ナタリー PowerPush - SCOOBIE DO

18年目の原点回帰 聴き手に託す「かんぺきな未完成品」

SCOOBIE DOがニューアルバム「かんぺきな未完成品」をリリースした。彼らとしては約1年半という長めのスパンを置いて制作された本作は、バンドの初期衝動を体現したシンプルなファンク&ロックアルバム。その背景には、普遍的なメッセージを詰め込んだ前作「MIRACLES」の影響があったという。前作の反動のような作品がいかにして生まれたか、メンバー4人に話を聞いた。

取材 / 臼杵成晃 文 / 伊藤実菜子 インタビュー撮影 / 笹森健一

「MIRACLES」はいいところに落としすぎた

──前作「MIRACLES」リリース時のインタビューでは「14カ月周期で動いている」という話をされていましたが、今回は1年半くらいのスパンが空きましたね。この1年半はどのように過ごしてたんですか?

SCOOBIE DO

マツキタイジロウ(G) 去年は本当にずっとライブばっかりで。リリースは夏に怒髪天とのスプリットシングル(「恋のレキシカン・ロック / おんな」)が出たぐらいですね。アルバムのレコーディングをやらなかったから、1、2カ月分くらい例年に比べてライブが多かったんですよ。

──そのぶんライブはガッチリやっとこう、と。

マツキ そうですね。前回の「MIRACLES」っていうアルバムを、わりと本当にいいところに落としちゃったなっていう感じが自分の中でしていて。

──落としどころがスマートすぎた?

マツキ 俺らみたいなバンドとしては、あれ以上やってもやらしくなっちゃうし、あれ以下でもちょっと違うし……その次を作るのが難しいなと思ってたんですよね。なので14カ月よりはもうちょっと空けない?みたいな話をみんなにしてて。1年半くらい空けるっていう話だったんですよ、最初から。そうこうしてるうちに怒髪天とのスプリット盤が決まったんで、去年1年間はとりあえずそれを持ってなんとか乗り切れたっていう。

17、8年前のSCOOBIE DOに感化されて

──前作は「のちのち名盤となるアルバムを作る」「曲自体を大事にして演奏を組み立てる」というテーマがあったと思うのですが、今回は冒頭からその真逆を行くようなえげつない音で(笑)。これはもうあからさまに違うことをやってきたぞっていうのが、一発目から耳に飛び込んできます。これは最初にどのようなアルバムをイメージして制作に取りかかったんですか?

マツキタイジロウ(G)

マツキ 当初は「MIRACLES」の延長線でいこうと思っていたんだけど、やっぱり「MIRACLES」は最初に言ったようにいいところに落としすぎてて。その路線を推し進めると自分としてもあんまり面白くない作業になってくるし、そのアルバムのツアーが「MIRACLES」と同じような、緻密な演奏と丁寧な歌を聴かせるツアーになったらダメだなっていう気がして。そうやっていろいろ考えてたらテンションが上がらなくなってきたんですよね。それでどうしようかなと思っていたときに、「レア音源試聴会」っていうイベントを青森でやるために、まだ(ナガイケ)ジョーもいない初期の頃の楽曲をライブ録音したカセットテープを聴いたんですよ。17、8年前の音源なんで相当サブいことをやってるだろうなと思いながら聴いたら「あれっ?」っていうぐらいカッコよかったんですよね。しかも今とそんなにやってること変わってなくて。それぞれが思いっきり演奏してて、それが奇跡的に合ってる、エネルギッシュでフレッシュな雰囲気がすごいよかったんです。

──ああ、若い頃の自分たちに出会っちゃったんですね。しかも青臭い演奏を想像してたら意外と嫉妬するぐらいの出来栄えで(笑)。

マツキ そうなんですよ。むしろ当時はもっと渋いことをやってて。このテンションってここんとこなかったので、こういう雰囲気の曲をやってみようかなと思って曲作りに取りかかったっていう流れですね。だからこのアルバムってバンドの当初の姿に近いっていうか、すっごい「スクービーっぽい」んですよ。どっちかっていうとここ数年の作品のほうがうちらっぽくなかった。

「○○っぽくやろう」はいらねえんじゃないか?

