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両国国技館ライブの感動再び WOWOW連動インタビュー

オーディオマニアとバンドワゴン

──今回の両国国技館ライブをやるにあたって2011年の全国ツアー「ドコガイイデスカツアー」の経験が生きている部分もあるんでしょうか?

ミト それはありますね。

インタビュー風景

──機材を全部車1台に乗せて全国各地を回っていたわけですよね。

ミト それが結構面白い話で、車の中に乗らなきゃダメなわけです。配送したりするとお金かかっちゃうし、そうすると小さいところで少人数でやるライブだから元が取れないんですよ。車1台でうちら3人+スタッフ2人、と機材を中に入れて、しかも不自由なくライブを成功させていくっていう。

──たいへんそうですね。

ミト テトリスみたいなもんですよ。この箱を1個追加すると車に乗り切らなくなるからダメ!っていう。それがやってるうちに「もっとコンパクトにできない?」って感じでだんだん楽しくなってきて。

郁子 元々ライブをやる会場じゃなかったりするから。初めて生ドラムのライブをやったっていう会場もいくつもあって。それまで弾き語りとか寄席とかしかやったことがないようなところに初めてドラムを入れて、ドーンって鳴らした瞬間に粉塵がドサーって(笑)。弾き語りじゃなくちゃんとPAを入れて、しかも音質を妥協しないっていうのは、まだ日本のバンドでトライしてる人たちがいない領域ですよね。

ミト 世界規模でもいないと思いますよ。オーディオマニアとバンドワゴンが一緒になったっていう話ですからね(笑)。

場所から返ってくるものを楽しみたい

──会場によって音の鳴りみたいなものも全然違うんですか?

ミト はい。いい箱に巡り合ったときは、まさに箱が楽器となるっていうか。

──いい会場というのは例えばどういう場所?

ミト 一概には言えないんですけど、ひとつは地面がしっかりしてるっていうことなのかな。あと酒蔵みたいな、歴史が古くて耐久性のある木があるところ。そういうところでセッティングを組んで、バンって鳴らすともうリハする必要ないっていうくらい、何やっても大丈夫っていう感じになりますね。

──ライブハウスとは全然違うんですね。

ミト もちろんライブハウスが悪いわけじゃないんですよ。ただ僕らは音楽的なバリエーションがやっぱりちょっと広すぎるので、ライブハウスだと難しいところもあるんです。もっと部屋ごと鳴らしたいとか、この曲はもっと開放的な音にしたいとか、求めるものが多すぎて。

郁子 なんかそういうのが元々好きなんだと思います、単純に。場所から返ってくるものを楽しむっていう。

ミト あと搬入搬出なんかも自分たちでやるわけです。みんなで作業用手袋して、車からガーって機材を降ろして、どれくらい速くセッティングができるか、ケーブルをどれくらいきれいにピッとまとめられるか。文化祭みたいですけど、そういうのも好きなんですよね。

インタビュー風景

──普通に考えると過酷な感じもしますけど、3人とも全然楽しそうですよね。

郁子 そうですね。スケジュール見た人には「大変そうだね」とか「カラダ大丈夫?」ってよく言われるんですけど……面白いっていう角度からしか見ていないので(笑)。

ミト まあライブが終わってね、お酒も飲まずに次の会場に、例えば車で4、5時間かけて行かなきゃいけないっていうのが連チャンで続いたりとか、そういうことはあるんですけど、でも会場行ってセッティングを組んでバッて音鳴らして、「わっ、ここいいわ!」って思った瞬間のときの開放感はやっぱりね。

郁子 吹っ飛んじゃう。

ミト そうそう。それで全てが終わったあとにやっとお酒が飲める。美酒っていうのはやっぱ遠ざけてこその美酒なんですよ(笑)。

──いい話ですね(笑)。

ミト で、そういう経験を経て、この感覚がいよいよ僕らの中でベーシックになってきた。だから今、両国でああいうライブがやれたんだと思うんです。「ドコガイイデスカツアー」であっちこっち振り回されたりもしたけど、そこを楽しめるようになったから。

郁子 例えばこれまでも野音でライブをやるときは、シャボン玉を配って好きな曲で吹いてもらったり、携帯を鳴らしたり。オーディエンスと作っていくっていう歴史があって。だから今回も、面白がってくれたんじゃないかな。

大助 お客さんとの距離も近かったよね。

郁子 そう、大きいのに近い! ちっちゃいところでやってきたことが、そのまま大きくなったような感覚だった。

ミト 昔はそんな大人数相手に届けきれないんじゃないかとか、そんなことを考えたりもしてたんだけど、そういうことじゃないんだよね。自分たちが出したい音を出すことに集中できれば、そんなに余計なことは考えないでいいし、いろんなものが見えてくるんだってわかったんです。

インタビュー風景

MUSIC STYLE JAPAN

ミュージックスタイルJAPAN
クラムボン

WOWOW
2011年12月25日(日)24:15~

クラムボン

原田郁子(Vo, Key)、ミト(B)、伊藤大助(Dr)によるスリーピースバンド。1996年に同じ専門学校に通っていた3人により結成。1999年にシングル「はなればなれ」でメジャーデビューを果たす。自由で浮遊感のあるサウンドとポップでありながら実験的な側面も強い楽曲、強力なライブパフォーマンスで人気を集め、コアな音楽ファンを中心に高い支持を得る。2011年には約50カ所におよぶ全国ツアー「ドコガイイデスカツアー」を開催。11月には東京・両国国技館で初のアリーナワンマンライブを成功させた。