ナタリー PowerPush - 竹内まりや

今、思うこと ロングインタビュー

竹内まりやがニューシングル「Dear Angie ~あなたは負けない / それぞれの夜」をリリースすることを記念して、ナタリーでは彼女に単独インタビューを敢行。新作にまつわるトピックをはじめ、自身のアーティスト活動におけるスタンス、曲作りに臨む気持ち、公私にわたるパートナーの山下達郎についてなど、話題は多岐に及んだ。デビュー35年目を迎えた彼女の、音楽に対する朗らかな姿勢を感じてほしい。

取材・文 / 鳴田麻未 インタビュー撮影 / 菊地英二

 
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杉さんとバンドをやっていなければ歌手になってない

──今年2枚目のシングルリリースとなりますね。ここ数年のまりやさんはかなり精力的に音楽活動を行っている印象があります。

竹内まりや

シングルをこんな早いペースで出すのもひさびさかもしれないですね。達郎が出演した「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2012」に出させていただいたあたりから、なんとなく音楽モードにはなってます。収録曲に関してもあまりこだわらずに、この作品のように「いい曲だからレコーディングして出そう」という感じ。そう考えられるようになったのは、年齢のこともあるかもしれないです。出せるときに出すっていうスタンスは前から変わらないんですけど、もうちょっと気持ちが楽になってる感じは50代後半以降、自分の中で増してるんです。

──ではシングルの収録曲についてお聞きします。今作は、杉真理さんと杉さん率いるBOXが制作に携わった楽曲が収められていますね。

私が大学生のときに杉さんのPEOPLEっていうバンドでキーボードとコーラスを担当していたんですけど、杉さんの作品でよくアマチュアバンドのコンテストに出ていました。杉さんはいつも作曲賞をもらってたりしていましたよ。ちょうどその当時は佐野元春さんなんかも出てましたね。杉さんは1977年にビクターからデビューしまして、私はそのデビューアルバムにコーラスで参加させていただいたのがきっかけで、この業界に入ったんです。杉さんとバンドをやっていなければたぶん歌手にはなってないでしょうね。

──以降杉さんとは40年間交流が続いていて、「Dear Angie ~あなたは負けない」も2人のやり取りから昨年春頃に生まれたそうですね。

ええ。毎年お互いの誕生日には必ず電話をして「おめでとう」って言うのを何十年も続けていて。まるで兄貴と妹みたいな絆がありますね。で、去年私の誕生日に「新曲ができたよ」と言われて、聴かせてもらったのがこの曲でした。すごくいい曲だったので「これBOXでやりましょうよ」なんて言って、すぐにレコーディングが実現したんです。本来ならば次のアルバム用にそのまま温存していたかもしれないけど、「NEWS23」のエンディングテーマが「それぞれの夜」から変わるというタイミングがあって、プロデューサーにこの曲を聴いてもらったところ気に入ってくださって、採用が決定しました。ならば、せっかくだから2つの「NEWS23」のエンディングテーマをまとめてシングルにしよう、ということになったんです。

──カップリングには、敬愛するTHE BEATLESのカバーをBOXの演奏で。

カップリングを何にしようかと考えているときに、2009年に杉さんたちとTHE BEATLESを4曲レコーディングしたことを思い出したんです。「Your Mother Should Know」「This Boy」「I'm Happy Just To Dance With You」「Tell Me Why」と、どれもわりと初期の曲ですね。達郎のラジオ番組(TOKYO FM系「山下達郎のサンデーソングブック」)でオンエアしたら、「CD化はされないですか?」みたいなお便りをいっぱいいただいたこともあって、今回のカップリングにはBOXつながりで必然性もあるしちょうどいいと思って、もう一度トラックダウンとリマスタリングをしました。ちょっとしたおまけのような感じで聴いてもらえればうれしいです。

「これなら買いたいな」って思うアイテムにするには

──今作の初回限定盤には、特典として竹内まりや史上初めてのDVDが付属します。このような新しい試みに至ったいきさつを教えていただけますか?

