ナタリー PowerPush - 中川翔子

しょこたん2ndアルバム「Magic Time」発売!貪欲作に込めた思い&2009年の展望をギガント語る

1stアルバム「Big☆Bang!!!」発売、初の全国ツアー、アメリカでの初ライブ、3カ月連続シングル……と、2008年はアーティストとして大きな飛躍を見せた中川翔子。2009年は待望の2ndアルバム「Magic Time」でスタートを切る。

ナタリーでは「アーティスト・中川翔子」の魅力に迫るインタビューを敢行。2008年の音楽活動を振り返りながら、アルバム「Magic Time」の制作秘話や、しょこたんが「ネ申」とあがめる松本隆・筒美京平との共演について、さらに2009年の展望などをたっぷりと“貪欲”に語ってもらった。

取材・文/臼杵成晃 インタビュー写真/佐藤類

1日の中で夕闇の12分しかない綺麗な空の間「Magic Time」

インタビュー写真

——1stアルバム「Big☆Bang!!!」からブランクわずか9カ月という、かなりのハイペースでフルアルバムが完成しましたね。

年に2枚もアルバムを作ったことになるし、シングルの3カ月連続リリース(「Shiny GATE」「続く世界」「綺麗ア・ラ・モード」)もあったし。今年はホントにずっと歌を歌わせていただいていた感じがして、想像もしていなかったような1年でした。

——レコーディングが続く中で、全国ツアーやアメリカ「アニメ エキスポ 2008」への出演もありましたよね。

CD発売イベントや学園祭もありましたし。歌手デビューする前は、歌を歌わせていただけるということ自体が「いいんですかっ?」っていう状況だったので、今年こんなにいっぱい歌を歌う機会をもらえたことはホントにうれしかったです。わたしは脳みそが小5とか中3とかで止まっているようなところがあるんですけど(笑)、その頃の自分からすると信じられないような出来事ばかりで。今年起きてることは全部夢の中のような……不思議な気持ちでした。

——「アルバムを作る」という行為には、やはり特別な思いがありますか?

1stシングルを出したとき(2006年7月発売「Brilliant Dream」)にやったデビューイベントで「アルバムを出したい!」って短冊に書いていたぐらい、アルバムを出すことは人生の目標になっていて。だから1stアルバムのときは「アレもやりたいコレもやりたいどうしよう」って感じで、ひたすらワクワクドキドキしてたんです。同じアルバムの中の曲なのに、1stシングルと4枚目のシングル「snow tears」とでは全然声が違ってしまっているくらい(笑)。貪欲でムチャクチャな感じだけど、自分でそのときできる全部をやったようなアルバムになったから「Big☆Bang!!!」というタイトルにしたんですよ。

——まさに1stアルバム、という内容ですよね。今回はどういうアルバムを目指したのでしょうか。

あれからいっぱい歌を歌わせてもらう機会があったぶん、ちょっと成長できてたらいいな、というのを最初に考えました。1枚目が「爆」とか「激」とかそんな感じだとしたら、今回は「綺麗ア・ラ・モード」が軸になるような、少し落ち着いた感じが出せたらいいなと思って。タイトルも「Magic Time」という、1日の中で夕闇の12分しかない綺麗な空の時間を表したもので「女の子が一番綺麗に見える」っていう意味があるフレーズなんです。落ち着いた雰囲気と、どこかちょっとメランコリックで懐かしい感覚があって、でも貪欲さはそのまま、というのを目標に作りました。

——「貪欲」という部分で言うと、バラードありロックあり、打ち込みのポップスあり、というバリエーションは前作よりもかなり広がっていますよね。曲のスタイルにあわせて使い分けるボーカルの表現力が、ますますアップしているように感じました。

「Big☆Bang!!!」のときは、元気な曲とかわいい曲とで全然声が違っちゃうのはよくないんじゃないかなあって思ってたんです。でも、コンサートで前半アイドルっぽいブロック、後半は怒濤のロックで、みたいな感じで歌い分けるのは楽しくて。それで曲ごとの世界に妄想で入り込んで全力を出していこうっていう考えに変わりました。今度のアルバムもロックだったり甘い曲だったりバラードだったり、曲の雰囲気も歌の内容もそれぞれで。作詞家さんもすごく幅広い世界を描いてくれるから、それに向かって全力で歌いました。

——この曲はロックプレイ、こっちはアイドルプレイ、とコスプレ的に表情を変えていくセンスがすごいなと感じました。「この曲が求めているのは、きっとこの声なんだろうな」という。作家さんたちはきっと作り手冥利に尽きると思いますよ。

いやいやいや、とんでもございません!

