音楽ナタリー Power Push - Ms.OOJA×武部聡志

2人の“色”で新たに生まれ変わる代表曲

2016年2月にメジャーデビュー5周年を迎えたMs.OOJAが、キャリア初のベストアルバム「Ms.OOJA THE BEST あなたの主題歌」をリリースする。本作には「LOVE」「COVERS」「LIFE」という3つのテーマを基に構成された全16曲が収められる。中でも注目は、彼女の代表曲を武部聡志がリアレンジし、ゴスペラーズの黒沢薫をゲストボーカルに迎えて新録した「Be...duet with 黒沢 薫」だ。今回、音楽ナタリーでは同曲のレコーディングスタジオに伺い、Ms.OOJAと武部聡志へのインタビューを実施。作業を終えたばかりの2人に、今回の楽曲作りの背景や音楽観などを大いに語ってもらった。

取材・文 / 猪又孝 撮影 / 黒瀬康之

武部流「Be...」は色が混じってにじむ感じ

──先程、「Be...duet with 黒沢 薫」のレコーディングを終えたばかりですが、新しいアレンジで歌ってみた率直な感想から教えてください。

左からMs.OOJA、武部聡志。

Ms.OOJA 4年前にリリースしたこの「Be...」という曲はオリジナルを含めて4バージョンあるんですけど、今回は武部さんのアレンジによって、この曲の新しい魅力を知ることができました。歌い慣れてる曲だけど、これまでとはまったく違うよさがあって。

──伴奏はピアノとバイオリンのみですが、武部さんは今回のアレンジをする際、どんなことを意識されましたか?

武部聡志 オリジナルとかけ離れても聴く人ががっかりするだろうし、かと言ってまったく同じじゃつまらないから、僕のピアノならではの色付けを意識していました。コードをパーンと鳴らしたときにどんな景色を描くか。僕はそういうピアノ演奏に重きを置いているので、映像的というか色彩的というか、そんなサウンドになればいいなと思っていました。

──原曲の「Be...」と新アレンジの「Be...」をそれぞれ色で例えると、どんな違いがありますか?

武部 オリジナルは色が強い印象ですね。赤とかオレンジとか、はっきりしてる感じ。僕がアレンジさせてもらったものはもうちょっと淡い色合いになったと思います。何かの色の上に何かの色を塗ると、色が混じってにじむ感じがありますよね。そういうふうにしたかったんです。

Ms.OOJA 武部さんのコードの運び方がすごく絶妙なんです。歌っていて「おおっ、こういうコードもあるんだ!?」みたいな。

武部 コードの響きでメロディの聞こえ方って変わるんですよ。コードの付け方次第で、その瞬間の言葉がパッと耳に飛び込んできたりする。そういうことを意識しながらアレンジしていたから。

Ms.OOJA だから、原曲より一層、表情が豊かになった印象がありますね。

レコーディングのリハは食卓で

──今回、黒沢さんをデュエット相手に迎えようと思った理由は?

黒沢薫

Ms.OOJA 去年、黒沢さんが出したソロシングルの収録曲「愛とは・・・duet with Ms.OOJA」に参加させていただいて。今回「愛とは・・・」とはまた違った世界が広がるんじゃないかと思ったので黒沢さんに客演をお願いしました。実は、そこにも武部さんとのご縁があるんですよね。

武部 そう。10年前の黒沢くんのソロデビューシングル「遠い約束」は僕がアレンジしてるんです。そういう縁もあって、「黒沢くんだったら、ここはこういう声でくるな」とか「ここはこれくらい声を張るだろうな」っていうのがイメージしやすかったんで、今回はそれを意識しながらアレンジしましたね。

──特に、サビや大サビで聴ける黒沢さんとのハーモニーは絶品でした。

武部 今日レコーディングしていて思ったけど、黒沢くんとOOJAのビブラートってすごく似てるんだよね。声を揺らしたときの振幅や波形がすごく近い。一方がビーッと直線的に歌う人で、もう一方がビブラートの深い人だとハマらないけど、そこのマッチングがすごくいいなって。

