音楽ナタリー PowerPush - SCANDAL
世界に打って出る等身大の自信作
SCANDALが6枚目のオリジナルアルバムとなる「HELLO WORLD」をリリースした。
前作から約1年2カ月ぶりの本作は、ほぼすべての楽曲でメンバーたちが作詞、作曲、アレンジまでをも手がけたセルフプロデュース色の強い仕上がり。4人の個性を色濃く反映した楽曲にはサウンド的な遊び心も満載され、それぞれがリードボーカルをとるナンバーも。デビューから6年を経たバンドの底力を感じさせつつも、新たな衝動をたっぷりと詰め込んだみずみずしいアルバムとなっている。
今回ナタリーではメンバー4人にインタビューを実施。「自信作」と声を揃える本作の内容について、そして来年に控えるワールドツアーへの意気込みを聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 笹原清明
自然とできた“生活感”のあるアルバム
──ニューアルバム「HELLO WORLD」。その仕上がりには大きな手応えを感じているのではないでしょうか。
HARUNA(Vo, G) はい、すごく手応えは感じています。今回はメンバーがソングライティングした曲がたくさん入っているんですけど、この1年を通して自然と生まれたものを1枚にまとめることができたんですよ。アルバムとしてのテーマを決めて、そこに向けて曲を作っていったわけではなく、自然と出てきたものを13曲集めることができたなって。で、それらがまとまったときには、それぞれの曲の主人公がちゃんと同じ方向を向いているな、しっかり前を向けているなって思いましたね。
──それはつまりメンバー4人が同じ方向を向いて前へ進めていることの証明ですよね。
TOMOMI(B, Vo) そうだと思います。みんなが自然と同じ方向を向いていたんだなって。その上で、楽曲制作するときに意識する部分が変わったところもありましたね。今まではバンドとしてライブを中心に考えていたので、常にライブを意識したアレンジをしていたところがあって。でも今回は自分たちからナチュラルに出てきた曲たちが集まったので、純粋にCDとしてよいものを作りたいと思うようになったんです。自分は普段、そのときの気分にあわせてCDを選んでいるし、自分の気持ちとどこかでリンクしている音楽を探して聴いているなって思ったので、リスナーの方にとってもそういう日常生活の中でチョイスしてもらえる作品になったらいいなって。結果、自分にとってすごく新鮮さのある作品になりましたね。
──現在のSCANDALの等身大の作品になっている印象がありますよね。何気ない日常が描かれた歌詞も多いので、聴き手はすごく寄り添いやすいと思います。
RINA(Dr, Vo) うん。できあがってみて、このアルバムのテーマは“生活感”なのかなって自分で思いました。それが今のバンドのモードであり、それをちゃんと音楽として表すことができたので、すごく刺激的な作品にもなったなって。「ああ、作ったー!」っていう達成感もずっしり味わえましたしね。
MAMI(G, Vo) いろんな部分ですごく自由度が増したなっていうのも感じました。テーマとか関係なく集まった曲たちなので、自分たちの好きなもの、好きな色っていうのが強く出てますからね。そういうことが自然体でできたのは、デビューからいろんな経験を積み重ねてきた今だからこそだと思います。ほんとに自分たちにとって大切な1枚になりました。
メンバー全員がソングライティングを担当
──曲ごとに作詞やソングライティングをした人の個性を強く感じることができますもんね。それによって楽曲の幅もこれまで以上に広がっています。
MAMI それぞれから生まれてくる曲を通して、メンバーの新たな一面を発見することも多かったので、それが自分たちとしてもすごく楽しかったです。HARUNAなんかは今回、作曲を初めてしているんですけど、「カラオケで歌えるような感じの曲をイメージしたんだよ」っていうことを言っていて。それを知った上で聴いてみると、確かにカラオケで歌ったらストレス発散できそうだなあって曲に仕上がっていて(笑)。
HARUNA 作っていてすごく楽しかったです(笑)。自分たちで曲を作れば、そこには今まで以上のリアリティが生まれてくるし、それを作曲したメンバーがリードボーカルとして歌うことでバンドとしての幅がより広がったなって思うんです。そういったいろんなジャンルの、いろんな色を持った曲たちを、SCANDALとしてしっかり見せていけることは大きな強みになるなって改めて思いましたね。
