ナタリー PowerPush - Rails-Tereo

どこまでもポジティブなピアノマン 人々のポップな日々を高らかに歌う

Rails-Tereoが2ndアルバム「Piano Pop Life」の先行配信をiTunes Storeにてスタート。4月24日にはCDもリリースする。

Rails-Tereoは大阪を中心に活動するピアノ弾き語りスタイルのシンガーソングライター。前回の特集で紹介した通り、昨年3月発売の1stアルバム「Pop Sings Pop Things」の収録曲中5曲がCMソングに起用されるなど、すでに音楽業界内外で高い注目を集めている。

今回ナタリーではそんなRails-Tereoの横顔に肉薄。ピアノポップ職人はいかにして誕生したのか、そして満を持してリリースする2ndアルバムはいかにして作られたのか、大いに語ってもらった。

また本特集最終ページでは、2013年3月1日に東京・渋谷7th floorで開催されたライブ「2マンライブ『キタコレ! ~E-POP~』」の模様をレポート。明るく優しいRails-Tereoのステージの魅力に触れてみてほしい。

取材・文 / 川倉由起子 撮影 / 佐藤類

布袋を聴いて、後頭部を殴られたような衝撃を受けた

──地元・大阪では野球少年として育ったそうですが、音楽に興味を持ったきっかけはなんだったんですか?

Rails-Tereo

中1のときにハマった、布袋(寅泰)さんですね。僕が好きになったのはアルバム「GUITARHYTHM II」の頃なんですけど、ラジオで聴いたり、ライブを観に行ったりして「これや!」って思って(笑)。なんか後頭部をガーンと殴られたみたいな、すごい衝撃を受けたんです。

──そこから自分でも音楽を始めてみようと?

そうですね。最初は当然ギタリストになりたかったんですけど、バンドメンバーを集めてみたらギターが僕を入れて3人、ドラム1人っていう変な編成になってしまって。そうこうしてるうちに3人のギターのうちの1人が急激にうまくなって、もう1人がベースに回ることになり……。「じゃあ、お前歌えよ」みたいな感じで僕がボーカルになったんです。

──あははは(笑)。それはいつ?

中2ですね。最初はコピーバンドとして活動を始めて、布袋さん、BOOWY、ユニコーンとかをコピーしてました。今の僕の音楽スタイルとはぜんぜん違うんですけどね(笑)。

──ピアノ弾き語りスタイルですからね。ピアノは小さい頃から習ってたんですか?

はい。3歳から習い始めて、小さいときからなんとなく作曲とおぼしきこともしていました。で、中学くらいからはカセットデッキを近くに置いてピアノを弾きながら録音もしてましたね。

──じゃあ、初めて作曲に使った楽器は憧れのギターではなくてピアノだったんですね。

そうですね。そもそもギターが欲しくて親に頼んだんですけど、父親には“エレキギター=不良”みたいなイメージがあったらしくて 「男は黙ってフォークやろ!」ってフォークギターを買い与えられ(笑)。バンドでボーカルに回されたことも理由の1つではあるんですけど、その時点で「これじゃあなんか布袋っぽくない」ってことでギタリストになるのはちょっと諦めてましたから。そこからはもうピアノ一本です。

高校3年間、毎日曲を書き続けた

──高校卒業後は音楽大学に行かれたそうですが、中学でロックにハマってもピアノへの興味はなくならなかったんですか?

ピアノはずっと好きでしたね。最初はずっとクラシックを習ってたんですけど、そのロックにハマった中学くらいからは「別にプロになるわけじゃなし」って思って、好きな曲を弾いていたし。そして、そうやってて基礎的な練習をやめて好きな曲だけやっていたら今度は「いずれは音楽の仕事をやっていこう」って気持ちが芽生えてきて。高1のときにその決意を固めてからは、逆にまた基礎練習からやるようになってましたから。

──なるほど。

中3まではプロ野球選手を夢見てたんですけど、高校に入ってからはスパッと切り替えて。音大を目指してずっと弾いてました。しかも演奏者として食べていくのではなく曲を作りたいっていう願望のほうが強かったから、高校時代は1日1曲書くっていうのを3年間続けてたんです。

Rails-Tereo

──それはすごい! でも毎日って大変じゃないですか?