コヤマシュウ(Vo)

──もともとスクービーってルーツを色濃く感じさせる音楽をやっていると思うんですけど、今回は今までに出してなかったルーツというか。いわゆる60年代ロック的な音を直球で出すというのは意外とやってなかったですよね。

マツキ そうなんですよね。今回は僕が1人で演奏したデモを12曲全部まとめて、曲順も決めちゃって「こういうアルバムを作りたいんだ」ってメンバーに渡したんです。

──前作とは大幅に異なるモードのものを受け取って、3人はどう感じました?

コヤマシュウ(Vo) 俺はそんなに違和感は感じなかったですね。別にすんげえ突拍子ないものじゃないっつうか。歌はタイちゃん(マツキ)が歌ったやつだから、これは俺が歌うとどうなるんだろうなっていうのは最初はあるんだけど。歌詞とかメロディ、リズムとかでどう歌えばいいのかわかってくるから、早く覚えてみんなで合わせたいと思いました。

オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)

オカモト “MOBY” タクヤ(Dr) 前作を経ての今回のアルバムはロックに特化したものが来るだろうなとは予想していて。で、デモをもらって「なるほど、ここらへんをこうやりたいんだな」っていうのはわかったんだけど、ドラムに関しては打ち込みだから、これはちょっと大変だぞっていうプレイもあって……自分の考えは極力全部捨てて、なるべくデモが目指してるものに近付けるようにやった感じですかね。自分のエゴをなくしていくっていうか。まあ、この3人で音出してシュウくんが歌えばSCOOBIE DOになるっていうのはとりあえず大前提なので。

ナガイケジョー(B) 僕も通して聴いて、正直ドラム大変そうだなって思った(笑)。大変そうっていうか、これを最新作として出すならドラムが一番カッコよくないといけないなっていう印象でしたね。ドラムがガガッと盛り立ててくれればいいなと。

──確かに、スクービーが一番得意とするようなリズムパターンじゃない曲が今回は多いですね。

ナガイケジョー(B)

MOBY 今まで新しい曲を合わせるときは「この曲は○○っぽくやろう」みたいな感じでやってきてたんですけど、「あ、これはそういうのいらねえんじゃないか?」と思って。単純にこの曲をただ楽しくやるのがいいんじゃないかっていうのをレコーディングに入る直前に気付きましたね。初期衝動のカッコよさって言ったら一番わかりやすいかもしれない。

──パッと聴きは初期衝動的なものを感じるんですけど、聴き進めると実際はただのシンプルな曲じゃないっていうのがわかってくるんですよね。それはおそらく蓄えてきた実力がなせる業なんだと思いますが、アレンジの実作業はもともと描いていた青写真からどういう感じで進んでいったんですか?

マツキ いや、今回ね、本当にもうほぼデモの通りなんですよ。僕が作ったデモから「ここはこうしたい」とか「もうちょっと変えたい」っていう意見が出てくるだろうって思ってたら案外そうならなくて。みんなその曲に合うようにどれだけ上手に演奏できるかっていうモードに突入してたんですよね。なので今回はいい音でいい演奏が録れればそれで完成の盤だなと思っていて。で、レコーディングスタジオに行って中村(宗一郎 / PEACE MUSIC)さんにデモを聴いてもらったら、「まあ一発録りでいいかな」って話になり。ちょうど僕らの前に一発録りでアルバムをレコーディングしたのがギターウルフだったらしくて(笑)。じゃあせっかくだから一発で録ろうと。基本は一発録りで、あとから僕がいろいろダビングしたり、ゲストを呼んで弾いてもらったりっていう感じですね。

ニューアルバム「かんぺきな未完成品」 / 2013年5月15日発売 / 2625円 / CHAMP RECORDS / HICC-3608
ニューアルバム「かんぺきな未完成品」
収録曲
  1. 想定外のハプニング
  2. かんぺきな未完成品
  3. 顔のない声
  4. 愛と呼べたら
  5. ひとつと半分
  6. 風は吹き抜けた
  7. 夢のその先へ
  8. 一粒のしずく
  9. ハートビート
  10. 悲しみと踊りながら
  11. もういちどやってみよう
SCOOBIE DO(すくーびーどぅー)

SCOOBIE DO

1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にK.O.G.A. RECORDSから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin’ OurScoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。2013年5月15日、CHAMP RECORDS通算6枚目となるオリジナルアルバム「かんぺきな未完成品」をリリース。