くるりが主催する野外イベント「京都音楽博覧会2017 IN 梅小路公園」が9月23日に京都・梅小路公園芝生広場で開催される。
「京都音博」の愛称で親しまれるこのイベントは、2016年に初回実施から10年を迎えた。11度目の開催となる今回はこれまでと趣向が変わり、ハウスバンドならびに京都市立芸術大学卒のメンバーを中心に構成された“京都音博フィルハーモニー管弦楽団”の生演奏に乗せて、くるりを含む9組のアーティストがパフォーマンスをするという“生歌謡ショー”形式に。岸田繫(Vo, G)はイベントのオフィシャルサイトで「今年の京都音博はひと味ふた味違います」とコメントしている。
音博開催を前に、音楽ナタリーではくるりの3人にインタビューを実施。11回目にして“未開の領域”へと足を踏み入れた理由やバンド活動の中での音博の位置付けなどについて、話を聞いた。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 草場雄介
ミスチルの前やったら暴動起こってた
──去年がちょうど10回目の音博だったわけですが、去年の音博を振り返ってみて、あの日はどんな1日だったという印象ですか?(参照:くるり、再会誓った雨の「京都音博」矢野顕子やミスチルが10周年祝福)
佐藤征史(B) 正直「音博」の1日って、朝早くから会場にいてなんやかんやとやっているんであんまり覚えてないんですよ(笑)。
──そうなんですね。
佐藤 あ、でもテテが。テテさんが、イベントをエラい気に入ってくれはって。彼フランスのテレビ局かなんかで番組を持ってて、ライブのあともその撮影をしたりしてましたね。
──なるほど。岸田さんも同じような感覚ですか?
岸田繫(Vo, G) そうですね、記憶にございません(笑)。盆と正月が一緒に来たような感じなんで、本当に慌ただしいんですよね。去年は途中で中止になりましたから、短い話し合いをして、それをお客さんに伝えたことぐらいしか覚えてない。
──雨が強まって、最後のQURULI featuring Flip Philipp and Ambassade Orchesterのアクトの前に中止になってしまったというのが。
岸田 ホンマにね。でもMr.Childrenのあとでよかったですね。
佐藤 あはははは(笑)。
岸田 ミスチルの前やったらたぶん暴動起こってたと思います。「金返せ」ってことになってたと思うんでね。
佐藤 「会場の数km先に雷が落ちた」っていう連絡が来たんですよ。「それは、もうダメだ」っていうことで。
岸田 雨だけやったらなんとかできたかもしれないんですけど、雷は行政の指導も入るので。仕方がなかったです。
──ちなみに、ファンファンさんはそのときは?
ファンファン(Tp) 私、去年は初めてお客さんとして行きまして。ほとんど客席にいたんですけど、お客さんが天気に負けずにすごい楽しんでおられたので、皆さんの強い心を見た感じがしました。自分としては普段見れないものがいろいろ見れてよかったなと思います。
岸田 現役のバンドメンバーがそのバンドのライブを観ることなんてなかなかないからね。デタラメやで、俺ら(笑)。
一同 あはははは(笑)。
──最初のくるりのアクトはいかがでしたか?
ファンファン あっ、もうすごい……。
岸田 デタラメでした?
