もっとすごいところに連れていってほしい、それがバンドを続けている意味

──孤高っていうイメージもありますからね、Plastic Treeは。どのシーンにも入ってないっていうか……。

有村　入りたいんですけどね（笑）。

長谷川　コウモリみたいなもんですね。動物なのか、鳥なのかっていう。特にどこにも入りたくないって思ってるわけじゃないんだけど。

有村　考えたことがないからね、そういうことは。ヴィジュアル系とか言われると、ちょっとうれしいですけどね。「え、入れてもらえるんですか？」って（笑）。

──ヴィジュアル系と思ってる人もいるかもしれないし、一方では「シューゲイザー・ディスク・ガイド」に作品が載ってたり。まあ、シューゲイザーバンドかって言えば、そうじゃないわけですが。

有村　そういう曲もある、ってことですよね。そこはね、日本人的なバンドだなって思ってるんですよ。音楽バカが集まって、「こういうの、いいね」とか「あれもやってみたい」って言ってる。

──さまざまな要素を自分たちのスタイルに取り入れていく、と。

有村　それもあるし、ガキの頃に聴いて「すげえ！」って思った音楽が胸にずっと残っていて、「あれ以上のものを作ってみたい」っていうモチベーションも持ち続けてるという。ライブに関しては、化粧して、世界観を作り込んだ演劇的な要素もあって。「こういうものを作りたい、表現したい」っていうものがなんとなくあって、それをずっと追求してる感じなのかな。

──まだ理想には到達してない？

有村　到達してるところもあるんですけど、でも、もっとかな。ライブに関して言えば、非現実感が好きなんですよね。音楽っていう媒介を使ってリアルなことも伝えてるんだけど、非現実感もあるっていう。そういうことができているっていう自負もあるんだけど、でも、「もっともっとすごいところに連れていきたい、連れていってほしい」って感じることもあって。それがバンドを続けている意味かもしれないですよね。

長谷川　そういうことをメンバー同士で改めて話すことはないし、それぞれに解釈があるんだろうけど、根本の部分はみんな同じですね。

──しかも、ポップな要素もしっかりあって。

有村　うん、ポップ大好き。童謡くらいポップなものがいいですね。

──わかりやすさも大事？

有村　わかりやすさっていうと語弊があるかもしれないし、ポップの解釈もいろいろあると思うんですけど。俺の中では、ポップって普遍性にも近くて。

長谷川　黄金比みたいなものがあるよね。

有村　その人にしか出せないポップ感っていうのもあると思うんですよ。そのバンドにしかないメロディセンスだったり、「お約束のフレーズだけど、気持ちいい」っていう感じだったり。それは欲しいなって思いますね。持ってるかな、とも思うし。

ずっと残っていく作品を作りたいって思った

──特に今回のアルバムには、Plastic Tree独自の感性が強く反映されていると思います。「アンモナイト」というタイトルについても訊いていいですか？

有村　いろんな意味が含まれていて、自分の中でピンと来たのが「アンモナイト」だったんですけどね。あの、「今回のアルバムのイメージってなんだろう？」みたいな漠然とした話をしているときに、（長谷川）正が「夜っぽい曲が多そうだよね」って言って。

──「ナイト」だ（笑）。

長谷川　（笑）。

有村　単純に韻を踏んだってこともあるんだけど、（アンモナイトは）前から気になってた言葉なんですよね。自分の家にもアンモナイトの化石があるんですけど。「これがホントに生き物だったの？」っていう不思議さもあるし。俺の中ではすごくキレイなものなんですよね。あと、あの模様がレコードとかCDみたいな回るものにも似てるし、脳の一部にも見えるし、ホントによくできたカタチだなって。でも、一番デカイのは「ずっと残っていくもの」ってことですよね。タイトルを考えたのは病気になる前だったんですけど、それ以前にもいろんなことがあって、バンドを続けることを決めたので……。ずっと残っていく作品を作りたいって思ったんですよね。

──「さびしんぼう」の歌詞のテーマにもつながりますね。

有村　あ、そうですね。アンモナイトっていう語感も好きだし。別に考古学マニアではないんですけど（笑）。（長谷川に向かって）でも、発掘とかしてたんでしょ？

長谷川　発掘のバイトね。確か大学で募集してたんだと思うんだけど、麦わら帽子をかぶって、スコップで土を掘るんですよ。何か出てきたら教授みたいな人のところに持っていって、「お、これはナントカだね！」っていう（笑）。地味なバイトでした。

──（笑）。最後にアルバムを伴ったツアー「Plastic Tree ライブハウスツアー2011『アンモナイト（小）』」について聞かせてください。

長谷川　昨日（3月14日）から始まるはずだったんですけど、（東日本大震災の影響で）中止になったんですよね。まだしばらくは、状況を見ていくことになると思います。

有村　日々、状況が変わりますからね。

長谷川　可能な限り、やりたいとは思ってるんですが。

──この先、音楽の力がホントに……。

有村　うん、それはホントに思いますね。今すぐに音楽が助けになるわけではないですけど、ほかのバンド、アーティスト、関係者も含めて、やれることが絶対にあると思うので。被災地の中には毎年行ってた場所もあるし。まずはできる範囲のことをやっていこうと思ってます。