐らく自分がイメージする“別の太陽”があって。そのイメージに近付こうと必死に努力しているように見えました。もうその存在だけで太陽なのに。でも、私たちがそう言うのがまた負担だったのかなと思うといたたまれなくて。15~6歳のときにセンターを任されて、ずっと重圧を感じながらやっていたんだなって思って。
──なるほど。
彼女に限らず人前で泣かないし、弱みを見せない子ってたくさんいて。だからこそ美しいんですけど、もしもちゃんと弱みを見せられていたら楽になれるのかなとか考えたりして。夢を追う人たちは時代を作ってるっていう自覚がないのかもしれないし、オリンピック選手もそうですけど、自分のためにやってることであっても、それを観た多くの人が力を得ている。がんばる人と応援する人のサイクルってすごいなと思うんですよ。変な話だなと思うんですけど、結局は苦しんでることが誰かにとっての希望になるっていう。苦しみ、輝き続けることが、あなた自身も、周りの人にとっても希望になるんだなって感じて描いた曲ですね。それは、誰に対しても言えることですけど。
──「笑顔で語る夢が君を苦しませ、輝かせる」と歌ってます。ちなみに瀧川さんの夢はもう叶いました?
全然です。数え切れなくらいたくさんの人に聴いてもらって、誰かの人生の一部になりたいっていうのが夢なので、まだまだこれからですね。このアルバムができたことが、夢の始まりです。
「幸せになりましょうよ」
──先ほど、このアルバムを作って意識が変化して、覚悟ができたとおしゃってました。その意識の変化を象徴する曲というと?
アルバムの最後に収録している「花束」ですね。私はずっと、自分のメジャーになりきれないところにコンプレックスがあったんですよ。「大衆側に行けるのだろうか?」というところをずっと考えていて。でも、この曲のアレンジをJ-POPの第一線でやってらっしゃる本間昭光さんに編曲してもらったときに、もしかしたらそっち側に一歩を踏み出せるかもって初めて思えたんですよ。歌詞に関しても、マインドがこじれすぎていたけど(笑)、このままじゃないけないなとか、これから歌い続けていく覚悟が改めて決まった。自分の知らない自分、新たな自分に出会えた1曲になってますね。
──それまで変わることを否定していたところもあったんでしょうけど、この曲では「変わらない強さよりも 変わって行く勇気を持ちたい」って歌ってますね。
やっと言えたなって思いました。私、ずっと、変わることが怖かったんですよ。同世代のミュージシャンを見て、幸せになっちゃいけないって思ってた。幸せになったら曲を書けなくなると思ってて、不幸なほう、不幸なほうに道を選んでたんです。でも、「それは正解なのか?」って思うことがあって。ちゃんと幸せになってる周りの子がいる中で、なんでわざわざ不幸にならないといけないのかなって思い始めて。第一線にいながらちゃんと幸せな人っているし、そういう人はちゃんと幸せでありつつ曲が書けてる。そっちのほうが全然すごいことじゃないかって思えてきた。不幸ぶっててもしょうがないよなと。「ちゃんと幸せになりなさい」「幸せになりましょうよ」ってこの夏にこの曲を書いたときに自分に対して思えた。根はどうせ変わらないでしょうけど、ちゃんといろんなことを経験したいな、幸せになるためにがんばりたいと思うようになりました。
──幸せになるための第一歩が、歌詞にもある「素直になれたら 自分を愛せたら」っていうことだと思うんですが。
私の課題はこれに尽きるんですよね。人前に立つこと、そこへの自信を持つこと。それは、私にとっては一生の課題ですけど、この言葉を吐き出せた、歌えたっていうことで、聴き手とちゃんと向き合えた気がするんですよ。瀧川ありさとして、今までいろいろこねくり回して歌ってきたことの本質を歌えた気がするので、これからライブでこの曲を歌うのが緊張しつつも楽しみなんです。今までとは違う自分に出会える気がしてますね。
聴いてくれる人を幸せにする覚悟を決めました
──アーティストとしてステージ上で輝く太陽のような存在になる、という決意や覚悟を決めた曲に「花束」というタイトルを付けたのは?