“神様たち”にこれまでとは違う次元へ連れて行ってもらった

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——3カ月連続シングルの締めにあたる「綺麗ア・ラ・モード」では、松本隆、筒美京平という大先生、ゴールデンコンビと一緒に仕事をされて、さらに筒美先生はアルバムでも1曲書き下ろしていらっしゃいます。中川さんがつねづね「ネ申」とおっしゃっている2人の参加は、相当大きな出来事ですよね。

今でもまだ信じられてないくらいで……。冗談抜きで松田聖子さんの曲を聴かない日がなかったっていうくらい大好きで、いろんな感情とか気持ちとか季節の移り変わりとか、あらゆる面で松本隆さんの言葉から教わったと言っていいぐらい。書いていただきたいと思うこともおこがましいと、妄想すら控えていたくらいなので(笑)。筒美京平さんにも、もし「綺麗ア・ラ・モード」のときに「このコはダメだ」って思われてたら、アルバムでお願いできなかったと思うので、もう……ドキドキでした。

——筒美×松本コンビが書いたらすべていい曲になるというわけではないと思うんですよ。ベストな形で表現されてこそというか。でも「綺麗ア・ラ・モード」は多くの歌謡曲ファンの心を掴んでますよね。今まで中川さんの歌に興味を持ってなかった人たちも「オッ?」という感じで、見方を改めている人たちもすごくいるみたいで。

それはうれしいですね。これまで歌を出してることも知らなかったという方々が「綺麗ア・ラ・モード」を聴いてくださっていて。やっぱり筒美さんの曲は大人の方の心に刺さるメロディなんだろうなあ。改めてすごい方々に作っていただいたんだっていうのを実感してます。筒美さんからは「最初は難しいけど、どんどん歌うたびに馴染んでいって変わっていくから、大切にしてください」っていう言葉をいただきました。懐かしいようでいて、でもちゃんと今の私を見て書いてくれた「綺麗ア・ラ・モード」で、これまでとは違う次元に……神様たちに連れて行ってもらった感じ。すごく難しいけど、でもずっと歌っていきたい曲ですね。

——このアルバムにとっても「歌手・中川翔子」にとっても、重要な意味を持つ曲になるかもしれませんね。

アルバムの「Magic Time」というタイトルも、松本さんとの会話の中から生まれたものだし、やっぱりこの曲がアルバムの軸になっている気がします。

——アルバムに収録される新曲もバリエーションに富んでますけど、「冬の遊園地」は「綺麗~」同様、今までになかった雰囲気のバラードですよね。

楽しい場所なのにちょっと寂しい気持ちにもなったりする遊園地のイメージが綺麗に描かれている曲で。PVではすごく綺麗な夕闇の時間が撮れました。空というのは過去と今と未来をつないでいる唯一のものでもあると思うんです。1秒ごとにどんどん変わっていく、いろんな空の色を想像して聴いていただけたらなと思います。

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——オープニングのインスト「your "Magic Time"」から続けて始まる新曲「Spiral」はまた違った表情を持つ曲で、勢いのあるメロディと力強いメッセージが印象的です。

2008年に経験したことは自分にとってホントにどれも大きかったんですよ。毎回すっごく大きなハードルが来るんですけど……やっぱりネガティブな自分が出てきて「わたしには無理だよ」って思っちゃうんです。でも「きっと楽しいに違いない!」って思う気持ちも大きい。「Spiral」という曲は、くよくよしたり迷ったりしても、一周すると前に進んでる、螺旋のような人生なんだということが描かれているんです。「学生時代の自分ってなんだったんだろう」とか、ネガティブなことすらも、1日でもなかったら今の自分はきっとなかったし。そういう風に迷いながら壁にぶつかりながらでも前に絶対行くような、すべてが先に行くための過程なんだなって思えたら楽しいと思うんですよね。

——昔のしょこたんにとっての松田聖子さんのように、今悩みを抱えている若い女の子にとって、すごく励まされるアルバムになるんじゃないでしょうか。

わたしは引きこもりがちで、落ち込みやすくて、どネガティブな人生を送ってきたけど、ずっと人生で向き合いたいなと思っていたことを歌を通して表現できるのが、今はすごく楽しいんです。コンサートで人前に出て歌を歌うっていう、引きこもりとは一番対極にあることを今はやっていて、不安はあるけど、それで出会えた人もいっぱいいるし、みなさんに“貪欲”をもらって。来てくれるみんなも(コンサートを)コミュニティの場として、お祭りの場として楽しんでくれてるんです。コスプレしてきてくれたり、仲良くなって結婚する人もいたりして! わたしにとってもうれしい、自慢の会場なんです。今落ち込んでる真っ最中だったりする人がアルバムを聴いたりコンサートに来たりして「今があるから輝いていくんだ」って考えるきっかけになってもらえたらうれしいですね。

2nd アルバム『Magic Time』2009年1月1日発売 / Sony Records

  • CD+DVD 3800円(税込) / SRCL-6932~33
  • CD 3059円(税込) / SRCL-6934
CD収録曲
  1. your “Magic Time”
  2. Spiral
  3. through the looking glass
  4. 続く世界
  5. シャーベット色の時間
  6. マカロン☆ホリディ
  7. Brand-new day
  8. Shiny GATE
  9. 冬の遊園地
  10. 綺麗ア・ラ・モード
  11. Ivy
  12. 空色デイズ -天元突破EDITION-
DVD収録内容
  • 「冬の遊園地」PV
  • ヒストリカルPV「Magic Time 2008」
中川翔子(なかがわしょうこ)

「しょこたん」の愛称で知られる、1985年生まれの女性アイドル。2001年に芸能界デビューして以来、数々のテレビ番組に出演し人気を高めていく。2004年11月からスタートさせた公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」でも人気を博し、2006年にはシングル「Brilliant Dream」で歌手デビュー。このほかにも声優やイラスト、漫画家、ドラマ出演など、多方面で活躍するマルチタレントぶりを発揮している。