音楽ナタリー Power Push - みきとP

自分の声とボーカロイド それぞれに感じる可能性

みきとPがニューアルバム「MIKIROKU」を11月18日にリリースする。

7月発売のシングル「きゅりあす」より、VOCALOIDを使用せず本人歌唱による楽曲を発表しているみきとP。今作「MIKIROKU」は、「いーあるふぁんくらぶ」「バレリーコ」といったボカロ曲のセルフカバーや、「あのこサーティースリー」といったシングル曲などすべて本人歌唱の楽曲で構成されている。音楽ナタリーではみきとPへのインタビューを実施。自身がマイクを取って楽曲を発表するようになった理由や、VOCALOIDに今感じること、ネット上で展開されている音楽シーンの現状などを聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 佐藤類

曲の舞台は愛すべき街

──みきとさんの「きゅりあす」のミュージックビデオの舞台が下北沢だったこともあり、今回の特集の撮影も下北沢で実施しました。みきとさんにとって思い入れが深い土地なんですか?

そうですね。20代前半の頃はよくライブをやった場所ですし、東京に出て来て最初に住んだのがこの辺りでした。友達も多かったし、井の頭線をよく使っていたんですよ。

──みきとさんの楽曲って、特定の土地を舞台にしたものが多いですよね。「世田谷ナイトサファリ」や「京都ダ菓子屋センソー」は曲名に土地の名前が出てますし、「いーあるふぁんくらぶ」は神戸に実在する中国語教室でのやり取りが歌になっています。

あ、ホントだ。たぶん実名を出すことでその土地ごとの匂いや、街の雰囲気を瞬時に醸し出せるからだと思います。それに僕はいろいろ知っている場所でも聴く人によっては全然知らない土地だったりするから、曲がきっかけで僕の愛すべき街に興味を持ってもらいたいなという気持ちがあるのかもしれないですね。

顔を出していないことに違和感があった

──今年7月にリリースしたシングル「きゅりあす」からご自身で歌唱する楽曲を発表しているわけですが、VOCALOIDを使用するのではなく、自分で歌うことにしたのは何がきっかけだったのでしょうか?

みきとP

「ETA」(「EXIT TUNES ACADEMY」の略称)などのイベントで歌っていくうちに自分の声の伸びしろをちょっと感じて、そういう作品を出すのも面白そうだなと思ったんです。ただ、今後はシンガーとしてだけやっていこうと思っているわけじゃなくて、単に今の時期は自分で歌ったものを出したいからやっている感じですね。僕はいろいろやりたい人間なので、ライブもやりたいし、曲もどんどん作っていきたい。

──本人歌唱ということだけではなく、イベント以外で顔出しをしてこなかったみきとさんがアーティスト写真やMVで顔を出すようになったのも驚きました。

そもそも自分が顔を出していないことに違和感を感じていたんです。僕は今後もずっと音楽をやっていこうと思っているし、「逃げも隠れもしませんよ」という意味を込めて正体をさらけ出した感じです(笑)。それに伴って、自分の声で音楽を伝えるのはタイミングとしてはよかったと思います。

──ご自身で歌うようになって何か変わったことはありましたか?

これまではVOCALOIDを使っていても、自分のパーソナルなものを曲に込めているつもりだったんですよ。でも自分で歌うようになった「きゅりあす」からは責任感がもっと強くなったというか。今まで初音ミクに歌わせることで1枚フィルターを噛ませていたんだなってことに今回、ようやく気付けたんです。VOCALOIDに歌ってもらうことで羽目を外せたり、やりやすいこともあったんだけど、自分の言葉と声で歌うことでより重みのようなものを感じるようになりましたね。

──VOCALOIDを使う曲とご自身が歌う曲、意識的に切り替えてることはありますか?

やっぱり歳相応のことを歌っていかなきゃいけないな、みたいな感覚はありますね。自分の等身大を歌おうって気持ちは以前から変わらないんですけど、よりその感覚が強くなりました。その一方で自分の枠を飛び出したいなってことも考えていて。自分で歌うことがわかっていると、どうしても枠を用意してしまうんです。その枠に捉われないようにしようっていうのは、今回自分の中で意識したところですね。

ニューアルバム「MIKIROKU」 / 2015年11月18日発売 / EXIT TUNES
限定盤 [CD+DVD] 3024円 / QWCE-00526
通常盤 [CD] 2484円 / QWCE-00527
CD収録曲
  1. きゅりあす
  2. 夕立のりぼん
  3. 刹那プラス~Woody Arrange~
  4. あのこサーティースリー
  5. バレリーコ
  6. クノイチでも恋がしたい / with みきと会
  7. Telephone Juice / with バグってるひと
  8. おもふといふ
  9. 京都ダ菓子屋センソー
  10. 夏の半券
  11. いーあるふぁんくらぶ ~ぼっち多重録音Ver.~
  12. Hanabi
  13. 走馬灯
  14. ぼっち幸福論
  15. サブトラの最終定理 / みきもじゃ(みきとP×大柴広己[もじゃ])※通常盤のみ
DVD(限定盤のみ)
  • きゅりあす MV
  • バレリーコ MV
  • ぼっち幸福論 MV
  • おもふといふ MV
  • 刹那プラス~Woody Arrange~ MV
  • 京都ダ菓子屋センソー MV
  • メイキングofぼっち幸福論
  • おまけ映像
みきとP「『MIKIROKU』発売記念LIVE "MIKIROCK BYPASS"」

2015年12月27日(日)東京都 下北沢GARDEN
OPEN 16:15 / START 17:00

コラボグッズ販売情報
ヴィレッジヴァンガードFREAKS渋谷パルコ×みきたまごとゆかいな仲間たち

販売期間:2015年11月17日(火)~12月27日(日)
販売場所:東京都 ヴィレッジヴァンガードFREAKS渋谷パルコ

みきとP(みきとぴー)
みきとP

VOCALOIDを使用したオリジナル曲を動画サイトで発表するボカロP、シンガー。「小夜子」のような心を揺さぶるシリアスなギターロックから「いーあるふぁんくらぶ」をはじめとするアッパーなディスコポップまで、幅広いタイプの作品を発表している。2013年4月に初音ミクをフィーチャーした初のオリジナルアルバム「僕は初音ミクとキスをした」をリリースした。2015年7月にはみきとP自身が歌唱する楽曲「きゅりあす」をシングルとして発表。11月に本人歌唱曲のみで構成されたアルバム「MIKIROKU」をリリースする。また12月には東京・下北沢GARDENにてワンマンライブ「『MIKIROKU』発売記念LIVE "MIKIROCK BYPASS"」の開催が決定している。