──そう。今回はメンバーそれぞれの“ソロ曲”とも言えるナンバーが収録されているのも大きなトピックと言えます。作詞・作曲を手がけたメンバーが、リードボーカルも担当しているという。
HARUNA 最初は当たり前のように私が歌うと思っていたんですけど、それぞれが作ってきたデモを聴いたときに、やっぱり作ってきた本人が歌ったほうがよりリアルに届くんじゃないかなって思ったんですよ。だからRINAにもちょっと歌ってみたらって提案をさせてもらったんですけど。結果としてそれはすごくいい判断だったなって思いますね。
──RINAさんは「おやすみ」という曲で初のリードボーカルを担当されていて。
RINA はい。アリーナでのライブを経験させてもらったことで、広い会場に似合う曲を作りたいなっていうのが頭にあったんですよ。歌詞は去年のホールツアーのとき、ホテルのベッドの上で書いたんですけど。
──基本ワンメロがループして進行していく、面白い雰囲気の曲です。
RINA コード進行とリズムの変化で成り立つ構成にしたかったので、ちょっとシューゲイザーっぽい音楽になりました。この曲ではボーカルに加え、ギターも私が弾いているんですよ。それも初めての試みだったので、ドキドキがたくさん詰まった1曲です(笑)。
──TOMOMIさんのソロ曲は「缶ビール」ですね。
TOMOMI そうです。ロマンチックでセクシーな曲を作りたかったので、だったらお酒の歌だなと思ったんですよ。でも、私自身がお酒を飲めないので、自分が思い描いていた曲にはならないから、じゃあお酒が飲めない人の歌にしてしまおうと。私は大島智子さんというイラストレーターの方が描く、生活感のある女の子の絵が大好きなので、そこからも影響を受けた世界観だと思いますね。
──別れた彼氏が忘れていった缶ビールを捨てようと決意する曲。飲めない人ならではの面白い視点ですよね。
RINA バンド内には飲める人(HARUNAとMAMI)と飲めない人(TOMOMIとRINA)がいるので、「わかるわあ!」っていう意見と「私だったら飲んじゃうけど」っていう意見に分かれたのが面白かったですね(笑)。
HARUNA そんなの飲んじゃいますよね。忘れてってくれてラッキー!って(笑)。
MAMI あははは(笑)。そうだね。
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- ニューアルバム「HELLO WORLD」2014年12月3日発売 / EPICレコードジャパン
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収録曲
- Image
- Your song
- love in action
- Departure
- Graduation
- 夜明けの流星群
- お願いナビゲーション
- Runners high
- 本を読む
- 缶ビール
- Winter story
- おやすみ
- Place of life(feat. Tetsuya Komuro)
- Blu-ray / DVD「SCANDAL ARENA LIVE 2014『FESTIVAL』」2015年1月14日発売 / EPICレコードジャパン
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SCANDAL(スキャンダル)
2006年8月に大阪のボーカル&ダンススクールで出会ったHARUNA(Vo, G)、MAMI(G, Vo)、TOMOMI(B, Vo)、RINA(Dr, Vo)の4人で結成したガールズバンド。結成直後から大阪城公園でストリートライブを始め、キュートなルックスと力強いバンドサウンドを武器に瞬く間に人気が急上昇する。2008年10月、シングル「DOLL」でメジャーデビューを果たし、2009年末には「第51回輝く!日本レコード大賞」で新人賞を受賞した。2012年3月には初のベストアルバム「SCANDAL SHOW」を発売。2013年3月にはメンバーの念願だった大阪・大阪城ホールにてワンマンライブを開催し、2014年6月には神奈川・横浜アリーナにてガールズバンドとして23年ぶりとなる2DAYSのワンマンライブを大成功に収めた。2014年12月3日にニューアルバム「HELLO WORLD」をリリース。2015年1月からはSCANDAL史上最多公演数となる全31公演の国内ホールツアーと、初の単独海外公演(フランス、イギリス、アメリカ、香港、台湾、メキシコ、ドイツ、シンガポール)を含む9カ国でのワールドツアーを開催する。