ナタリー PowerPush - supercell

常に進化を続けるサウンド コンポーザー・ryoインタビュー

昨年の暮れあたりから、supercell、もしくはそのコンポーザーであるryoは実に精力的な活動を行っている。新ゲストボーカリストこゑだによるシングル「My Dearest」を皮切りに、「灼眼のシャナIII -Final-」「ギルティクラウン」「偽物語」など立て続けに人気アニメ作品へ主題歌を提供。そして3月7日にはsupercellとしてのニューシングル「告白 / 僕らのあしあと」をリリースする。ネットから生まれたアーティストとして不動の地位を確立しているようだが、一方でryoの活動は常に一定であることを嫌い、従来の枠を打ち壊していくような部分もある。supercellはなぜ立ち止まらずに新しい一歩を踏み出せるのだろうか。過去の活動を振り返る意味もあるという今回のシングルについて訊きながら、そのクリエイティブのあり方を探った。

取材・文 / さやわか

 
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「アニソン」を追求したEGOISTの新曲

──最近はすごくsupercellの名前を見ることが増えましたね。テレビでも普通に観ますし。

そうですか? 自分が生活してる範囲内においては、全然観ませんよ(笑)。

──リリースがたくさんある中で個人的に一番驚いたのは、supercellじゃなくてEGOISTの曲で、「ギルティクラウン」の第2期オープニング曲「The Everlasting Guilty Crown」なんです。打ち込みが入っているだけでなく、ダンサブルなというか、トランシーな4つ打ちのバスドラムが鳴っている。なぜこういう曲にしたのでしょうか?

「ジ・アニソン」みたいな、いかにもアニソンっぽい曲を作りたい、という発想がまずあったんです。でも作ってみたらちょっと編曲が普通だったので、これじゃあなんか面白くないなと思って、こうしました。BPM180のめちゃくちゃ早いトランスっぽい曲に、エレクトロのロックなベースを混ぜ込んで。あと歌ってくれるchellyちゃんは、普段は絢香とかがすごく好きな子なんですけど、そういう人ってこういう曲を歌わないじゃないですか。そのミスマッチ感も出してみようと思って。

──確かにミスマッチ感というか、いろんな要素がマッチアップしてる感じがすごく面白い曲ですね。打ち込みだけでなくて、生楽器の音もかなり入ってますし。

それがなかなか大変でした。いったん全部打ち込みで作ってあったんですけど、あとで生楽器で録って、それを波形編集して、タイミングを打ち込みに合わせていったんです。ベースは打ち込みと生ベースとサイドチェインの3種類が入ってて、さらにコーラスも入る。だからもう、音の壁みたいになってるんですよ(笑)。で、その壁の合間に歌がハマるみたいな感じで、完全にパズル状態なんです。全部を詰め込んだらそうするしかなかった感もあったんですけどね。

──ここまでDAW的というか、デジタルレコーディングで複雑なことをやっている曲ってそうそうないのではと思いました。

ポップスだとそうかもしれませんね。元々エレクトロニカがすごく好きだったんで、構築のやり方、手法がそれに近い感じなんだと思います。生楽器の音も、全部録って、あとでそれを打ち込みっぽくするっていう、すごい贅沢なことをやったんですよ。「別に打ち込みでいいじゃん」っていう意見もあると思うんですけど、あえて録って、いらなければあとで削ろうと思って(笑)。そういう意味で、本当に贅沢な作り方をしてますね。

──ryoさんは元々、打ち込み的な要素を生っぽく使うイメージが強かったのですが、そういう意味では今回は逆なのかなと思いました。4つ打ちみたいに明確な打ち込みっぽさも出ていますし。

そうですね。まあ超個人的な意見ですけど「アニソンって言えば4つ打ちでしょ」みたいなイメージもあって(笑)。

──なるほど。こういう曲調になった発端はやはり「アニソンとして作るには」みたいな部分なんですね。

イメージしてたのはそこですね。このテンポで4つ打ちのポップスってもう、他には電波曲かハピコア(ハッピーハードコア)かってぐらいしかないので。

──EGOISTっていう“アーティスト”への提供で、「ギルティクラウン」という作品のためのアニソンだからこうなったわけですね。じゃあ、これがもしsupercellという名前で作る曲だったら……。

絶対、この発想はしないでしょうね。やっぱり「supercellじゃないもの」として考えながら作るので、チャレンジする方向性が変わっていくんですよ。supercell以外でやる場合は、最終的に歌とかボーカルをちゃんと気にするところがありますね。ちゃんと成立してないとダメだなって思うので。supercellの場合はあんまりそういうのを気にしてないんです。自分がやりたいようにやれるっていうか、正直、失敗してようがなんだろうが、自分がいいと思えればあとはなんでもいいかなっていうユニットなんですね(笑)。

──supercellは自分自身のユニットだから、自分が責任を取れる範囲で自由にやっていいと。

そういうことですね。それに比べると作家活動は違いますよね。きちんと「いいね」っていう、わかりやすいところでそう言われないといけないので、重みというか、責任感が違う。その責任感がありながらも、いかに面白く成立させるかっていうバランス感覚をちょっとsupercellから持ってくるみたいな感じですね。

ニューシングル「告白/僕らのあしあと」/ 2012年3月7日発売  /  Sony Music Records

  • 初回限定盤A[CD+DVD] / 1575円(税込) / SRCL-7881/2
  • 通常盤A[CD] / 1223円(税込) / SRCL-7885
  • 初回限定盤B[CD+DVD] / 1575円(税込) / SRCL-7883/4
  • 通常盤B[CD] / 1223円(税込) / SRCL-7886
初回限定盤A・通常盤A CD収録曲
  1. 告白
  2. 僕らのあしあと
  3. カレ
  4. 告白(TV Edit)
  5. 告白 -Instrumental-
  6. カレ -Instrumental-
  7. 告白(TV Edit) -Instrumental-
初回限定盤B・通常盤B CD収録曲
  1. 僕らのあしあと
  2. 告白
  3. カレ
  4. 僕らのあしあと(TV Edit)
  5. 僕らのあしあと -Instrumental-
  6. カレ -Instrumental-
  7. 僕らのあしあと(TV Edit) -Instrumental-
supercell(すーぱーせる)

コンポーザーのryoと複数のイラストレーター、デザイナーによって構成されたユニット。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。その人気はインターネットを通じて爆発的に広がり、2009年3月に待望のメジャーデビューを果たす。1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、翌年の「第24回日本ゴールドディスク大賞」にて「ザ・ベスト5ニュー・アーティスト」を受賞した。続く1stシングル「君の知らない物語」からはゲストボーカルにnagiを迎える。「君の知らない物語」はアニメ「化物語」の主題歌に起用され、こちらも大ヒットした。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリースし、オリコンウィークリーチャートで3位を獲得。その後、新ボーカリストを募集するオーディションを敢行し、2000人を超える応募者の中から福岡県出身の15歳、こゑだを選出。同年11月に彼女がボーカルを務めたシングル「My Dearest」を発売し、2012年3月7日に両A面シングル「告白 / 僕らのあしあと」をリリースする。