音楽ナタリー Power Push - NONA REEVES

紆余曲折ありつつ20年、ノーナに学ぶ音楽シーンのサバイブ術

歌謡曲のダサい部分を取り込む実験

──今回のベストアルバムには粒揃いの16曲が収められていますが、もしこの中から一番NONA REEVESらしい1曲を選ぶとしたら、皆さんどの曲ですか?

小松 うーん、自分の思い入れで言えば「重ねた唇」は本当にいい曲だなって思う。お客さんにとってはどの曲かなっていうのはまた別だけど。

奥田 3曲とかなら選べるけど1曲ってなるとけっこう難しいよね。

──じゃあ奥田さんが3曲選ぶとしたら?

奥田 お客さんとのリレーションっていう意味では「パーティは何処に?」とか「ラヴ・アライヴ feat. 宇多丸」とかかな。でも純粋に音楽性ってことで言うと「BAD GIRL」とか「重ねた唇」とか、そういうところがNONA REEVESのど真ん中なのかもしれない。

郷太 うん、「パーティは何処に?」はノーナにしかできない世界だし、ライブで何回やってても楽しい。あと俺は今回新たにレコーディングした「ENJOYEE! (YOUR LIFETIME) 2017」は、バンドのサウンドもひっくるめて、究極だなって思ったりもするけどね。

──「ENJOYEE! (YOUR LIFETIME)」という曲は2002年当時のNONA REEVESにとって、かなり斬新なチャレンジでしたよね。

奥田 当時は拒否反応を示す人もいましたからね。

郷太 あの曲は、いわゆる渋谷系的なものからの決別じゃないけど、ジャパニーズ歌謡の持つマイナー感というか、ある種ダサい部分をどうやって自分らの曲に取り込むかの実験だったんだと思う。新曲の「O-V-E-R-H-E-A-T」はその発展系でもあるんだよね。

──今回は発表から15年を経て、現在のライブアレンジをベースに再レコーディングしたわけですが。

郷太 当時のインタビューで俺「『ENJOYEE!』はこれで終わらない気がする」って言ってたんですよ。まだなんかこれは未来がある曲で、今は答えが見えてないって思ってた。それで今回のベストアルバムのミーティングのときに「『ENJOYEE!』をやり直したい」っていうアイデアがパッと出てきたんです。

──新しい「ENJOYEE!」を聴いて、昔より躍動感が強いというか、バンドとしての体力が増したことによって、この曲の本質をより強く表現できるようになったのかなという印象を受けました。

郷太 そうかもしれない。当時の「ENJOYEE!」では、もっと自分の陣地を広げたいと思ってて、でもまだ俺も含めて全員そこまで行けてない状態だった。だからあの頃は「ヘンな曲だ」って言われたんだけど、今聴くとそこまでヘンじゃないからね。今の若いバンドはこういう歌謡感みたいなのを上手に取り入れてるグループが多いと思うし、そんな今だからこそ、この形で「ENJOYEE!」をやり直せたのはうれしかったですね。

リフの郷太とコードの奥田

──ベストアルバム収録の新曲「O-V-E-R-H-E-A-T」は最近作った曲ですか?

小松 年末くらいにできて、録ったのは1月ですね。

──これは郷太さんと奥田さんの共作で?

郷太 たまたま奥田が先にちょっとミドルテンポのファンキーな曲を作ってて、俺は「O-V-E-R-H-E-A-T」のいわゆるメインになる部分を作ってたんだけど、それを奥田に渡したら2つが合体したっていう。

奥田 もうフランケンシュタインみたいにうまくツギハギができて。初めて聴いた人はどこをどっちが作ってるとかわかんないと思うんですけど、けっこう入り乱れてる。

郷太 俺はコードの繰り返しで曲を作っていくのが得意で、奥田はきっちりコードを展開させていくのが得意。「O-V-E-R-H-E-A-T」はリフレインの郷太とめくるめくコード進行の奥田みたいな、2人の個性が合体してうまくいった曲ですね。

──この曲のトーンが、次の新作アルバムにつながりそうですか?

奥田 わからないけど、この曲の熱血っぽい感じはなくしたくないなって思いますね。今はいつになく3人が同じ方向を見てる気がしてて。今の自分たちはちょっとわけのわからないエネルギーみたいなのがあると思うので、その感じがアルバムに入ればいいなって思ってます。

今こそ爆発する時期

──紆余曲折はありましたが、NONA REEVESは激動の音楽シーンでずっと第一線に立ち続けています。皆さんがこうして20年間サバイブできているのはなぜだと思いますか?

郷太 なんでだろうなあ。でも結局音楽が本当に好きで、NONA REEVESや、俺や小松や奥田のことをいいなと思ってくれてる人たちが音楽業界とか音楽ファンの間にいっぱいいるからだと思います。こいつらを殺すのはもったいない、こういう部分が日本の音楽シーンにあるほうがいいって、みんな思ってくれてるんじゃないかなって。

──じゃあ現状には満足していますか?

