音楽ナタリー Power Push - 宮沢和史

集大成を生んだ旅とその行く末

宮沢和史がベストアルバム「MUSICK」(ミューシック)をリリースした。

THE BOOM解散後初リリースとなる本作は、単なるベストセレクションとは異なり、既発曲に加え新曲3曲と新録セルフカバー7曲も収録した“現在の宮沢和史”をうかがうことのできる1枚。新録曲はいずれも原曲より深く歌にフォーカスしたアレンジに仕上がっている。

音楽ナタリーでは宮沢にインタビューを実施。現在の胸の内と、見据えている今後について存分に語ってもらった。

取材・文 / 安東嵩史 撮影 / 佐藤航嗣(TRON)

 
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自分にとっての集大成

──ベストアルバムと銘打っていますが、本作には新曲や再録曲も収録されています。ただのベスト盤、という感じではないですよね。

宮沢和史

そうですね。僕は1997年にソロ活動を開始して以降、「宮沢和史」はもちろんMIYAZAWA-SICKやGANGA ZUMBAといったバンドでも活動してきました。今回はそうした「THE BOOMのボーカリストではない宮沢」の歩みをまとめた、自分にとっての集大成と言える作品に仕上げようと思ったんです。

──THE BOOMの解散後初のリリース作品だということは意識されましたか?

THE BOOMのときは僕が作詞作曲の多くを手がけつつも最終的にはメンバー4人で相対的に検討して楽曲を仕上げていたし、自分はバンドのフロントマンであるという意識でいたので、心の赴くままに音楽家としてやりたいことをやりきるソロとは少し考え方が違っているんです。だから今回はあくまでソロの軌跡を1つの形にするという感覚でいました。

──ソロの宮沢さんは、もはやカテゴライズが不可能なくらい多種多様な音楽や活動形態を採り入れてきましたしね。

僕はソロシンガーでもあり、多国籍バンドのフロントマンでもあり、朗読詩人でもあった。自分のソロ活動は世界のあらゆる場所で、あらゆる形で歌を届ける旅のようなものだったと思います。だから今作はその音楽の旅から一旦帰還して、各地で仕入れてきたお土産を広げながら旅の話をするようなアルバムになったんじゃないかな。

“作らせてもらった”歌

──「MUSICK」というタイトルについてお聞きします。これまで「AFROSICK」「MIYAZAWA-SICK」など、宮沢さんの一連の作品に登場してきた「SICK(病)」という言葉がここにも使われていますね。

タイトルに関してはいろいろ考えてみたんですが、シンプルにこれまでの流れを汲んだものに落ち着きました。「音楽病」というような意味の造語なんですが、端的に僕は音楽の病に取りつかれてここまできた人間なので。

──自分で道を選んだというよりは、「取りつかれてここまできた」という感覚があるんですね。

宮沢和史

そうですね。この作品を作るにあたって、改めて「自分はなんでこんなことをしてるんだろう」と考え直してみたんです。もちろん、ミュージシャンになりたくて山梨から上京したのは自分だし、それから25年以上ずっと音楽を作ってきたのも、紛れもなく自分です。ですが、最初からそのキャリアを計画したり計算したりしてきたわけでもなければ、当初ぼんやりと思い描いた通りの自分があるわけでもない。スカやニューウェーブに影響を受けた音楽をやっていたはずが、沖縄、アジア各国、そしてブラジルへと、音楽を始めたときには想像もつかなかった場所を旅して、まったく予想外の人生を歩んでいる。どこに流れ着くかなんて、自分の意志ではどうにもならないんですよね。

──確か以前「島唄」について「この曲を作って」ではなく「この曲と出会って」と表現していましたよね。本作に収録されている楽曲も、ご自身の意図や自意識を超えたところから生まれてきた音楽であると考えているんでしょうか。

そうですね。音楽の旅を続けながら、世界中で数えきれないほどの人と出会ってきました。僕の歌は、そういう人たちの顔を思い浮かべながらギターを爪弾いているうちにできたものが多いんです。例えば歌詞の上では自分のことを歌っていても、自分のために作ったものはない。すべての歌に対して“作らせてもらった”という意識があります。それに、そういう音楽を続けてこられたのは本当に幸せなことだったと思っています。

すべての曲に思い入れがある

──今作では宮沢さんが多彩なキャリアの中で制作してきた曲を、豪華ゲストとともに新たに録音しています。

旅の途中で出会った音楽家たちと作っていくというコンセプトは、最初から頭にありました。お互いを意識しながらそれぞれにキャリアを重ねてきた最高の仲間たちですし、人間として尊敬できる方々でもあるので、とても楽しかったですね。

──印象に残ったコラボレーションを挙げるとしたらどれでしょうか?

