ryoという「神様」!?
──弾く際にはryoさんから具体的なディレクションはありますか?
もう、すごい細かいですよ(笑)。しかも面白いのは、ある意味でryoさんはプロデューサーで、すごく広く全体を見てるはずじゃないですか。でもディレクションをするときはめちゃくちゃミニマムなところまできちんと突いてくるんですよ。「え、そこ?」みたいな(笑)。それがすごいなあと思って。「自分としてはなんとなくオッケーかな」っていうテイクを弾くとしますよね。そのときに「これはもしかしたら気付かれないかな」っていう、ギタリストしかわかんないレベルのごくわずかなミスというか、全然いいんだけど理想に到達してない音があったりするんです。そこで「大丈夫かな?」って思ってやり終わったら、ちゃんとそこが指摘されるんですよ。そこがすごいなと思いました。「あ、やっぱり聴いててわかってました?」みたいな(笑)。
──きちっとした、正確な演奏を求められるということですか?
いや、きちっとしたっていうならたぶんデモが一番きちっとしたレベルですよね。それを演奏によって何パーセントも越えないといけない、その理想に到達してないという感じです。それはやっぱり自分でもわかるので、そこを突かれるのは……神様に言われてるみたいなところがありますよね(笑)。
──ryoさんは神様っぽい人なんですかね? 神様って言うと言い方がちょっとあれですけど。
いや、本人は全然神様っぽい人じゃないです(笑)。
──プロデューサー感が強い?
なんかね、プロデューサー感もあんまり強くないんですよね(笑)。そこが面白いところで。なんなんでしょうね。プロデューサーくさくもないし、でもすごく全体のことをわかっていて、しかも細かいところにこだわっている。
──そういう人は、何と呼べばいいんでしょうかね。
神様……じゃないですか(笑)。自分は筒井康隆が好きなんですけど「エディプスの恋人」っていう小説があるんですよ。その主人公の女性の好きだった男性のお母さんが神様として出てくるんですね。変な話ですけど、その主人公の彼女の初体験のときに神である男性のお母さんと入れ替わるんですよ。「お願いですから入れ替わってください」って言われて。そのシーンで宇宙の描写っていうか神様の描写があるんですけど、それをね、すごく思い出すんですよ(笑)。ryoさんがこう宇宙全体に漂っているんだけど、でも細部にも存在するっていう感じで、レコーディングのときにミニマムなことにすっごく集中してるっていう。あの人ってそういう感じの人なんだろうなっていうか。
──なるほど。神様といっても全知全能ですべてを支配しているみたいな意味ではなくて、全体でもあって細部でもあるみたいな?
そうなんですよね。いわゆる信仰の対象みたいな意味の“神”じゃなくて、宇宙全体にいて、さらにミニマムなところにもいるみたいな。そういう感じですよね。それをついつい思い出すんですよね。だからプロデューサーくさくないっていうか威張った感じがない。そこがちょっと面白いです。
100%を超える完成度を目指す
──しかし、それだけ細かな部分まで完成度を求めると、録るのは時間が掛かりそうですね。
結構かかりますね。フレーズ自体がしっかり決められていて、それをちゃんと弾かないといけないっていう意味でも時間がかかりますけど、今言ったみたいな1音1音の到達点の理想がかなり高いんですね。弾いていると自分もどんどん理想が高くなってくるので、全部通して弾いてから「そこそこいいけど、もっといけそう」みたいな感じの部分もあって、そういうところは何回も何回もやり直したりしましたね。
──なるほど。決められたフレーズの中で限界まで力を出すという感じですかね。
そうですね。作りはわりときっちりしてるんです。ただ、実際に演奏するときにはきっちりとしてない部分も意外と重要視されるというか、やっぱり100%以上の物を演奏で出すっていう気持ちで作っているんだと思いますよ。
──supercellはもともとは打ち込みの音楽ですけど、いかにも打ち込み的なオンタイム感はないんでしょうか。
それがね、あんまりないんですよ。まあでも生のリズムを使っている曲も多いので。特に今回のアルバムはそんなイメージがありますよね。
──アルバムのトータルコンセプトをryoさんから聞かされるようなことは?
わりと1曲1曲やってる感じなので、コンセプトはあんまり聞いてないですね。というかアルバムも1曲1曲がショーという感じがありますもんね。
CD収録曲
- 終わりへ向かう始まりの歌
- 君の知らない物語
- ヒーロー
- Perfect Day
- 復讐
- ロックンロールなんですの
- LOVE & ROLL
- Feel so good
- 星が瞬くこんな夜に
- うたかた花火
- 夜が明けるよ
- さよならメモリーズ
- 私へ
DVD収録内容
- 「君の知らない物語」×アニメ「化物語」コラボCM
- アニメ映画「センコロール」トレーラー映像
- PCゲーム「魔法使いの夜」トレーラー映像
- 「ヤングジャンプ」新増刊雑誌「アオハル」トレーラー映像
- 新曲「Perfect Day」Music Clip
初回生産限定特典
- supercellオリジナル全36Pフルカラーイラストブックレット封入
- supercellオリジナルデザインピック封入
- supercellオリジナルデザインケース仕様(illustrated by redjuice)
- 新曲ビデオクリップなどが収録されたDVD付き
初回限定盤イラストブックレット 参加イラストレーター
三輪士郎 / redjuice / huke / 宇木敦哉 / コザキユースケ / 優 / こやまひろかず / 粉冬ユキヒロ / なぎみそ / マクー / スガ
supercell(すーぱーせる)
コンポーザーのryoと複数のイラストレーター・デザイナーによって構成。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。2009年3月に発表したメジャー1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、ゴールドディスクに認定された。続く1stシングル「君の知らない物語」もアニメ「化物語」の主題歌に起用され大ヒット。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリース。