音楽ナタリー Power Push - SPECIAL OTHERS

ゲスト10人とがっぷり四つに組んだ10周年記念コラボ集

デビュー10周年イヤー真っ最中のSPECIAL OTHERSが、コラボ作品集「SPECIAL OTHERS II」を完成させた。10周年にちなんで、斉藤和義、RIP SLYMEのRYO-Z、ILMARI、PES、SU、DJ FUMIYA、THE BACK HORNの山田将司、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎、04 Limited SazabysのGEN、在日ファンクの浜野謙太という縁の深い10人のゲストアーティストをそれぞれフィーチャーした本作。各ゲストの個性を生かしたサウンドを通して、スペアザのこれまでの軌跡も感じ取ることができる。

今回の特集ではメンバー4人による「SPECIAL OTHERS II」の全曲解説を実施。コラボ相手との関係性、楽曲制作におけるこだわりなどをじっくり語ってもらった。

取材・文 / 大谷隆之 撮影 / 吉場正和

「この人と演りたい!」を結実させたコラボ第2弾

──2011年秋にリリースされた「SPECIAL OTHERS」に続き、2枚目のコラボ作品集ですね。

宮原“TOYIN”良太(Dr) はい。デビュー10周年イヤーでいろんな企画を立ち上げてたんですが、その集大成にふさわしいのはやっぱりコラボなのかなと。前作から5年経って新しい人脈も増えましたし。何より「この人と演りたい!」というアイデアがたくさん溜まっていたので。

柳下“DAYO”武史(G) 前回、「SPECIAL OTHERS」を録り終えたときに、「コラボってなんて楽しいんだ!」と思って。早く次を出したいねという話は、ずっとしてたんですよ。

SPECIAL OTHERS

芹澤“REMI”優真(Key) あれですっかり味を占めた(笑)。でも、コラボを乱発してバンドの軸がブレるのは嫌だったので。自分たちのオリジナルアルバムをしっかり作りつつ、5年間ずっとタイミングを狙ってました。

──全5曲が収録されていますが、どれもゲストボーカルの個性を引き出しながら、きっちりスペアザの音に仕上がっていて貫禄すら感じました。前作に比べて経験値が上がったからこそという部分もあったのでは?

宮原 そうですね。やってる音楽は変わらないけれど、この5年間でメンバー全員がデジタル技術に習熟して。曲作りにパソコンを活用するのは相当うまくなったと思います。それによってスタジオに入る前に、アレンジをかなり細かいところまで作り込めるようになった。

芹澤 もちろん最終的には、「せーの!」でセッションするんですけれど、その前段階をきっちりと詰めることでインプロの自由度も高まったというか。特にコラボ企画の場合、限られたスケジュールの中でゲストの方に最大限気持ちよく歌ってもらうことが大事でしょう。デジタルを活用した“事前アレンジ力の向上”は大きかった気がする。

宮原 セッションの勢いで曲を作っちゃうと、やっぱりあとで聴き直して「あれ、ここのアレンジ、意外に散らかってるな」と気になる箇所が出てくるんですよ。そういう反省を踏まえて、初回限定盤に付属するベストCDでも「BEN」と「Uncle John」の2曲をリテイクしましたし。「SPECIAL OTHERS II」では事前アレンジの精度も上げられて、さらに納得感の強い楽曲が作れたのかなと。

──アレンジ自体はわりとシンプル、かつ音数も控えめですよね。

柳下 はい。それも事前に作り込んだ影響だと思いますが、ボーカルがなるべく際立つように、音を重ねるだけじゃなく引き算で考えるアレンジはかなり意識しています。

又吉“SEGUN”優也(B) 普段のインストと違って、やっぱり歌詞をしっかり伝えたかったんですよね。例えばベースなら、「ここはボーカルの帯域と重なるからもう少し音数を削ろう」的なことは常に考えつつ。

──コラボ相手の人選はどのように決めたのですか?

宮原“TOYIN”良太(Dr)

宮原 5年かけて自然に固まっていった感じです。フェスを通じて知り合って「肌が合うなあ」と感じたり。ライブ観て「この人の歌に演奏付けてえなあ」と思ったりとか。

柳下 要は僕らがリスペクトしていて、しかも気心の知れた相手。

又吉 その人の個性や癖がわかってるからこそできる曲作りやアレンジって、絶対ありますからね。少なくとも僕らの場合、初対面で「はい、じゃあよろしくお願いします」的なやり方は想像しにくい。互いをよく知ってるという関係性は、けっこう重要なポイントでした。

──なるほど。楽曲制作はどのような流れで?

