ナタリー PowerPush - SAWA
1stフルアルバムはトンデモ小宇宙 秘境“Sa-World”の謎を徹底解明
トラックメイカーSAWAを作ったのは親戚のおじさん
──“初のフルアルバム”を制作するにあたり「こういうアルバムを作ろう」という明確な目標はありましたか?
「非日常へのエスケープ」が主なテーマだったんですよ。で、その「非日常」ってなんだろうって自分でもずっと思ってたんですけど、それをハッキリとした遊園地みたいなもので表現したくて。全部の曲をアトラクションに見立てて、さらにそのアトラクションをゾーン分けして、なおかつ“案内人”に連れて行ってもらったらどうだろう、と考えたんですね。それでまず「遊園地」という世界観をイメージしました。
──アルバム全体の構成もSAWAさん自身で?
そうですね。でも、ただ曲を並べても統一感は出ないから、いろいろ考えているうちに、自分でプログラミングした曲をインタールードとして作って、統一感を強めるように。
──SAWAさん自身の打ち込みによる楽曲は、このアルバムの重要なポイントのひとつですよね。mixi日記では「打ち込み歴4カ月の実験的アルバム」とおっしゃっていましたが(笑)。
うん(笑)。でも4カ月というのも、ちょっと多めに言ってるような感じで。実際に「Dream about...」って曲を提出したのは打ち込みを始めて3日目ぐらいなんです。デモができたらどんどん提出していった感じだから、もちろんそんなにクオリティの高いものじゃないんですけど。
──そもそも、なぜ自分で打ち込みを始めたいと?
ヒマだったから(笑)。一番はそれですね。それと「一番都合のつく作曲家」が1人いたらなと思っていて。いろんな曲を並べて「ここにこういう曲があったらな」と思ったとき、そのニュアンスを自分で作るとか。ほとんど鼻歌だけのトラックもあるし、SEがほとんどのトラックもあるし、難しいことは一切ないんだけど、イメージそのままのものってやっぱり自分にしか作れないから。それをすんごい努力して説明して作ってもらうんだったら、自分でやったほうが早いかなって。
──いきなり始めて、難なく取りかかれましたか? もともとピアノをやってらっしゃったとはいえ、DTMってそうそう敷居の低いものではないですよね。
うーん、Macをタダでもらったっていうのも大きかったかも。Macもらわなかったら絶対やんなかったですけど、親戚のおじさんがMacをくれたので。
──レーベルや事務所の方からではなく、親戚から(笑)。実際に自分でトラックを作ってみて、手応えはどうでしたか?
最初は自分の作ったものが良いのか悪いのか、全くわかんなかったんですよね。他の人が作ったものと同じように聴くことができなくて。
「窓から空に彼投げ出したら」
──アルバムにはSAWAさん自身が作った曲も含め、新曲が多く収録されていますが、新曲ではクラブミュージック/ダンスミュージックの枠ではくくれない曲も多く、新鮮でしね。個人的には中盤の「Throw him away!」と「I'm a President」が特に印象的でした。
そうですね。この2曲は新しい自分が結構出せたかなと思ってます。
──「Throw him away!」の前には、SAWAさんが作ったインタールード「Chocolate Zone ~野生のSAWA~」が入っていて、ここではSAWAさんが作詞をする様子が音声で収められていますが、この作詞風景が……またちょっと独自のワールド全開で驚いたんですけど(笑)。「窓から空に彼投げ出したら」って、もう発想の種がわかんないし、なぜこの歌詞を考えている姿をインタールードに放り込んだんだろうっていう(笑)。
なんなんでしょう。最初のメロディに「エビバディ」を入れたところから「みんながナントカしているナニナニ」っていうものだなっていうことを考えて。みんなが注目する誰かかな、とか考えているうちに、アメリカンコメディみたいな世界観がひらめいたんですね。主人公の女の子はラクロス部で、男の子はアメフト部の調子に乗ってる彼、みたいな感じ。で、その調子に乗ってる彼を……投げ出しちゃったんですよね。
──なんで投げ出しちゃったんでしょうね?
誰しも思ったことあるんじゃないかなーって考えて。私も学生のとき、モテ線で調子乗ってる男の子をあまり気持ちよく思っていなかったので(笑)、とりあえず投げ出したいなっていう思いでした。
──メロディ的にもすごくハマってるし、気持ちの良い響きのフレーズではあるんですけど、このメロディにこういう歌詞を乗せるとは(笑)。
「窓から」っていうフレーズがあることで、すごく絵が見えたというか。ただ「空に彼投げ出す」っていうとすごく抽象的でふんわりしてるけど、「窓から」っていう現実があると余計に怖いかな、と思って。でもホント、ナルシストって投げ出したくなりませんか?