仕事柄お花をいただくことが多いんですけど、花束をもらうとすごくうれしいのに、ずっとどこかで悲しかったんですよ。家で必死に水をあげても枯れちゃう。幸せなことのはずだし、満面の笑みを浮かべて「うれしい。ありがとう」でいいのにいつか枯れてしまうことへの虚しい気持ちがどうしても消えない。でもそれが私のすべてだなって思ったんです。美しいもの、素晴らしいことほど終わることへの諸行無常を感じて生きてきた。花束っていうと幸せな感じがありますけど、それを受け取ったときの感情が、素直になれない私の象徴的なもののように感じたんですよ。人と違うこと、あと、それを受け入れたいっていうことの象徴。それと、ステージに立つ人間としても、こんなに自分はたくさん与えられて、元気をもらって幸せにしてもらってたのに、自分がこんな気持ちでステージに立ってちゃダメだろうとも思いますし。だから、このアルバムを作って、メジャーデビューして初めて、自分が全員を幸せにしたいって思えた。「一人残らず幸せにすんぞ!」っていう覚悟を掲げました。
──あはははは(笑)。リスナーへのプロポーズですよね。
そうです! この1枚を作って、聴いてくれる人を幸せにする覚悟を決めました!
──なんだか憑き物が落ちたみたいにすっきりした表情してますね(笑)。
今、何も怖くないんですよね。1年目はいろいろ悩んだり、考え込んだこともあったんですけど、もうね、大丈夫だなって思う。自分がただただがんばっていけば、何も迷うことはないなって、このアルバムを作って思えた。これがもうちょっと早く出してたら違ったと思うんですよ。でも、結果的にシングルを5枚も出して、満を持してのアルバムになったおかげで、たくさんの人が待っててくれてるんだっていうのがわかったし、それはすごい幸せなことだなって思えたので。私の音楽を待ってくれている方が1人でもいる限りは何も怖くない。いろいろ覚悟が決まったので、ライブもたくさんやって、アルバムの曲を歌っていきたい。今はとにかく歌いたいですね。
- 1stアルバム「at film.」 / 2016年11月2日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3600円 / SECL-2064~5
- 通常盤 [CD] 3200円 / SECL-2066
CD収録曲
- Season
- BOY'S CHRONICLE
- さよならのゆくえ
- 色褪せない瞳
- 日々モノクローム
- プラネタリウム
- Again
- Sugar
- 夏の花
- 17番地
- Journey
- アイセイハローのすべて
- 花束
<初回限定盤ボーナストラック>
- The Seven Deadly Sins Medley
初回限定盤DVD収録内容
- Season Music Video
- 夏の花 Music Video
- さよならのゆくえ Music Video
- Again Music Video
- 色褪せない瞳 Music Video
- アイセイハローのすべて from Girl meets wonder TOUR
- The Seven Deadly Sins Medley Music Video
瀧川ありさ「1stアルバム『at film.』リリース記念イベント」
- 2016年11月2日(水)
神奈川県 ラゾーナ川崎プラザ 2F ルーファ広場 グランドステージ - 2016年11月3日(木・祝)
大阪府 あべのキューズモール 3F スカイコート - 2016年11月4日(金)
愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店 西館 1F イベントスペース - 2016年11月6日(日)
東京都 タワーレコード新宿店 7F イベントスペース - 2016年11月12日(土)
広島県 広島駅南口地下広場 - 2016年11月13日(日)
福岡県 イオンモール福岡 - 2016年11月19日(土)
宮城県 タワーレコード仙台パルコ店 - 2016年11月20日(日)
北海道 HMV札幌ステラプレイス
瀧川ありさ ワンマンライブツアー2017 “at film.”
- 2017年1月18日(水)
福岡県 INSA - 2017年1月20日(金)
愛知県 SPADE BOX - 2017年1月21日(土)
大阪府 ESAKA MUSE - 2017年2月4日(土)
東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
瀧川ありさ(タキガワアリサ)
1991年生まれ、東京出身のシンガーソングライター。幼少期より音楽に親しみ、中学2年生のときにバンド活動を開始した。高校卒業と前後してバンドが解散すると1年のブランクののち、ソロアーティストとして活動を再開する。2015年3月にアニメ「七つの大罪」のエンディングテーマ「Season」を収録したシングルでメジャーデビュー。7月に2ndシングル「夏の花」、11月にはアニメ「終物語」のエンディングテーマに採用された3rdシングル「さよならのゆくえ」を発表する。2016年に入ってからもコンスタントにリリースを重ね、11月にメジャー1stアルバム「at film.」をリリースした。