数ある陸上自衛隊音楽隊の中のトップ

──まずは基本的なところからお伺いしたいのですが、陸上自衛隊の中央音楽隊ってどういった組織なんですか？

全部で20以上ある陸上自衛隊の正規編成の音楽隊で最も大きい音楽隊です。

──陸上自衛隊の中だけで20以上もの音楽隊があるんですね。

そうなんです。中央音楽隊がほかの音楽隊と違うのは、国賓や公賓が来日した際に歓迎式典で演奏できるかどうかという点です。だから今日もさっきまで、羽田空港で演奏してきたんですよ。

──陸上自衛隊中央音楽隊だけがそういった式典で演奏できるのはなぜなんですか？

陸上自衛隊の隊員で編成されている特別儀仗隊というのがあるんですけど、この部隊が、国賓や公賓、またはそれに準ずるお客さんに対して、最も敬意のある敬礼をするんです。それを栄誉礼というんですけど。

──栄誉礼、聞いたことあります。

栄誉礼は、外国の首脳たちが日本に滞在している間、彼らの安全を保証するということを示すための国際儀礼で、どこの国でもあるものなんです。日本ではこの栄誉礼の訓練を受けているのが陸上自衛隊の特別儀仗隊だけなので、式典での演奏も陸上自衛隊の音楽隊のトップである中央音楽隊が担当しているというわけなんですね。この栄誉礼は特別な訓練を受けていないとなかなかできないんです。

──特別な訓練というのは、演奏の技術的な部分でということですか？

いやいや、演奏できればいいってもんじゃなくて、一挙手一投足非常に細かな決まりごとがある。しかもこういった儀式が年間を通して何十回とあるわけですからね。特別な任務だけに作法も独特で、研ぎ澄まされているんです。だからほかの音楽隊で代用できないんですね。

任務に基づいて「ニコニコ超パーティー」に出動

──自衛隊の音楽隊の活動は、すべて“任務”ということになるんですか？

任務に基づいて動く。これは音楽隊だけじゃなくて、自衛隊は全部そうです。ですから、私たちの仕事が任務から外れることはありません。そして任務の中には陸上自衛隊のための演奏と、一般の要請を受けてそれに応えるための演奏があって。私たちが一般向けに演奏を行う場合は、一般の要請に応ずるという形が多いです。今回の「ニコニコ超パーティー」もそうですね。

──そうなんですね。こういったイベント出演の要請に対して、出演するかどうかの決定は武田隊長によるものなのですか？

いやオファーに対する検討は音楽隊だけでやるわけではないんです。広報室がイベントの公共性や、広報活動の効果を判断します。その判断で問題がないとなれば、私たちがほかの業務に影響がなければ演奏しに行くというわけです。

──ということは、「ニコニコ超パーティー」も自衛隊が稼働することに問題はなかったわけですね。

もちろん、全然問題ありませんよ（笑）。一般の要請に応ずると言いましたけど、なぜ応ずるかといえば、陸上自衛隊の広報になるからなんです。判断の際は催しの内容を加味して、広報的な効果や、1つの企業のみの宣伝にはなっていないかどうかってところを見ます。それと陸上自衛隊の広報の対象は若い人からお年寄りまで幅広いんですけど、その中でも青少年層っていうのはとりわけ大事で……やはり、入隊してくれる人がいなくなると困りますからね。ネットユーザーは若い人が多いから、そういった年齢層の人に人気のある「ニコニコ超パーティー」に出演して広報活動を行うということはさほど不思議なことじゃないんです。