ナタリー PowerPush - ピロカルピン

手が届きそうで届かない 「蜃気楼」を探す旅の始まり

インディーズシーンで高い注目を集めていた4人組ギターロックバンド・ピロカルピンが、ニューアルバム「蜃気楼」で待望のメジャーデビュー。本作は人それぞれが胸に抱く“理想郷”をコンセプトに作られた1枚で、これまでのノスタルジックかつ幻想的なロックサウンドはそのままに、未来への希望を捉えた美しい歌詞とボーカル松木智恵子の強い決意をにじませるイノセントな歌声が印象的な仕上がりとなっている。

ナタリー3回目の登場となる今回は、初のメンバー全員インタビューを敢行。楽曲の制作秘話や、メジャーデビューへの率直な想いを訊いた。

取材・文 / 川倉由起子

 
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地域の小学校から中学校へ上がった感じ

──まずは、メジャー進出に対する気持ちから聞かせてもらえますか?

松木智恵子(Vo, G) やっぱり今まで手が届きそうで届かないものという感覚があったので、決まったときはすごくうれしかったです。一種の達成感みたいなものもありましたし。

──決して浮ついた感じではないんだけど、やっぱりうれしいという気持ちが大きいんですね。

PV場面写真

松木 はい。本質的な部分を変えるつもりはないんですが、「関わる人たちが増える」というのはメジャーに行きたかった理由のひとつでもあるので、そこはまず実現できたのかなと思います。ただメジャーデビューがゴールではなく、ここからがスタートだなと。今はこれからどれだけ広がっていけるのかっていう期待とプレッシャーが両方渦巻いてる感じですね。

──ちなみに今回所属することになったレコード会社は、皆さんが以前から好きなアーティストして挙げるスピッツと同じユニバーサルJですね。

松木 その事実だけとってみると、本当に信じられない気持ちです。昔の自分に教えてあげたいくらいです。「未来にはすごいことが待ってるよ」って(笑)。ただ、ピロカルピンはピロカルピンなので……。

岡田慎二郎(G) そうですね。ファンとしてはうれしいけど、僕らは僕らでこれから進んで行くべき道がありますし。メンバー全員、テンションは上がったけど「それはそれ」っていう気持ちだと思います。あと僕のメジャーデビューに対する気持ちですけど、正直まだあまり実感がなくて。例えるなら地域の小学校から中学校に上がったって感じ。友達は一緒だけど周りの状況は少し変わってるみたいな、そんな雰囲気だなと。

──ああ、わかりやすいですね。

岡田 でも今回のメジャー第1弾アルバムの告知をしたり、PVを先行公開したりすると、やっぱり反応が今までと少し違うなと感じます。前々から応援してくれてる人が「進学おめでとう」みたいな感じで「メジャーデビューおめでとう」って喜んでくれている雰囲気があって。最初にライブで発表したときも、事前に「どんな反応が来るかな」って話してたんですけど、想像以上に会場が盛り上がってくれて。あの「ウオー!」っていう歓声にすごくゾクゾクしたし、感極まる感じがありましたね。

スズキヒサシ(B) ライブでの皆さんの反応を見て、やっと少しだけ実感が湧いたというか。

岡田 そうそう。でもそれだけ期待されてるんだってことで、同時に身が引き締まる思いもありましたね。

守りに入るよりは、変えていこう

──では早速ニューアルバム「蜃気楼」についてですが、初のメジャー作品ということで何か制作面での違いはありましたか?

松木 「届ける層を広くするんだ」っていう気持ちが自然と湧いてきましたね。でも、選曲やアレンジ面で守りに入るんじゃなくて、変えていこう、いろいろ試してみようという感じでした。だから、本質的な部分はほとんど変わりません。

PV場面写真

岡田 正直インディーズの頃は「届く人に最低限届けばいい」という気持ちがどこかにあったんです。でもそれがメジャーになって、今まで届かなかった人にも届いてほしいっていう気持ちが自然と出てきて。今まで届いてた人にも当然届けたいし、届かなかった人にもいかに届けるかってことを考えていった感じです。

──確かにアルバムを聴くとそれがよくわかるんですが、音的にも歌詞的にもすごく広がりを感じるというか。いい意味でメジャー感のある作品だなと思いました。とはいえ、これまでのピロカルピンらしさみたいなものも変わってないし、とてもいいバランスですよね。

岡田 ありがとうございます。基本的にガラッと変えようとかじゃなく、元々のバンドの良さをいかに伸ばすかっていうことを考えました。今回契約したレコード会社にもそのへんはよく理解していただいているので、関わる人の数は増えても、そういったブレはなかったですね。

──メジャーデビューしたら急に路線変更するバンドもたまにいますけど、それは全くなかったですね。

岡田 僕らがメジャー進出を発表したときも、そういう心配をする声がちらほらあったんです。でも、それを払拭できるアルバムになったかなと思いますね。

ニューアルバム「蜃気楼」2012年5月16日発売 2100円(税込)ユニバーサルJ UPCH-1876

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CD収録曲
  1. メトロ
  2. 未知への憧憬
  3. 暗夜航路
  4. よだか
  5. タイムパラドックス
  6. 祈りの花
  7. 不透明な結末
ピロカルピン(ぴろかるぴん)

ピロカルピン

松木智恵子(Vo, G)、岡田慎二郎(G)、スズキヒサシ(B)、荒内塁(Dr)からなる4人組ギターロックバンド。2003年に松木と岡田が出会い、バンドの原型が誕生。2009年7月にタワーレコード限定シングル「人間進化論」とHMV限定シングル「京都」を同時発売しデビューした。
2010年11月から2カ月連続でシングル「存在証明」「終焉間際のシンポジウム」を発表し、繊細な世界観とダイナミックなサウンドで話題を集める。2011年3月、3rdアルバム「宇宙のみなしご」をリリース。このアルバムのタイトルは森絵都の同名小説にちなんだもので、森の快諾により名付けられた。
2011年5月にはドラムが荒内にメンバーチェンジ。7月3日に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブ「幻聴シンポジウム vol.1」を行い、成功を収めた。11月には初の3曲入りシングル「青い月」を発売。そして、12月に行われたワンマンライブにてユニバーサルJへの移籍を発表した。2012年5月にメジャーデビュー作となるアルバム「蜃気楼」をリリース。