ナタリー PowerPush - Rails-Tereo
どこまでもポジティブなピアノマン 人々のポップな日々を高らかに歌う
CM映えしやすい曲
──プロフィールによると、そのラジオ局のイベントには以後3年連続で出場して、最後の年に発売した会場限定のミニアルバムが大きな話題となったとあります。
おかげさまで、アルバムの中の1曲「db -デシベル-」がZ会のCM曲に起用されたりしまして。そこから今回のアルバムをリリースさせていただく音楽出版社ともやりとりが始まったって感じなんです。もともとメジャーなフィールドに出ていきたいっていう意識はそんなになかったんですけど、それでもCMに起用されたことで自分の曲を少しでも多くの方に聴いてもらえるチャンスができたのはうれしかったですね。
──「db -デシベル-」は、やっぱり反響がすごかったんですか?
はい、ありがたいことに。CMで流れるたびにTwitterで「今の誰?」って知らない人がつぶやいてたり、やっぱりテレビってすごいなって(笑)。
──ほかの楽曲も多くのCMソングに使われていますよね。1stフルアルバム「Pop Sings Pop Things」は、インディーズながら5曲にCMタイアップが付いてますし。ご自身では、自分の曲がCMに使われる理由はなんだと思いますか?
それがわからなくて、一度CMの制作会社さんに「決め手ってなんやったんですか?」って聞いたことがあるんですよ。そしたら「いやあ、クセがないから」って(笑)。「どういうことなんですか?」って聞いたら「歌詞が前向きで明るく元気が出る曲っていうのはCMイメージに合わせやすいから」「ネガティブな曲は単純に合わせづらいんだよ」と。そういう意味で僕の曲はCM映えしやすいんだそうです。それを聞いて「あー、そうなんかあ」って思いましたね。
小学生でもわかるシンプルさを追求
──今回の2ndフルアルバム「Piano Pop Life」ですが、これはいつ頃制作された作品なんですか?
収録曲はほとんど去年作ったものです。ストックもけっこうあるんですけど、それはあまり出してないです。
──それはなぜ?
やっぱりリアルタイムで今を切り取りたいというか、常に新しいものがいいものであるっていう状況でいたいので。ストックしている曲を発表するのは本当に作曲に行き詰まったとき、困ったときでいいかなあと思ってます。
──タイトルには、どういう意味があるんですか?
“Piano”は自分が一番得意で好きな楽器、“Pop”はRails-Tereoのテーマ、“Life”は今回のアルバムができてみると“命”や“人生”、“生活”っていうものが根底に流れてる曲が多いなって。無意識だったんですけど、1枚にまとめたときにそれに気付いたんです。
──“Pop”というフレーズは過去のアルバムタイトルにも使われていますが「やっぱり自身の根源だな」って感じはあります?
そうですね。“Pop”って言葉の定義は難しいんですけど、僕の中では常に生活の中にあるもの。うれしいとき、楽しいときに鼻歌で歌えるような、シンプルなものっていう位置付けなんです。
──リードトラックの「走り出す」は、どんな経緯で生まれた楽曲ですか?
これ、言うとけっこうビックリされるんですけど、もともとはサッカーの長友(佑都)選手をイメージしたんです。その選手がピッチに入ることによって試合の風というか、流れが変わるっていう感じで。普段はあまりテーマを設けて書かないんですけど、そのときはなんとなくそういう光景が降りてきたんです。
──歌詞はすごくシンプルでストレート。しかも、一度聴いたらすっと頭に入ってきますよね。
今回は特に小学生でもわかるようなシンプルさを追求して作っていて。やっぱり、そういう言葉が最も伝わるんじゃないかって思うんですよね。言葉やメロディを難しくするのって実は簡単なんだけど、逆にシンプルに削いでいったほうが伝わるんだろうなって。
僕のライブは“巻き込み型”
──先ほどメジャーなフィールドで活動することに特別な意識はないとおっしゃていましたが、今回のように全国流通のCDを出すにあたっても、特に心境に違いはありませんか?