宮原 まず僕たちが完成度の高いトラックを作り、そのカラオケ音源を相手に送って、歌メロと歌詞を乗せてもらうのが基本の流れですね。逆に言うとどのトラックも、自分たちの演奏に相手の歌が入るのを想像しつつ作っていった。「俺たち4人だったらこの音にしちゃうけど、こっちの音のほうがあの人っぽくない?」とか相談しながら。

又吉 楽器のセッティングも、4人のときと微妙に変えてみたりね。

柳下 多少セッティングを変えても、ちゃんと自分たちの音色を出せる自信はありましたし。アレンジ面では“スペアザっぽさ”にこだわらず、思い切りゲストに寄せて作った部分もありますね。

「ザッチュノーザ」ゲストボーカル:斉藤和義

テキトー仮歌を生かした自然体ナンバー

──アルバム冒頭を飾るのは、斉藤和義さんとコラボした「ザッチュノーザ」です。ゆったりしたグルーヴと温かい音色が印象的なミディアムナンバーに仕上がってます。

SPECIAL OTHERSと斉藤和義。

宮原 この曲はですね、僕が車を運転してたとき、ふと降りてきたフレーズがもとになってるんです。まず最初に「♪ザッチュノーザ ザッチュノーザ」というサビのフレーズが思い浮かんで。その“テキトー英語”の鼻歌をベースに、スタジオで楽曲を組み立てていきました。そしたら和義さんが、そのテキトーな仮歌を気に入ってくれて(笑)。そのまま採用されたという。

芹澤 「このフレーズ、なんかオマジナイっぽいよね」って言ってね。そういう自然体なところが、いかにも和義さんっぽくてカッコよかった。今回、コラボ相手によって、デモ音源の仮歌っぽいメロディを生かす人もいれば、予想もしてなかった歌メロを付けてくる人もいて、それがまた面白かったんですけど。まんま仮歌を生かしてくれたのは、和義さんだけでした。

宮原 しかも和義さんが調べてみてくれたところ、英語で「ザッチュノーザ(That's you know that)」って「君はわかってるはずだよ」って意味にも取れるそうで。俺的には超ラッキーだったなと(笑)。

芹澤 アレンジ面では、普段の和義さんは歌わなさそうなコード進行や和声をわざとぶつけたところはありましたね。和義さんの曲って、どこかアメリカの王道ロック的イメージがあるでしょう。俺らが最近、ロバート・グラスパーやジェイソン・リンドナーみたいな、ニューヨーク発の新しいジャズにハマってることもあって。そういうテイストを入れてみたらどうなるだろうと。

柳下 和義さんが持つ歌力なら、そういう洗練されたジャズのテンションコードも余裕で歌いこなしてくれる気がしたし、実際それ以上でした。ブースに入って和義さんが歌い始めた瞬間、鳥肌が立ちましたもん。

芹澤 うん。声を一発出しただけで、すべてを成立させてしまう強さがあったもんね。普段は地元のおニイちゃんみたいだけど、「この人はホンモノのスターなんだな」と。

柳下 その声をなるべくシンプルに引き立てたかったので、この曲のギターはソロパート以外、バックで和声を奏でる役目に徹しています。

──歌詞も素敵ですね。冒頭の「♪言葉に出来ないよ だから僕ら 音の中へ」という1行だけで、スペアザの目指す音楽性を表現しきっていて。

宮原 しかもこれ、なんの打ち合わせもしてないんですよ! デモ音源だけでイメージを膨らませて、僕らのやりたいことを深く言い当てた詞を書いてくださって、マジで感動しました。

又吉“SEGUN”優也(B)

又吉 あと後半の展開部では、TOYIN、SEGUN、REMI、DAYOという僕ら4人のニックネームまで読み込んでくれて。メンバー紹介の歌にもなってるんですよ! 例えば僕は、フィンガーピッキングでベースを弾くことが多いので「♪人差し指でキミの腰くねらせるはSEGUN」だったり……。

柳下 僕は4行目で「♪そうDAYOそうDAYO愛撫するように しなやかに弦を弾け」って歌ってもらってるんですけど。最後の「♪弦を弾け~」の歌とちょうど重なるように、僕のギターソロが始まるんです(笑)。最初に聴いたときは、ホントびっくりした。

芹澤 あれも和義さんがベーシックトラックを聴いて、歌詞を書いてくれたと思うんだけど、心憎すぎる(笑)。あの計算はすごいなと。

──ちなみに歌入れのレコーディングはどんな雰囲気でした?

