ナタリー PowerPush - 宮野真守

なんでも大好き、だからこだわる

夜神月で「キャラクターを生きる」ことを知った

──これまでたくさんのキャラクターを演じられてきましたが、印象に残っているキャラクターはいましたか?

印象に残っているというか、声優という仕事を再認識するきっかけになったのが「DEATH NOTE」という作品で演じた夜神月(やがみらいと)というキャラクター。彼を演じたことで、声優の仕事は「キャラクターを演じるのではなく、生きるんだ」と気付かされたんです。

──というと?

月は本当に歴史に残るようなダークヒーローではありますが、確固たる信念を持って生きていた。だから僕も彼の考え方や価値観、正義感を信じ、彼の人生を生きるつもりで演じようと。そしたら自然に気持ちの上でもシンクロして……月は最後、とても無様で壮絶な死を迎えるんですけど、シンクロしすぎて「そのシーンを終えたら、僕は月と一緒に死んでしまうんじゃないか」っていう得体のしれない恐怖心に襲われたんです。

──よく俳優さんは「役が憑依する」とおっしゃいますけど、声の演技でもそんなふうにシンクロしてしまうんですね。

ただずっとシンクロしちゃうと、今度は別のキャラを演じるときの切り替えが難しくなるので、キャラクターを引きずりすぎないようにも心がけています。ギアをこう、切り替えるような感じで。

──役作りというのは、声優さんご自身でしていくものなんでしょうか。

そのときどきですね。自分でプランを構築したり、指示を明確にいただいたり。アニメは現場のみんなで作っていくものなんです。物語があって、監督がいて、音響監督がいて……何より僕が演じる前から、キャラクターは既に素敵なお芝居をして、素敵な表情を見せてくれているので。僕もしっかり作品の一員になれるよう、心がけています。

声優も歌手活動も100%の力で

──アーティストデビューは2008年のシングル「Discovery」でしたが、リリースすることになったきっかけは?

2007年に出演したテレビアニメ「鋼鉄三国志」の音楽ディレクターさんに声をかけていただいたのがきっかけですね。そのディレクターさんとは今でも一緒に仕事をしている、とても信頼している方なんですが、その方が「一緒に歌をやってみないか」と誘ってくれて。僕の歌に対する姿勢や気持ちをとてもよく理解してくれて、最初の曲選びの時点から参加させてもらったんです。音楽をやっていく楽しさを感じさせてもらいました。

──自分名義の歌というのは、それまでのキャラクターソングとは違いましたか?

キャラソンはキャラクターのために作られた、既に完成した曲があって。僕は歌詞を見たり曲を聴いてキャラクターの気持ちで歌う、最後の息を吹き込むというような感じです。キャラクターの思いを伝えるのが役割なので。でも僕自身の音楽活動は、自分をストレートに表現できる、自分の思いを伝えられる場所だと思っています。宮野真守自身を色濃く出せる場所というか。

──声優としてのこだわりも先程聞かせていただきましたが、音楽活動についてもかなりこだわってらっしゃいますよね。

何事も妥協したくなくて。音楽もただ「好きだ」で終わらすのではなくしっかり突き詰めて、聴いてくださった方に楽曲の素晴らしさや、歌に込めた思いを感じてもらいたい。だから、しっかり作ってお届けしたいと思っています。

──もっとどちらかをメインに活動することもできたと思うんですけど、宮野さんは声優としてもアーティストとしても、両方100%って感じですよね。

ありがとうございます。やらせていただける限りは、できてるかどうかはわからないですけど100%の力で臨みたいです。それに、全力でやることがどちらの仕事にも良い影響を及ぼすと思っています。例えば、初めて一緒に楽曲制作をするクリエイターの方から「言葉を大事にしますね」って言っていただけたり。それは役者をやっていることが音楽活動にも表れてるんじゃないかなって思います。音楽的感覚も、キャラソンだったりセリフを言うときのリズムに必要になってくることもあって、相乗効果だなって思いますね。

「なんでも好き!」が高じたステージ作り

──リスナーとしてはどんな音楽を聴いてきたんですか?

子供の頃はヒーローソングやアニソンが大好きで。小学6年生あたりになると小室ファミリーを聴き始めて、僕はglobeがめっちゃ好きでした。中学に入ってからはゆずにハマって、お小遣いでハーモニカ買ってゆずの真似事をしてみたり、物置にあった父のギターを引っ張りだして弾いてみたり。中学の後半あたりではバンド系も聴くようになりましたね。

──すごく親近感の湧く流れです(笑)。

あはは(笑)。高校に上がってからはラウドロックとかパンクとかを聴き始めて、友達とコピーバンドをやって文化祭で披露したりしてました。その後、ダンスミュージックやR&Bに出会ってそっちの方向に惹かれていって……。で、今はK-POPが好きです(笑)。

──なんでも押さえてますね(笑)

なんでも好き派なんです(笑)。

──でも確かに宮野さんのライブを観ると、「なんでも好き」っていうのもわかります。ステージのセットや衣装、もちろん歌やダンスといったパフォーマンス面もすごく凝っていて、さまざまな要素が詰まっていますよね。ああいった演出のアイデアはどこから来るんでしょうか?

うーん……なんでしょうね。アイデアがあふれてくる。自然と出てきちゃうんでしょうね……。なんて(笑)。

──(笑)。

……ってのはまあ冗談として(笑)。デビューさせていただいた当初から、僕はライブができるアーティストでいたいという強い思いがあって。だから楽曲制作においてもライブで盛り上がれる曲、ライブを想定した曲作りを心がけてます。いろいろ詰め込んでるのは、確かに「なんでも好き!」が高じてるんじゃないかなと思いますね。音楽はもちろん、お笑いもお芝居も好きなので、いざ自分のライブを作るとなったとき、やりたい衝動がいっぱいあふれてくるんです。でもいざそれを実現させるとなると大変で、やりたいだけじゃできないってこともすごく感じました。自分だけじゃ形にできないことも、周りのスタッフが支えてくれるから実現できているなと強く感じています。最初はぼんやりとしていた衝動も、ライブを重ねるごとに具体的に見えてくるようになりましたね。

──そこまでこだわりがあると、作曲やアレンジまで自分でやってみたいという思いもあるのでは?

そうですね、チャレンジしたいっていう気持ちはあります。作詞もそうですしライブの演出についてもそうですが、できないことにチャレンジしていきたい気持ちは常に大事にしています。ただ自分がプレイヤーであるということへの誇りも持ってますし、自分では生み出すことができないからこそ、制作やプロデュースしてくださる方々への強い憧れと尊敬の思いがあるので、簡単に「やります」とも言えないです。チャレンジは常にしていきたいですが、焦らず良い形で納得できるタイミングが来たらやってみたいかな。

宮野真守(みやのまもる)

1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でメジャーデビュー。2009年3月には1stアルバム「BREAK」を発表した。ライブ活動も積極的に行っており、2012年5月には神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにてワンマンライブ「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2012~FIGHTING!~」を大成功に収めた。2012年11月14日には通算8枚目となるニューシングル「ULTRA FLY」をリリース。