──ええ、わかります。この曲はアルバムの中でもすごくインパクトのある曲だし、SAWAさんという人がいったいどういう人なのかっていうのが、不思議な内容ながら的確に表現されてる曲なんじゃないかと。
うふふ。そうかもしれないですね。
大統領は次の世界の肥やしに
──それから「I'm a President」。この曲も本当に胸を締め付けられるような名曲だと思います。が、なぜ「私は大統領」なんだろうって。
あぁ、そうですね(笑)。“Sa-World”内の大統領は自分なので、まず大統領になったら世界の変えたい部分はどこだろう、と考えて。「虹色の雨にする」とか「綿あめの雲にする」とか、そんなことをしてみたいなと思っていたんです。あと、私は「アルマゲドン」(1998年公開。マイケル・ベイ監督によるSFパニック映画)を観たことがないんですけど、「こんな話だろうな」って思い描いた自分なりの「アルマゲドン」があるんですよ。この曲はそのイメージで。サビで世界が滅びる中、いっぱい物が倒れてきて、大統領である自分が「アァァーッ!」っとなって、焼け落ちる地球の中で「さらば世界よ」って叫んでる。そういうストーリーなんです。
──なるほど。これ、もはや大統領の仕事というより、神の視点ですよね(笑)。
確かに(笑)。大統領ができるレベルじゃないですね。
──最終的に世界の長である自分が滅びちゃうということは、つまり“Sa-World”の長は“悪”なんですか?
悪ではないと思うんですけどねー。うん、悪じゃないけど、1回滅びるんです。逃げ遅れたっていうか……どちらかというと正義の味方。みんなが逃げるための宇宙船に乗り込んだときに「大統領も行きましょうよ!」って言われてるんだけど「いや、私はいい……」とみんなを送り出して息絶える、みたいな。
──雨の後に虹がかかっているし、「明日の風が新しい」し、すごく幸せな、浄化された世界のイメージですね。でも、大統領はそこで潰えてしまってる。
大統領は、その次の世界の肥やしになったんですよ。それで虹色の雨が降るようになったということなんです。
──かなり壮大なSF設定ですね。大学時代は超常現象研究サークルに入っていたわけだし、SAWAさんはもともとSFなどに興味があったんですか?
んー、好きと言うほどじゃないんですけど、どちらかというとシュールなものが好きなので、ただ平和に終わるというよりはこういうラストがいいかなって。「I'm a President」で大統領と世界が消えたあと「Danger Zone ~逃げろ!危うしSa-World!~」でいったん壊して、また再生するんです。
──アルバム中盤で、一度完結しちゃうわけですね。
そうです。1回ちょっとリスナーをどん底に。
──どん底(笑)。ここで第1幕が終了するという。
さよならして、「Swimming Dancing」でまた「こんにちわー」って出てくるんですよ。
CD収録曲
- Opening Ceremony ~Sa-Worldへようこそ~
- MerryGoRound
- Stars
- NightBus
- Chocolate Zone ~野生のSAWA~
- Throw him away!
- ManyColors
- I'm a President
- Danger Zone ~逃げろ!危うしSa-World!~
- Swimming Dancing
- Friday Night
- Planet-T
- Eat It All ~Live in Sa-World~
- I Can Fly
- あいにいくよ
- Dream about...
- Thank you for visiting ~My name is...~
初回盤DVD収録内容
- 「I Can Fly」「Swimming Dancing」「あいにいくよ」PV
- Sa-Worldの作り方(表ver.)
- Sa-Worldの作り方(裏ver.)
5iVE STAR -summer tour 2010-
ファッション誌で活躍する人気読者モデルが多数参加するファッションイベントに今年もライブゲストとして参加!
- 2010年7月3日(土)
北海道 札幌Sound Lab Mole - 2010年7月11日(日)
宮城県 仙台RIPPLE - 2010年7月17日(土)
福岡県 福岡BEAT STATION - 2010年8月1日(日)
東京都 LAFORET MUSEUM HARAJUKU - 2010年8月4日(水)
愛知県 名古屋DIAMOND HALL - 2010年8月5日(木)
大阪府 なんばHatch
LIVE GUEST:Astro / SAWA
出演モデル:青柳文子 / 池田泉 / 木野園子 / 瀬戸あゆみ / 武智志穂 / 田中里奈 / and more
※出演モデルは会場によって異なります。
※出演モデルは都合により変更となる場合があります。
SAWA(さわ)
2008年6月に半沢武志(FreeTEMPO)プロデュースのミニアルバム「COLORS」でインディーズデビュー。透明感のある歌声と独特のキャラクター、そして「元高校教師」という経歴が話題となり、クラブシーンを中心に大きな注目を集める。2009年7月には3rdミニアルバム「I Can Fly」でEPICRecordsよりメジャーデビューを果たし、2010年7月7日に初のフルアルバム「Welcome to Sa-World」を発表。また、ボーカリストとして多くの作品に参加しているほか、ファッションイベントへのライブ出演や、韓国での配信リリースなどさらに活動の幅を広げている。