いやもう単純に楽しかったです。無理やり自分に課してたわけじゃなくて、作曲が好きだから、作曲家になりたいからやってたことですから。3年間で1000曲くらいは作りましたね。今聴くと恥ずかしくて使えないものばかりですけど(笑)、あのときが一番曲を作ってたなあっていう感じはあります。

──音大卒業後はどんな進路に?

当然すぐに作曲家になれるわけもなく(笑)、地元のタワーレコードで3年間アルバイトをしてました。そのときは朝から晩まで音楽をむさぼるように聴いていて。それまではわりと自分も音楽知ってるほうやと思ってたんですけど、ほかのスタッフさんを見て「ぜんぜんまだまだやった」って衝撃を受けたんです。ああいう職場へ行くと、信じられないくらいの音楽のスーパーマニアがいっぱいいるんで(笑)。そういう方々に勧めてもらうものを毎日のように聴いては吸収してましたね。

2本のレールで、どこまでも続く音楽の旅

──タワーレコードでアルバイトしながら、現在のようなソロ活動も続けていたんですか?

はい。ちょこちょこライブもやってました。今はサポートメンバーに付いてもらってますが、当時は打ち込みの音を流したりしながら。

──デビューのきっかけは、その頃つかんだんですか?

いや、一度メジャーデビューのチャンスをつかみかけたんですが、ちょっといろいろな折り合いがつかなくなって……。そのうちタワーレコードも辞めちゃったんで、次はCMの制作会社に就職してました。そこでは某ラジオ局のCM制作の関連部署に出向して、ラジオCMを作ったり、裏方のノウハウもいろいろ教えていただいて。そんなときに、ひょんなことから僕がそのラジオ局主催のイベントに出ることになったんです。

──え! それはなぜですか?

社内の人に「こんなことやってるんです」って曲を聴いてもらったら「じゃあ出たら?」ってあっさり(笑)。ちょっとそれはビックリしましたね。で、そのときに「関係者が本名で出るのはちょっと……」ってことになって、Rails-Tereoという名前を付けたんです。

──だから1人なのにユニット名が付いたんですね。ちなみにRails-Tereoの由来は?

「“ステレオ”、つまり2本の“レール”で、どこまでも続く音楽の旅をする」っていう意味を込めてます。「-」の位置は、わざと「s」と「T」の間に付けて読みにくくしてるんですが、そこに何か引っかかってくれるといいなって(笑)。たまに「テレオ」を「テルオ」と間違えて、下の名前やと勘違いしてる人がいるんですけど、そうではありませんのでよろしくお願いします!(笑)

※文中「BOOWY」の2つ目のOは/付き。

ニューアルバム「Piano Pop Life」 / 2013年4月3日iTunes配信開始
iTunes Store
パッケージ版 [CD] 2013年4月24日発売 / 2000円 / Music Wonder / SSCX-10491
Amazon.co.jp
新星堂ONLINE
収録曲
  1. 走り出す(関西テレビ「ハピくるっ!」4~6月エンディングテーマ)
  2. Walkin'
  3. 冷たい雨
  4. Dancin' in the darkness
  5. Say Hello Say Goodbye
  6. Precious
  7. Listen to myself ~心の扉~
  8. Singin' about you
  9. 春色模様
  10. 走り出す -GIRA MUNDO MIX-
Rails-Tereo(れいるすてれお)

プロフィール画像

大阪・枚方市出身のモリカワヒロシ(Vo / Key)によるソロユニット。野球少年だった中学生当時、布袋寅泰に影響を受け音楽活動を始める。音楽大学卒業後、地元大阪を中心にライブ活動し、2006年、Rails-Tereo名義で会場限定ミニアルバムをリリース。多方面からの注目を集め、収録曲「db -デシベル-」が「Z会」の企業CM曲に抜擢される。2012年3月には1stフルアルバム「Pop Sings Pop Things」を全国リリースし「Innocent Child」が自転車専門店「AEON BIKE」のCM曲に選ばれるなど、インディーズながら1アルバム中5曲のタイアップを獲得する。その後自身最長、全国40カ所でのリリースツアーを経て、2013年4月、2ndフルアルバム「Piano Pop Life」を完成させた。