左から西寺郷太(Vo)、奥田健介(G, Key)。

郷太 や、それは別にしてないな。

小松 満足っていうのとはちょっと違うよね。

奥田 やっぱりここが大事なとこなんですけど、俺らまだ売れてないんですよ(笑)。

郷太 あはは(笑)。

奥田 こうやってワーナーにまた呼んでもらえた以上、やっぱり結果残したいっていうのはありますからね。

小松 ここでやる以上は、思いっきりバット振らないと意味がない。

郷太 それこそ今のORIGINAL LOVEを小松も手伝ったりしてるけど、例えば「接吻 kiss」っていうのは玄人も一般の人も唸る曲なわけで、だからこそ日本中に広まって今も愛されてる。俺らはそういうものはまだまだ全然作れてないから。

──このワーナー期でそれを実現したいと。

郷太 どのタイミングもそういうの目指してがんばってきたつもりだけど、今回ワーナーでさらに後押ししてもらえる土壌はできてるはずだから、ともかくまずはこの2年ですね。10年後のこと話してもしょうがないし、ここから2年ぐらいのスパンで、これまで培ってきたノウハウを全力で出して勝負したい。今こそ爆発せなあかん時期やなって思ってます。

──予感はありますか?

小松 最近ライブのお客さんが増えてきてるんですよね。地方に行くと若い子も多くて。

奥田 びっくりするよね。「19歳です」とか言われて。

郷太 あと男が増えた。昔は9:1とかで女の子ばっかりだったのが、最近もう男が4割くらいいたり。俺らの昔からの知り合いが楽屋に子供連れて来て「息子がファンなんです」みたいなのもどんどん増えてるし。やっぱりこういう音楽を生バンドでやってる人ってあんまりいないから。

──ここに来て、時代がNONA REEVESに追いついてきたのかもしれませんね。

郷太 いや、でもホントなんて言うのかな。1つきっかけさえあればいろんなものがガラッと変わる時代だと思うんですよ。俺の好きな話で、何百年も解けなかった数学の定理の話があって、あるとき誰かが「解けました!」って言ったら、世界中で5人ぐらいが「おお、ひと足遅かった。俺も解けた!」って次々解けて、実は最初に解けたって言ったやつは結局勘違いで解けてなかったんだけど(笑)、でも解けたって話を聞いて「あ、できるんだ」と思った瞬間に突破口が開けて、難しかった定理が解けたっていう。だからやっぱり何十年も培ってきたものがある瞬間に爆発してワールドワイドに広がっていくっていうことは、俺はやっぱりあると信じてて。だから自分たちで限界を作るつもりはないし、どんなことも無理だとは全然思ってないですね。

NONA REEVES
ベストアルバム「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」 / 2017年3月8日発売 / WARNER MUSIC JAPAN
初回限定盤 [CD] / 2700円 / WPCL-12516 / 紙ジャケット仕様
通常盤 [CD] / 2700円 / WPCL-12533
CD収録曲(初回限定盤・通常盤 共通)
  1. O-V-E-R-H-E-A-T
  2. LOVE TOGETHER
  3. パーティは何処に?
  4. BAD GIRL
  5. ラヴ・アライヴ feat.宇多丸
  6. HIPPOPOTAMUS
  7. 透明ガール
  8. 重ねた唇
  9. I LOVE YOUR SOUL
  10. NEW SOUL -2017 MIX-
  11. DJ! DJ! ~とどかぬ想い~ feat. YOU THE ROCK★
  12. STOP ME
  13. DAYDREAM PARK
  14. HEY, EVERYBODY!
  15. WARNER MUSIC
  16. ENJOYEE!(YOUR LIFETIME)2017
ハイレゾアルバム「POP'N SOUL 4824~The Very Best of NONA REEVES」(全10曲収録) / 2017年3月8日発売 / WARNER MUSIC JAPAN
ライブ情報
NONA REEVES「デビュー20周年記念 赤坂ノーナ最高祭!!! 第一夜」
2017年3月26日(日)東京都 赤坂BLITZ
<出演者>
NONA REEVES / 堂島孝平 / サニーデイ・サービス
NONA REEVES「デビュー20周年記念 赤坂ノーナ最高祭!!! 第二夜」
2017年5月28日(日)東京都 赤坂BLITZ
<出演者>
NONA REEVES / KIRINJI
インストアイベント
2017年3月13日(月)東京都 タワーレコード新宿店7F
START 20:00
<出演者>
NONA REEVES(西寺郷太、奥田健介、小松シゲル)
内容:アコースティックライブ+特典会(サイン&握手)
2017年3月22日(水)愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店 店内イベントスペース
START 19:00
<出演者>
西寺郷太(NONA REEVES)
内容:トーク+特典会(2ショット撮影&握手)
2017年3月23日(木)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店イベントスペース
START 20:00
<出演者>
NONA REEVES(西寺郷太、奥田健介、小松シゲル)
内容:アコースティックライブ+特典会(サイン&握手)
NONA REEVES / ノーナ・リーヴス
NONA REEVES

西寺郷太(Vo)、奥田健介(G, Key)、小松シゲル(Dr)の3人からなる“ポップンソウル”バンド1995年に結成し、1997年11月に「GOLF ep.」でメジャーデビュー。初期はギターポップ色の強い楽曲を得意としていたが、1999年のメジャー2ndアルバム「Friday Night」を機にディスコソウル的なサウンドを追求しはじめる。その後も精力的に活動を続け、コンスタントに作品を発表。ポップでカラフルなメロディと洗練されたアレンジによって、国内で他に類を見ない独自の立ち位置を確立する。西寺は文筆家としても活動し、80'sポップスの解説をはじめとする多くの書籍を執筆。さらにメンバーは3人とも他アーティストのプロデュースや楽曲提供、ライブ参加など多岐にわたって活躍中。2017年3月にメジャーデビュー20周年を記念したベストアルバム「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」をリリースした。