まずは新曲の「Primeira Saudade」かな。これはGANGA ZUMBAのメンバーでもあるブラジルのピアニスト、フェルナンド・モウラに生まれた娘さんのために彼と2人で作った曲で、僕がブラジル音楽にどっぷり浸かっていた頃にジャバチーダというアコースティックユニットを一緒に組んでいたギタリストの笹子重治さんとぜひ一緒にやりたいと思ったんです。

──THE BOOMの楽曲のセルフカバーとなる「風になりたい~with Ska Lovers~」では、尊敬するMUTE BEATのメンバーからなるDUBFORCEと共演しています。

宮沢和史

僕にとって彼らは昔から別格の存在でした。朝本さんが事故に遭われたあと「Asamoto Lovers Aid」というライブイベントで客演させていただいたんですが(参照:朝本浩文の盟友集結、リキッドでエール送る)、とにかく勉強になることばかりで。そこでのいい雰囲気を楽曲に持ち込めたと思っています。ほかにも、高野寛くんと新たに作った「形」では、20年以上いつも近しいところでともに歩んできた彼と一緒に見てきた風景を歌に閉じ込めることができました。そして石川さゆりさんに提供した「さがり花」では山弦、自分のソロキャリアの中でとても大切な曲である「遠い町で」は塩谷哲さんといった素晴らしい音楽家たちともやれました。すべての曲にそれぞれの思い入れがあります。

ベストアルバム「MUSICK」 / 2015年12月2日発売 / よしもとアール・アンド・シー
初回限定盤 [CD2枚組+ブックレット] / 4860円 / YRCN-95250~1
通常盤 [CD2枚組] / 3780円 / YRCN-95252~3
DISC1 収録曲
  1. The Drumming[作詞・作曲・編曲:宮沢和史]
  2. SPIRITEK

    [作詞:高橋佐代子、Danny Browne/作曲:宮沢和史]

  3. シェゴウ・アレグリア! ~歓喜のサンバ~

    [作詞・作曲:宮沢和史]

  4. DISCOTIQUE[作詞・作曲:宮沢和史]
  5. E TUDO TAO MENOR[作詞:Lenine/作曲:宮沢和史]
  6. Primeira Saudade

    [作詞:宮沢和史/作曲:Fernando Moura/編曲:笹子重治]

  7. 世界でいちばん美しい島 ~ウチナーグチver.~

    [作詞・作曲:宮沢和史/沖縄口訳詞:上原直彦/編曲:BEGIN]

  8. あの海へ帰りたい[作詞・作曲:宮沢和史]
  9. Perfect Love[作詞・作曲:宮沢和史]
  10. 抜殻[作詞・作曲:宮沢和史]
DISC2 収録曲
  1. WONDERFUL WORLD[作詞・作曲:宮沢和史]
  2. ちむぐり唄者[作詞:平安隆 / 作曲:宮沢和史]
  3. シンカヌチャー

    [作詞:宮沢和史、我如古より子、平田大一 / 作曲:宮沢和史]

  4. さがり花[作詞・作曲:宮沢和史 / 編曲:山弦]
  5. 幸せゆき

    [作詞・作曲:宮沢和史 / 編曲:山弦、ストリングスアレンジ:土屋玲子]

  6. [作詞:宮沢和史 / 作曲:高野寛 / 編曲:高野寛、ストリングスアレンジ:土屋玲子]

  7. 遠い町で

    [作詞・作曲:宮沢和史 / 編曲:塩谷哲、ストリングスアレンジ:土屋玲子]

  8. 楽園

    [作詞:宮沢和史、大宮エリー / 作曲:宮沢和史 / 編曲:笹子重治]

  9. 風になりたい ~with Ska Lovers~

    [作詞・作曲:宮沢和史 / 編曲:DUBFORCE + 伊藤直樹]

  10. 足跡のない道[作詞:宮沢和史 / 作曲:宮沢和史、高野寛]

bonus track (初回盤のみ収録)

  1. 有るがままに(朗読)[詩・朗読:宮沢和史]
参加ミュージシャン

上妻宏光 / 新垣健 / 伊藤直樹 / 加瀬達 / カナミネケイタロウ / GANGA ZUMBA(宮川剛、今福健司、tatsu、高野寛、Fernando Moura、土屋玲子、Luis Valle、大城クラウディア) / 国場幸孝 / 笹子重治 / 塩谷哲 / 末吉ヒロト / 鶴来正基 / ドン久保田 / 服部正美 / BEGIN(比嘉栄昇、島袋優、上地等) / 前濱YOSHIRO / 屋敷豪太、増井朗人、Watusi、エマーソン北村、巽朗、會田茂一(from DUBFORCE) / ヤマカミヒトミ / 山弦(小倉博和、佐橋佳幸) / よなは徹(五十音順、敬称略)

宮沢和史 コンサートツアー 2016「MUSICK」
2016年1月11日(月・祝)
神奈川県 Yokohama Bay Hall
2016年1月15日(金)
福岡県 DRUM LOGOS
2016年1月17日(日)
沖縄県 ミュージックタウン音市場
2016年1月20日(水)
愛知県 DIAMOND HALL
2016年1月22日(金)
大阪府 Zepp Namba
2016年1月24日(日)
広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
2016年1月31日(日)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
宮沢和史 “祝50歳”スペシャル・パーティー
2016年1月18日(月)
沖縄県 みやんちSTUDIO&COOFFEE
GANGA ZUMBA Festa Eterna ~フェスタ エテルナ~
2016年1月28日(木)
東京都 LIQUIDROOM
宮沢和史(ミヤザワカズフミ)
宮沢和史

1966年山梨県甲府市生まれのシンガーソングライター。THE BOOMのボーカリストとして1989年にデビューし、2014年に解散するまでに14枚のオリジナルアルバムをリリース。一方でソロ名義でも5枚、GANGA ZUMBAとしてアルバムを2枚発表している。2015年12月には過去のナンバーや新曲、新録のセルフカバー曲などをパッケージしたベストアルバム「MUSICK」をリリース。2016年1月にGANGA ZUMBAのメンバーとともにソロツアーを実施する。