ナタリー PowerPush - OKAMOTO'S
テーマは“愛”!! 4thアルバム「OKAMOTO'S」
セルフタイトルを冠したOKAMOTO'Sの4thアルバム「OKAMOTO'S」が完成した。2010年5月のメジャー進出から間断なく3枚のアルバムをリリースし、ひたすらまっすぐ駆け抜けてきた彼らが、ふと立ち止まったときに覚えた葛藤。それを乗り越えて完成させたのが本作である。この文句なしの最高傑作が生まれた理由をメンバー全員に訊いた。
取材・文 / 三宅正一
とにかくいい曲を書くしかない
──ニューアルバム「OKAMOTO'S」、セルフタイトルを冠するにふさわしい最高傑作だと思います。しかも偶発的に最高傑作になったのではなくて、意識的に最高傑作にしようとして生まれたアルバムだと思うんですよね。バンドのあり方や曲作りのアプローチを見直すことで、OKAMOTO'Sの本質を再確認できたはずで。
オカモトショウ(Vo) うん、そうですね。めっちゃいいアルバムができました。2012年はとにかくいい曲をたくさん書くという目標をもって走り続けた1年だったんですね。2010年5月にメジャー進出してから、1年半弱で初期3部作として「10'S」「オカモトズに夢中」「欲望」という3枚のアルバムをリリースして。あの3枚も自信を持ってリリースしたんですけど、3部作を終えて立ち止まったときに「あれ? 俺たちこんなもん?」って。
──それはリスナーへの届き方という意味で?
ショウ そこですね。結局メンバーみんな若くて、楽器もわりとうまくて、楽しそうなバンド……みたいなイメージしか広がってないなというのが正直なところで。もちろんライブに来てくれる人にはバンドの本質的な魅力は伝わっていると思うし、こうやって取材してくれるインタビュアーの方たちにも感じてもらえているとは思うんですけど。それ以上の広がりがないというか。
──世間にアプローチできていないもどかしさがあった。
ショウ そうですね。じゃあもっと自分たちの音楽を広く伝えたいと思ったときに、それはもう曲で伝えるしかないと思ったから。とにかくいい曲を書くしかないなって。
──今作は作詞作曲クレジットにショウくんの名前が数多く記されているけど、そういう思いで曲作りに臨んでいたんですね。
ショウ フロントマンとしても、ここでやらないとダメだと思ったから。かなり気合を入れて曲作りに励みましたね。2012年をこのアルバムにじっくり費やせたのがホントに大きかったです。
──コウキくんはどうですか?
オカモトコウキ(G) さっき言ってもらった通り、今までの3枚のアルバムとは作り方から違っていて。今までは衝動的なものを優先して、そのときどきでパッと曲を作って、パッと録ったものを集めてアルバムにしていたんです。でも今作は最初からこういうテーマで、こういう曲の流れがあって、って全体像を決めてからレコーディングに取りかかったので、そこが大きいですよね。あとは、今までの僕らはミュージシャンというよりも、リスナーとしての側面が前に出ていたと思うんですよ。
──ああ、なるほどね。さまざまな音楽をディグってる感じというか。それは冷静な自己分析だと思う。
オカモトレイジ(Dr) ディガーとしての面がね(笑)。でも、ホントにそうだと思う。
コウキ 僕らと同じくらいの熱量で音楽を聴いている人には伝わりやすいんだけど、そこで止まっちゃう感じもあったと思う。だから、もっとミュージシャンとして何を表現したいかを伝えないといつまでも状況は変わらないと思ったし、今作はそれを表現できたアルバムだと思います。
「アルバムのテーマは“愛”でいきたいんだよね」
──ハマくんはどうですか?