ファンファン いや、よかったですよ(笑)。よかったです。
──やっぱり客席で見るのと舞台裏から見るのとは違いますよね。
ファンファン 全然違います。音もそうですし。貴重な時間でした。
岸田 俺も2年ぐらい休業して観てみようかな。
佐藤 ボーカルはその状況はないやろ(笑)。
岸田 いや、あるんちゃう? 探してみたら。「人間活動のためにちょっと辞めます」みたいな(笑)。
佐藤 ああ、総合演出として退かれる感じとかね。
岸田 そうそう。
音博という“場”
岸田 まあちょっと話それましたけど、ロックバンドの主催するフェスって、そのバンドの演奏を楽しみに来るお客さんがいれば、あるいは場を楽しんだりとにかくいろんなアーティストの音楽を楽しむっていうお客さんだったり、いろんなタイプのお客さんがいると思うんです。で、音博のお客さんは“場”を楽しむお客さんの最たるもので、たぶんくるりが出なくても来るんですよね。「音博が好きやから」って言って来てくれるでしょう。そういう“場”を10年かけて育てた実感っていうのは、すごくありますね。
──はい。
岸田 今年ひさしぶりに「FUJI ROCK FESTIVAL」に出たんですけど、僕は腰痛持ちだから人のライブを観に行って2時間立ったままとか無理なんですよ。だから「なんでこんな大雨の中……音もめちゃくちゃいいわけじゃないし邦楽ばっかりなのに、お客さんは何が楽しくて来てんのかな?」とも思ってたんですけど、会場入って雰囲気に飲まれた瞬間、この“場が楽しい”っていうことを実感したんですよ、改めて。で、音博もそういう場になってると思うから、別に俺が歌わなくてもいい……。
ファンファン いやいや(笑)。
岸田 でも今年の音博のコンセプトはちょっとそれに近くてですね。もちろんくるりもやるんですけど「その場に人が集まって何をやるか」っていうことをもうちょっと大事にしていこう、っていう。どんどんルールを取っ払って、総合的に……さっき総合演出って佐藤さんおっしゃいましたけれども、アーティストにただ出てもらうのではなくて「その人たちの音楽も作ってしまおう」という試みを今回初めてやろうと思っていて。で、くるりはトリをやらないんですよ、今年。
──あっ、そうなんですか?
岸田 はい。早めの時間にやって、そのあとは裏方に徹します。
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最初の年の打ち上げみたいなやつをやりたい
- 京都音楽博覧会2017 IN 梅小路公園
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2017年9月23日(土・祝)京都府 梅小路公園芝生広場
OPEN 10:30 / START 12:00 -
- 出演者 くるり / アレシャンドリ・アンドレス&ハファエル・マルチニ / UA / Gotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION) / 田島貴男(ORIGINAL LOVE) / ディラ・ボン / トミ・レブレロ / 二階堂和美 / 布施明 / 京都音博フィルハーモニー管弦楽団
- くるり「くるくる横丁」
- 2017年9月20日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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[Blu-ray Disc]
6480円 / VIZL-1248 -
[DVD2枚組]
5940円 / VIZL-1249
- 収録内容
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- ワンダーフォーゲル
- トレイン・ロック・フェスティバル
- 魔法のじゅうたん
- 愉快なピーナッツ
- BIRTHDAY
- Bus To Finsbury
- Morning Paper
- Tonight is the night
- 琥珀色の街、上海蟹の朝
- ふたつの世界
- 京都の大学生
- 帰り道
- Long Tall Sally
- Superstar
- ロックンロール
- Ring Ring Ring!
- HOW TO GO
- 街
- 虹
- The Veranda
- 遥かなるリスボン
- 春風
- 夜行列車と烏瓜
- ワールズエンド・スーパーノヴァ
- Liberty&Gravity
- 特典映像
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「くるりの20 回転ワープ」from SPACE SHOWER TV
─公開練習─
- 尼崎の魚
- Jam Session
- 虹
- 7月の夜
- 夜行列車と烏瓜
- モノノケ姫
- ばらの花
- GO BACK TO CHINA(イントロ)
- ARMY
- 東京
- くるり
- 1996年に立命館大学の音楽サークル「ロック・コミューン」内で岸田繁(Vo, G)、佐藤征史(B, Vo)、森信行(Dr)により結成。その後メンバーチェンジを経て、2011年からは岸田、佐藤、ファンファン(Tp, Key, Vo)の3人編成で活動している。1998年10月にシングル「東京」でメジャーデビューを果たして以降、2016年7月にシングル「琥珀色の街、上海蟹の朝」をリリースするまで11枚のアルバムと34枚のシングルを発表した。同年9月には、結成20周年を記念したオールタイムベスト「くるりの20回転」をリリースする。なお2007年9月に主催イベント「京都音楽博覧会」をスタートさせたり、「ジョゼと虎と魚たち」「奇跡」といった映画作品の音楽を担当したりと、その活動は多岐にわたる。2017年5月には、岸田による交響曲「交響曲第一番」の初演の模様を収めたCD「岸田繫『交響曲第一番』初演」が発表となった。9月には全国ツアー「チミの名は。」の模様を収めたBlu-ray / DVD「くるくる横丁」がリリースされる。