音楽ナタリー Power Push - 丸本莉子×手島いさむ(ユニコーン、電大)

世代を超えた2人の音楽家をつなぐもの

今年6月に配信シングル「ココロ予報」でメジャーデビューしたシンガーソングライター・丸本莉子が、12月16日に3作目の配信シングル「『つなぐもの』-EP」を発表した。

音楽ナタリーでは、ともに広島県育ちで、これまでに多数のライブ共演を果たしている丸本と手島いさむ(ユニコーン、電大)の対談を企画。大先輩である手島から丸本への助言を交えながら、世代が異なる両者に出会いからこれまでのエピソード、そして今後のビジョンを語ってもらった。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 福本和洋

90年生まれの丸本莉子と、93年に解散したユニコーン

手島いさむ(ユニコーン、電大) 今日はもう飛び道具として来ましたよ、僕は。

丸本莉子

丸本莉子 いやいや(笑)。

──お2人はライブで何度も共演されていますが、どのような縁でつながったんですか?

手島 知り合いの方に「こんなシンガーソングライターの子がいるんだけど」って教えていただいたのがそもそものきっかけで。同じ音楽家としてまずは素直に興味を持ったんだけど、いろいろ話を聞いてるとどうもね、僕がユニコーンを組む前にやってたバンドで一緒だったヤツの世話になってたらしく。

丸本 そうそう。私がボイトレを受けてた先生が手島さんと一緒にバンドをやられてたんですよね。

手島 当時、あいつはボーカルじゃなかったんだけど、俺が配置転換をしたんだよ。彫りが深いからフロントマンになれと。そんなことを言ったくせに俺はパッとそのバンドを辞めてユニコーンを組んじゃったというね(笑)。でも、その人はその後もボーカル人生を歩んでて、莉子ちゃんを教えてたと。そんな縁があったから、実際にお会いして「何か一緒にやれたらいいよね」っていう話をするようになったんです。それが2年くらい前かな。で、僕がやってたアコースティックライブにゲストとして出てもらったりするようになって。

丸本 そうですね。最初に手島さんにお会いするときはめっちゃ緊張しましたよ。私は1990年生まれなので、93年に解散しているユニコーンさんをリアルタイムでは聴いてなかったんですけど、お父さんはまさにユニコーン世代ですからね。当然その存在は知っているじゃないですか。しかも復活されるときはもう広島がすごい騒ぎになってましたから。そんな雲の上の存在の方とお会いできるんだ!と思って。

手島 薄ーい雲やったろ? すぐ地上に降りてくる(笑)。

丸本莉子

丸本 いやいや(笑)。でも、すごく優しく、気さくにお話ししてくださったので安心しました。私にとってはもうお兄さんみたいな存在というか。

手島 お兄さんっていうかお父さんでしょ。でも実際のお父さんは俺より若いらしいっていうね(笑)。莉子ちゃんは最初に会ったときと比べるとだいぶ垢抜けたかな。今を10とするならば、当時は4くらいの田舎な感じだった。最近はやっと広島から静岡あたりまで来たなっていう。

丸本 あははは(笑)。まだ東京までは来れてないんですね。

手島 でもそこが逆にいいんですよ。素朴さというかね。それは大事にしてほしいなって。伸び代もまだまだあるし。俺らはもうね、伸び代どころか人生もあんまないから。「どうするよ?」っていう(笑)。

丸本 いやいや、まだ半分じゃないですか。人生折り返したばっかり。

手島 半分はとっくに過ぎてるでしょ! ここから折り返しっていったら、104歳まで生きなきゃいけないよ(笑)。

10年後にも歌える曲

──お2人で音楽の話をすることも多いんですか?

丸本 そうですね。いろいろ教えていただいてます。

手島 音楽をやっていく上での姿勢についてはいろいろ話すかな。長く続けるためにはどうしたらいいか、こうしたらダメになるよね、みたいな。俺らの後ろには消えていった人たちがたくさんいて死屍累々ですからね。だからまずは生き残っていくことが大事やぞっていう。

丸本 10年後にも歌える曲を作りなさいとはよく言われますね。手島さんと初めてお会いした当初は、そこを考えずに作っていた曲が多かったので。

手島いさむ

手島 曲の中身もそうだし、キーとかも大事だからね。レコーディングではなんとでもなるけど、ライブで歌えなかったらどうしようもないわけだから。

丸本 キーのことは特に言われました。当時はけっこう高めのキーで歌う曲が多かったんですよ。

手島 奥田民生なんかは昔から人気のある曲、「大迷惑」にしても「Maybe Blue」にしても、50歳超えた今もキー下げてないからね。それはやっぱり本人が考えて、責任を持ってやってるからなわけで。莉子ちゃんにもそこはちゃんと考えてほしいなって思うんだよね。まあでも現状、ずっと歌い続けられるであろう曲をちゃんと作ってるから、そこはすごくいいなって思ってますけどね、僕は。

丸本 ありがとうございます。今年メジャーデビューしてすごく感じたんですけど、ここからが本当の始まりだなって思うんですよ。高校2年生のときに音楽を志した当時は、メジャーデビューというものにものすごく華やかなイメージを持っていて。でも実際はそのイメージとはまったく違ったというか。音楽でずっと食べていくことは本当に大変だっていうことを実感したし、手島さんにもそういったことを常に教えていただいているので、力を抜かずここからもっとがんばらなきゃなってすごく思うようになりましたね。

配信シングル「『つなぐもの』-EP」/ 2015年12月16日配信/ Victor Entertainment / AndRec / 700円 / 期間限定価格(12月16~27日)500円
「『つなぐもの』-EP」
収録曲
  1. つなぐもの
  2. がんばる乙女~Happy smile again~
  3. つなぐもの(Instrumental)
  4. がんばる乙女~Happy smile again~(Instrumental)
「丸本莉子ワンマンLIVE『丸本ん家(ち)へようこそ~ぷれぜんとふぉーゆー2015~』

2015年12月19日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA

丸本莉子(マルモトリコ)
丸本莉子

広島県出身のシンガーソングライター。高校生の頃からギターの弾き語りを始める。高校卒業後はプロを目指して上京し、全国300カ所以上でライブを実施。地元である広島県安芸太田町のサポートソング、テレビ番組やCMのキャンペーンソングを数多く手がけて注目を浴びる。2015年6月に「ココロ予報」のハイレゾ音源を配信リリースしメジャーデビュー。8月に2作目の配信シングル「やさしいうた」、9月に1stミニアルバム「ココロ予報~雨のち晴れ~」を発売する。11月には高知県観光特使に就任。12月に3作目の配信シングル「つなぐもの」を、2016年3月には2ndミニアルバム(タイトル未定)をリリースする。

手島いさむ(テシマイサム)
手島いさむ

愛知県生まれ、広島県育ちのギタリスト。1986年にユニコーンを結成し、1987年にメジャーデビューを果たす。1993年のユニコーン解散後はBIG LIFE、islandsといったバンドで活動し、2006年には初のソロアルバムを発表する。そして2009年にユニコーンを再結成。2012年にはユニコーンの川西幸一(Dr)、EBI(B)と電大を結成する。電大としては2015年4月に4thアルバム「Δ4th」を発売し、2016年1月にライブツアー「Hello 2016!Yes we can make it.」を開催する。