音楽は職種の1つとして国に認められている

──音楽隊の皆さんも、自衛隊っぽい活動というか、いわゆる自衛隊としての活動みたいなものも行っているんですか？

もちろん体力測定もあって、年齢ごとに決まった基準値をクリアしないといけない。そのためにその辺りをランニングしたりすることもありますし、体もシェイプアップしておかなければなりません。ほかにもデスクワークもあります。演奏する際の服や楽器を新しくするとか、小物が足りない、そういう調整も全部隊員がやっていて。あとは射撃検定などもありますし、格闘ってのもあります。

──こういったら失礼かもしれませんが、話を聞いていると本当にしっかり自衛隊って感じですね（笑）。そういった通常のプログラムがある中で、さらに音楽をやっているってすごいです。

いやね、自衛隊の中でも音楽って職種の1つなんです。例えば自衛隊の職種として、普通科とか機甲科とか輸送科とか聞いたことあるでしょ？ そういうものと同等で、音楽科というものがある。だから輸送科が輸送に関する訓練をやっているのと同じで、私たちは音楽をやっているんです。音楽が職種の1つとして認められているってことは、音楽がそれだけ地位が高いというこなんです。

──なるほど。

いろいろな人がいろいろなことを言うけど、日本は決して音楽文化を大事にしていないわけではない。それは自衛隊を見ていただければわかるんですよね。音楽を1つの職種として、国が認めているわけですから。

ボカロの曲を演奏したらウケるかな？

──昨年の事例でいうと、「ニコニコ超パーティー」の会場には2日間で約1万2000人の観客がいて、さらに110万人がネットで観覧していました。視聴者の割合的には10～20代が最も多いとのことでした。

そうなんですね。「ニコニコ超パーティー」を観ている人は陸上自衛隊中央音楽隊のことを知らない人がほとんどだと思うので、そういう人たちに知ってもらいたいですよね。それと同時に、我々の演奏で会場が盛り上がればなおうれしいです。

──当日演奏する楽曲はもう決まっているのですか？

メインの楽曲は決まっているのですが、構成等を含め、まだ相談中なんです。でも出演発表したときに「皆様ご存じの曲を練習中です」って言ってしまっていますから……（笑）。まあ、まだステージプランも決まっていないので。とにかくすべてを決定するのはこれからですね。

──ニコニコ動画ではボーカロイドの曲が人気なので、ボカロの曲とかを吹奏楽で演奏したら会場でも喜ばれると思います。

ボーカロイド曲って、今まで吹奏楽で演奏されたことはあまりないですよね。やればウケるのかな？

──かなりウケると思いますよ。アレンジがすごく難しいと思いますけど。

演奏してみて、吹奏楽のよさと原曲のよさが出るものだったら考えてもいいでしょうね。吹奏楽はクラシックと違って、守備範囲が結構広い。吹奏楽っていろいろなジャンルの楽曲をアレンジすることができるんですけど、たまに向いていないものもあるんですよね。

──ステージプランにもよるのかもしれませんが、当日は行進しながら演奏するような可能性もあるのですか？

もちろん可能性はありますよ。でも、行進となると行進できる楽器のセレクトになってしまいますから、座って演奏する場合と使う楽器が変わってきます。

──なるほど。

やっぱり、ドラムセットやパーカッションのような据え置きの楽器は使えませんからね。あとは管楽器のクラリネットも重低音を担当する大きなタイプのものは使えないので、そのぶん音の厚みは単純になってしまいます。一長一短ではありますが。

──ちなみに陸上自衛隊中央音楽隊では、何種類ほどの演奏形態に対応しているのですか？

椅子に座って演奏するスタイルもあれば、フロアに出てマーチングスタイルで演奏する場合もありますし、木管五重奏やフルートとハープの二重奏、ディキシーランドバンドなど少ない人数でやる室内楽のグループもあります。

──多彩な演奏スタイルやジャンルに対応できるんですね。

吹奏楽ってクラシックと違ってジャズもやるし、基本的に新しい音楽だらけなんですよ。だからいろいろな音楽を取り入れているんです。以前は「モンハン」の曲もやったりしたし。

──「モンハン」って、あの？

「モンスターハンター」。日本武道館でのコンサートで「モンハン」のテーマ曲の「英雄の証」をやったんです。実はそのコンサートもニコニコで生放送していて。会場に来ているお客さんは何の曲だかわからず、ただカッコいい曲だなあと思って聴いている様子でしたけど、ニコ生ではすごく反応があったらしくて（笑）。

──なるほど。今回の「ニコニコ超パーティー」も、陸上自衛隊中央音楽隊の演奏をネットで気軽に観られるよい機会になりそうですね。

ええ。多くの人に観てもらいたいですね。

──お話を聞いていると、武田隊長も「ニコニコ超パーティー」への出演を楽しみにしている様子ですね。

うん（笑）。仕事はすべからく楽しまないと。