私自身がシングルってなかなか買わなくなっているので、今のシングルマーケットのことは詳しくわからないんですけど……みんな今はダウンロードも利用しますよね。だからCDパッケージとして「これなら買いたいな」って思うアイテムにするにはどうしたらいいか、みんなで相談した結果、今まで映像を付けたことがないからDVDを付けるのはどうだろう、ということになりました。であるなら、新曲のPVと、せっかくだからライブの映像も入れようかっていう話になったんです。

──逆に言うと、今まで映像を付けようと思ったことはなかったんですね。

まったくなかったです。音のおまけのみでしたね。カラオケだったり、レア音源だったり。なので、今回の試みがシングルを手に取ってもらえる動機付けになるのか、ならないのかわかりませんが、シングルマーケットが低迷しつつある今だからやってみようと思いました。そこからまた今後の新しい発想が生まれていくかもしれないし。

──そうやってまりやさんがマーケットについて話し合いをしている姿を想像すると、意外というか新鮮ですね。

「大衆音楽」をやっていく以上、市場を無視することは不可能です。時代の流れ、変化を感じてはいるんですけど、具体的にどうするべきか難しい。今のシングルには握手券や応募券を付けるとか、さまざまな売り方がありますよね。そこまではできなくても、シングル形態ならではの初回特典がこのスタイルだったのですが、通常盤がおざなりになるのを避けるために、THE BEATLESカバー「This Boy」を1曲、音のおまけとして入れました。

──「DVDが気になるから買ってみようかな」というライトリスナーの興味も考慮していたのなら、ライブ映像の「元気を出して」という選曲もうなづけます。

「元気を出して」を選んだのは、楽曲投票でいつも若い世代の方々に支持されるというのがひとつと、同じライブの「駅」と「不思議なピーチパイ」と「September」は、以前テレビ番組で公開済みなので、出していない映像を探した結果決めました。山下達郎がバックに徹して演奏する姿が見られるだけでも、かなり希少価値があるかと思います(笑)。

──そうですね。この「元気を出して」が披露された「souvenir 2000 LIVE」は後にライブアルバムとなって発売されているので、音源としては世に出ているんですよね。でもまりやさんや達郎さんのライブの“映像”を待ち望んでいる人は、きっと少なからずいると思います。

どうでしょうか。例えば今回、DVDがシングルを買うきっかけになり得たのなら、今後映像というものについてももっと考えていかなくてはいけないのかもしれません。達郎のライブ映像も含めてね。

──達郎さんがイエスと言うかどうか……それは難関かもしれませんね(笑)。

そうですね。私は達郎の音楽のリスナーですが、ファンとしては出してほしい気も少しはします。チケットが取れないとか、働いているから会場に行けないとか、いろんな事情があってライブを観られない方がいる。でも、完璧にそのままの雰囲気とは言えなくても、彼の貴重なライブが初めてDVDで味わえるんだったら欲しいと思うのは当然ですよ。ただ彼自身がそれを望まないならば、別に無理強いするつもりもありません。でも、観たいですもんね? 達郎のそういった映像。

──観たいです。

伝えておきます(笑)。

ニューアルバム「Dear Angie ~あなたは負けない / それぞれの夜」 / 2013年7月3日発売 / ワーナーミュージック・ジャパン
初回限定盤 / [CD+DVD] / 1680円 / WPZL-30637
通常盤 / [CD] / 1260円 / WPCL-11523
CD収録曲
  1. Dear Angie~あなたは負けない
  2. それぞれの夜
  3. Your Mother Should Know
  4. Dear Angie~あなたは負けない(オリジナルカラオケ)
  5. それぞれの夜(オリジナルカラオケ)
初回限定盤 DVD収録内容
  • Dear Angie~あなたは負けない(Music Video)
  • 元気を出して(souvenir 2000 LIVE)
竹内まりや(たけうちまりや)

1978年、シングル「戻っておいで・私の時間」でデビュー。「SEPTEMBER」「不思議なピーチパイ」など次々とヒットを飛ばす。山下達郎と結婚後は作詞家、作曲家として「けんかをやめて」「元気を出して」「駅」など多くの作品を他の歌手に提供する傍ら、1984年に自らもシンガーソングライターとして活動復帰し、1987年に発表した「REQUEST」以降すべてのオリジナルアルバムがミリオンセールスを記録している。また、1994年発表のベストアルバム「Impressions」は350万枚以上の記録的な大ヒットとなり、日本ゴールドディスク大賞ポップス部門(邦楽・女性)でグランプリアルバム賞を受賞。ベスト盤ブームの先駆けとなった。2007年、6年ぶりとなるアルバム「Denim」を発表。2008年にはデビュー30周年を記念した自身初のコンプリートベストアルバム「Expressions」をリリースし、オリコン週間ランキングでは3週連続1位を獲得。2010年12月には10年ぶりのライブ「souvenir again」を日本武道館と大阪城ホールで行った。