ハマ・オカモト(B) 僕らは一般的なバンドの歩み方……って言ったら変ですけど、何年もインディーズで活動してからメジャー進出するみたいな流れを踏んでこなかったので。ありがたいことに10代でいきなりメジャーからリリースすることになって。何もかもが初体験の状態のまま1年半弱でアルバムを3枚も作って、さらにツアーも回りながら、いろんなノウハウを知ることができたんですよね。そういう時間を経て、自分たちが出したい音を出す方法もわかるし、描きたいテーマを突き詰めることもできる、バンドとして確実に成長した状態でこのアルバムの制作に向かうことができた2012年だった。「ここはこういうコーラスを入れよう」「ここはピアノを入れよう」って録る前から話し合うことができたんです。過去を否定するつもりは全くないんですけど、最初に出した3枚のアルバムを制作したときの記憶ってすぐになくなっていたんですけど、今回は細かいところまで全部覚えているんですよ。
──それだけ過去3枚はどこまでも衝動的で刹那的なアルバムだったんだよね。もちろんそれ特有の素晴らしさもあったんだけど、今作はその季節を経て何を示せるかが鍵だった。
ハマ そう思います。
ショウ 22歳になって、大人になったって感じですかね。感覚的にはこれがメジャー1stアルバムに近いんですよ。
レイジ 「OKAMOTO'S」というタイトルも曲が揃ったときに今のバンドの状態を見て、俺がセルフタイトルにしようと言ったんですけど。それくらい改めてメンバー4人がガチッと結束したタイミングだったし。俺たちは中1から仲良くなって、同じ部活に入って、バンドを始めたんです。その状態が続いたまま高校を卒業して、事務所やレコード会社と契約して、今に至っていて。そう考えるともう10年くらいほとんど毎日会っているんですよね(笑)。
ショウ そうだよね(笑)。
レイジ ただ、最近はバンドのことが終わったらすぐ解散するみたいな感じになっていて。休みの日は連絡を取ることもあまりないし。どうせまた明日会うからいいやって(笑)。そんな中、本格的にこのアルバムの制作に入る前にショウがメンバーを呼び出したんですよ。下北沢に(笑)。そこでショウから言われたことが「次のアルバムのテーマは“愛”でいきたいんだよね」ということで。
──それを伝えるために呼び出したんだ。
ショウ そうっすね(笑)。
レイジ 何年ぶりかくらいに呼び出されて、マネージャーもいない状態でそんなことを言われたときに、正直最初はどう反応していいかわからなくて。
──照れくささもあったし?
レイジ そう。なんか「あ、ああ、うん」みたいな(笑)。
──それはいつ頃?
レイジ いつだったっけ? ちょっと待ってくださいね……(携帯を取り出してショウからのメールを確認)。あ、5月30日っすね。
ショウ 「マジメになったら涙が出るぜ」を録り終わったあとだね。
レイジ あと、その呼び出された流れがあったからかわからないんだけど、レコーディング合宿中に「レコーディング超楽しいね!」みたいな感じになって、スタッフが寝たあとにメンバー4人だけで朝の5時くらいまでしゃべったこともあって。そこでもバンドの話をしたんですよね。
──アツいね。
レイジ かなりアツいっす。なんかちょっとシティボーイとしては照れくさい感じがありましたね。でも、すごく有意義だったなって。そういうこともあって「OKAMOTO'S」というタイトルを付けたかったんですよね。
- ニューアルバム「OKAMOTO'S」/ 2012年1月23日発売 / アリオラジャパン
- Amazon.co.jpへ
- 初回限定盤[CD+DVD]3200円 / BVCL-481/482
- 通常盤[CD]2800円 / BVCL-483
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CD収録曲
- Sing A Song Together
- Give&Take
- 太陽はどこ
- ラブソング
- Are You Happy?
- 誰
- 青い天国
- マジメになったら涙が出るぜ
- 夢DUB
- 共犯者
- あからさまに恋してる
- Oh! Pretty Baby
- Sing A Song Alone
- Shine Your Light
初回限定盤DVD収録内容
- 「青い天国」Music Video
- 「マジメになったら涙が出るぜ」Music Video
- 「ラブソング」Music Video
- 「共犯者」Music Video
- 「Sing A Song Together」Music Video
OKAMOTO'S(おかもとず)
オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)の4人からなるロックバンド。バンド名およびメンバー名は、彼らが敬愛する岡本太郎に由来する。抜群の演奏力とアグレッシブなライブパフォーマンスに定評があり、2010年3月にはアメリカのショーケースイベント「SXSW」に出演。続けて行われた全米ツアーでも高い評価を受けた。次世代のロックシーンを担うホープとして注目を集める中、2010年5月にメジャー1stアルバム「10'S」、同年11月に2ndアルバム「オカモトズに夢中」、2011年9月7日には3rdアルバム「欲望」を発表した。2012年は多数のライブをこなしながら楽曲制作に没頭し、2枚のシングルを制作。2013年1月23日には4thアルバム「OKAMOTO'S」をリリースした。