柳下 すごく和やかでした。地元の気が合うニイさんというか(笑)。僕らのしょーもない会話に、延々同じ目線で付き合ってくれて。

芹澤 和義さん、ものすごい楽器オタクなんですね。なので話す内容といえば、ディープな楽器トークと。あとはひたすら下ネタと美味しい焼肉屋さんの話。大スターなのに、“心のエンゲル係数”がまったく下がってない(笑)。

宮原 歌入れのレコーディング後、「今度は5人でセッションしようねー」って言ってくださって。それもすごくうれしかったです。

コラボ作品集「SPECIAL OTHERS II」2017年3月1日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
「SPECIAL OTHERS II」
初回限定盤 [3CD] / 3888円 / VIZL-1114
通常盤 [CD] / 1944円 / VICL-64715
CD収録曲(共通仕様)
  1. ザッチュノーザ / SPECIAL OTHERS & 斉藤和義
  2. 始まりはQ(9)CUE / SPECIAL OTHERS & RIP SLYME
  3. マイルストーン / SPECIAL OTHERS & 山田将司(from THE BACK HORN), 菅原卓郎(from 9mm Parabellum Bullet)
  4. loop / SPECIAL OTHERS & GEN(from 04 Limited Sazabys)
  5. かませ犬 / SPECIAL OTHERS & 浜野謙太(from 在日ファンク)
初回限定盤付属CD「SPECIAL OTHERS BEST」収録曲

DISC 1

  1. BEN [Retake]
  2. Uncle John [Retake]
  3. IDOL
  4. AIMS
  5. Good morning
  6. Surdo
  7. STAR
  8. Laurentech
  9. Hankachi

DISC 2

  1. PB
  2. Stay
  3. Wait for The Sun
  4. beautiful world
  5. ROOT
  6. ORION
  7. neon
  8. Good Luck
  9. I'LL BE BACK
  10. LIGHT
SPECIAL OTHERS「10th Anniversary BEST盤TOUR QUTIMA Ver.22」
  • 2017年3月11日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
  • 2017年3月12日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2017年3月17日(金)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2017年3月18日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2017年3月20日(月・祝)新潟県 新潟LOTS
  • 2017年3月25日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2017年3月26日(日)岡山県 YEBISU YA PRO
  • 2017年4月1日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2017年4月2日(日)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2017年4月8日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2017年4月9日(日)宮城県 Rensa
  • 2017年4月13日(木)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2017年4月15日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2017年4月20日(木)群馬県 高崎club FLEEZ
  • 2017年4月22日(土)香川県 高松MONSTER
  • 2017年4月23日(日)高知県 CARAVAN SARY
  • 2017年4月28日(金)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2017年6月2日(金)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2017年6月3日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2017年6月9日(金)東京都 Zepp Tokyo
  • 2017年6月17日(土)沖縄県 桜坂セントラル
SPECIAL OTHERS(スペシャルアザース)
SPECIAL OTHERS

1995年、高校の同級生だった宮原“TOYIN”良太(Dr)、又吉“SEGUN”優也(B)、柳下“DAYO”武史(G)、芹澤“REMI”優真(Key)の4人で結成。2000年から本格的に活動を始め、2004年8月に1stミニアルバム「BEN」をリリース。2005年6月の2ndミニアルバム「UNCLE JOHN」発表後には「FUJI ROCK FESTIVAL '05」に出演し、大きな注目を集める。2006年6月にミニアルバム「IDOL」でメジャーデビューを果たす。2011年11月にさまざまなアーティストと共演したコラボ作品集「SPECIAL OTHERS」を発表し、2013年6月には初の東京・日本武道館公演を成功させた。2014年10月に、メンバー4人がアコースティック楽器で演奏する新プロジェクト「SPECIAL OTHERS ACOUSTIC」名義での“デビュー”アルバム「LIGHT」をリリース。2017年3月にデビュー10周年を飾るコラボアルバム第2弾「SPECIAL OTHERS II」を発表した。