そうですね。どんな場であっても基本的には前向きな曲を書くのが得意なので、聴いてくださった方に「元気が出る」って言ってもらえることが何よりうれしいです。
──ちなみに、悲しい曲や切ない曲は?
あんまり書けないです。そもそも僕、そこまで落ち込むことがないんですよね。落ち込んでもすぐ立ち直っちゃうし、個人的には「そういう悲しい気持ち、切ない気持ちをあえて曲にして聴いてもらうのってどうなんだろう?」って思っているので。今後、そういうアプローチがアリになるときがくるのかもしれないですけど、今はちょっと違うのかなって。
──アーティストの中は、苦しみや悲しみがないと曲が生まれないという方もいますが。
同じ出来事や状況の中でも、ある人がつらいと思うことを僕が同じように感じるかどうかは違うと思うんですよね。僕はたぶんそこまで感じるほうではないのかな? 少なくとも今はそういう状況ではないんです。
──先日ライブを拝見しましたが、ステージでは常にニコニコしてらっしゃいますよね。観ているこちらまで思わず笑顔になる。
ありがとうございます。ライブはとにかく楽しむってことを大事にしていて、そのためには自分がまず楽しくないと絶対観てる方には伝わらないと思ってて。自分がまず一番に楽しんで、それを観てもらうっていうのを大事にしています。で、そこにお客さんをどんどん巻き込んでいけたらなって。だから僕のライブは“巻き込む”って表現が合ってるのかな。
──最後にアーティストとしての今後の目標は?
ライブの会場でいえば、最終目標は大阪城ホールです。今、すぐそばに住んでるんで、毎日イメトレだけはしてます(笑)。東京だと、やっぱり日本武道館ではやりたいですね。
──Rails-Tereoさんのポジティブなアッパーチューンを聴いていると、無条件に楽しくなって、頭がシンプルになって、心がスカッとするんです。今、日本がこういう状況だからこそそういう音楽の力が伝播していくといいですよね。
そうなると本当にうれしいですね。僕自身、長いこと音楽活動をやってきて、なかなか結果が出ずに迷ったときもあったんですけど、それでも本当にいいもの、本当に自分が信じられる作品を作り続けていけば結果もおのずとついてくるのかな、とは思っていて。だからその思いだけはブレずに、これからもやっていきたいと思ってます。
- ニューアルバム「Piano Pop Life」 / 2013年4月3日iTunes配信開始
- iTunes Store
- パッケージ版 [CD] 2013年4月24日発売 / 2000円 / Music Wonder / SSCX-10491
- Amazon.co.jp
- 新星堂ONLINE
収録曲
- 走り出す(関西テレビ「ハピくるっ!」4~6月エンディングテーマ)
- Walkin'
- 冷たい雨
- Dancin' in the darkness
- Say Hello Say Goodbye
- Precious
- Listen to myself ~心の扉~
- Singin' about you
- 春色模様
- 走り出す -GIRA MUNDO MIX-
Rails-Tereo(れいるすてれお)
大阪・枚方市出身のモリカワヒロシ(Vo / Key)によるソロユニット。野球少年だった中学生当時、布袋寅泰に影響を受け音楽活動を始める。音楽大学卒業後、地元大阪を中心にライブ活動し、2006年、Rails-Tereo名義で会場限定ミニアルバムをリリース。多方面からの注目を集め、収録曲「db -デシベル-」が「Z会」の企業CM曲に抜擢される。2012年3月には1stフルアルバム「Pop Sings Pop Things」を全国リリースし「Innocent Child」が自転車専門店「AEON BIKE」のCM曲に選ばれるなど、インディーズながら1アルバム中5曲のタイアップを獲得する。その後自身最長、全国40カ所でのリリースツアーを経て、2013年4月、2ndフルアルバム「Piano Pop Life」を完成させた。