Ms.OOJA 私は黒沢さんのことをアニキと呼んでるんですよ。黒沢さんがご自宅で手料理を振舞ってくださるカレー会にお邪魔させてもらっていて、プライベートでもすごくお世話になっているんです。名古屋から上京して以来、東京の人たちとの交流があまりなかったんですけど、去年は黒沢さんのおかげもあってコミュニティが一気に広がりましたね。実はレコーディングの2日くらい前にも黒沢カレー会があったんですけど、その食卓でアニキが「よし! OOJA、リハーサルするぞ」と言って、iPhoneで「Be...」をかけながらレコーディングのリハーサルをやり始めて(笑)。

──「Be...」の“黒沢カレー会バージョン”といったところですね。

Ms.OOJA そう(笑)。「武部さんもいろいろ考えてるだろうけれど、俺もハモりのラインを考えた」っておっしゃられて。その音楽に対する熱心さ、真面目さがすごいなって思いましたね。

武部 まあ大体、アカペラとかやってたりする連中は歌いたがりだから、人を見つけてはすぐ「一緒に歌おう」って(笑)。黒沢くんは後輩の面倒見もいいし、音楽に対する情熱が何年やってても変わらない。アカペラサークルとかに所属してたような頃と同じ気持ちで音楽に臨んでるから、それが後輩たちにとってもすごくうれしいことだよね。

Ms.OOJA そうなんです。いつもすごく勉強になります。

Ms.OOJA ベストアルバム「Ms.OOJA THE BEST あなたの主題歌」/ 2016年3月9日発売 / UNIVERSAL SIGMA
1万枚完全生産限定盤 [CD+DVD] 5378円 / UMCK-9812
初回限定スペシャルプライス盤 [CD] 2138円 / UMCK-9813
CD収録曲
  1. Be...
  2. 30
  3. Baby don't know why
  4. また恋をすることなど
  5. ANSWER
  6. I WILL
  7. let go
  8. First love
  9. 最後の雨(ALBUM VERSION)
  10. Hello, Again ~昔からある場所~
  11. 朝がまた来る
  12. It's OK
  13. Life(2016 VERSION)
  14. My Way
  15. Be...duet with 黒沢 薫
1万枚完全限定生産盤付属DVD収録内容
  • 2015年7月の「SAPPORO CITY JAZZ」でのMs.OOJAワンマンライブを完全収録
Ms.OOJA(ミスオオジャ)
Ms.OOJA

1982年10月28日生まれ、三重県四日市市出身の女性シンガーソングライター。17歳の頃より地元の三重県を中心に音楽活動を行い、卓越した歌唱力とパワフルなライブパフォーマンスで注目を集める。2011年2月にシングル「It's OK」でメジャーデビュー。この曲はさまざまな着うたチャートで上位を席巻し、彼女の名前を全国に知らしめた。同年6月に1stアルバム「VOICE」、2012年に2ndアルバム「HEART」、2013年に3rdアルバム「FAITH」、2014年に4thアルバム「COLOR」をリリース。2015年には松山ケンイチが主演を務めた映画「天の茶助」に主題歌「翼」を書き下ろし、この曲を表題曲としたミニアルバムを発表した。そして2016年3月にメジャーデビュー5周年を記念したベストアルバム「Ms.OOJA THE BEST あなたの主題歌」を発売する。

武部聡志(タケベサトシ)
武部聡志

作・編曲家、音楽プロデューサー。東京・国立音楽大学在学時より、キーボーディスト、アレンジャーとして数多くのアーティストの作品に携わる。1983年より松任谷由実のコンサートツアーの音楽監督を担当。このほか一青窈、今井美樹、ゆず、平井堅、JUJUといったアーティストのプロデュースや、フジテレビ系音楽番組「FNS歌謡祭」「MUSIC FAIR」の音楽監督、2011年公開のスタジオジブリ映画「コクリコ坂から」の劇中音楽を手がけるなど、多岐にわたり活躍している。