「ももクロのルール」も打ち破って

──今作では楽曲自体の変化だけじゃなく、皆さんのボーカル、歌い方の変化も大きいんじゃないでしょうか。

高城　それお母さんにも言われました。「歌い方変わったよね」って。

百田　今までは「カッコいい曲ならカッコよく歌えればいい」とか「ちゃんと歌えてればOK」みたいな感じだったんですけど、今はもっと……1つひとつの語尾を大事に歌ったり、歌の入り方を慎重に考えたりするようになりました。そういうところで少しずつ変わってきてるのかも。

有安　私はかなり意識的に変えました。レコーディング中にも曲ごとにどんどん変えていて。

──確かに、一番顕著に変化を感じるのは有安さんの声ですね。

有安　1曲録ったらすぐ反省会をして、まだ前の歌い方と同じだなと思ったらさらに修正して。

──メロディが難解な曲、歌うのが難しい曲も多いですよね。これまでも一筋縄ではいかない曲が多かったももクロですけど、今回の新曲は特に。今までにないリズムの刻み方とか、そういった新たな挑戦も多かったのでは？

玉井　難しかった。ツアーの練習中に新曲と今までの曲を一緒に歌ったら、けっこう違いを感じましたね。どんどん難しくなってるし、どんどん音も高くなってるよねって話してました。

──それぞれ個人的に「この曲は難しかった」「ここはうまくいった」という曲はありますか？

有安　どれか1曲を挙げるとなると難しいんですけど……私は歌い方をかなり意識しながら進めていたので、レコーディングが進むにつれだんだんつかめてきたところがあって。

玉井　「月と銀紙飛行船」は初めての3拍子で。レコーディングのときにはクリック（楽曲のテンポを刻む信号音）を聴きながら歌うんですけど、「2小節待って」って言われたとき、いつもなら「1234、1234」なのに3拍子だからなかなか入れなくて（笑）。

百田　今回は「アルバムならでは」のことが多くて、シングルだといつもサビは5人で歌うんですけど、「仮想ディストピア」はサビもパート分けがあるんですよ。1曲まるまる振り分けがあるのはシングル以外でも初めてだったし、ほかに1対4に分かれる曲とかもあって。

佐々木　なんとなく「ももクロのルール」みたいになってたことまで、けっこう変えちゃってます。

──ルールまでをも打ち破っていると。

百田　打ち破られてます。「サビは全員で歌うものだ」って体が覚えてるところもあるから、これから変えていかないといけない。

曲の世界観に自分を寄せていく

──ラップが取り入れられた曲はこれまでにもいくつかありますけど、「5 The POWER」はこれまでのラップが入った曲とは違って、全体を通してラップが主体になっていますね。

百田　「hey ロッカールーム 視線をスルー」ですよ（ドヤ顔で）。

──しかも作詞がいとうせいこうさんで、作・編曲はMUROさんというすごい顔ぶれで。

高城　あ、いとうせいこうさんは前に番組でも共演しました（2012年6月にCSテレ朝チャンネルでオンエアされた「ももいろクローバーZ特集 24時間大放送だZ!!!」の放送枠内「ジャガイモン」にて）。

──いとうさんは多方面で活躍してますけど、お2人ともジャパニーズヒップホップ界の重要人物ですよ。

高城　そうなんですか!?

佐々木　ラップはかなり本格的。レコーディングはかなり細かいところまでこだわりました。

百田　今までは「自分のキャラでそのままやって」って言われることがほとんどだったんですけど、今回は曲の世界観に自分を寄せていく感じで。ラップも今までとはぜんぜん違うと思います。大変だったー！

高城　曲を自分に寄せていくような努力はしてたけど、逆は初めてだったから難しかったね。どの曲もそうだけど、歌いながら自分の中で正解がわからなくなっていくんですよ。レコーディングスタッフに「OKです」って言われても不安が残るんです。

百田　そこはもう信頼関係だよね。最後の判断は任せるしかないっていう。

これ“も”ももクロ

──今はツアーの準備も大詰めかと思いますが（取材は3月上旬に実施）、いかがでしょうか。このアルバムを携えてのツアーとなると、やっぱり……。

佐々木　ガラッと変わります。

高城　セットリストの最初から最後まで、ちゃんと意味があって。セットリスト自体がストーリーになってるんですよ。ストーリー性があるし、世界観もしっかり作ってあるので、今までとはまったく違うライブになると思います。

玉井　振り付けも「まず、今までのリズムを捨てて」って言われました。今までのことは全部忘れて、一から考えるみたいな。最初はかなり困惑しました。

高城　知らないダンス用語いっぱい出てきたもんね。

百田　いつもは自分のソロパートとか足でリズムを取っちゃうんですけど、それすらも「世界観をつぶすから禁止」って。

──今回は衣装もおなじみのイメージカラーを捨て去っているし、アルバムのアートワークでも表情すら伺えない、ある意味かなり突き放した状態ですよね。「笑顔で元気なももクロ」が好きなファンの中には違和感を感じる人もいるかもしれない。そこに対する不安はないですか？

高城　これもももクロだから、全部トータルで受け止めてほしいです。

──今回はこういう世界観だったけど、今後またさらに大きく変わるかもしれないと。

百田　いやもうぜんぜん変わっちゃうと思います。

玉井　もともと「和」をモチーフにしてたグループというのがもはや嘘みたいで（笑）。あの頃はずっと和で行くと思ってたんですけど、今は5次元まで来ちゃった（笑）。

佐々木　5次元をモチーフにしたアイドル（笑）。

玉井　5次元まで来ちゃったら、あとはもっと変わるしかないと思うんですよ。

──何もなかったかのように3次元に戻る可能性もある（笑）。

佐々木　やっぱ帰ろうかって（笑）。

高城　でもどんどん新しくなってくことに変わりはないんで、期待はしててほしいなと思います。

百田　今のももクロを、今しかないこのももクロを常に楽しんでほしいです。今はこんなももクロだけど、次はまた違うももクロになるから、そのときどきのももクロを見てほしいなって。今はこの5次元の世界を存分に味わってもらいたいですね。