ナタリー PowerPush - MAGUMI AND THE BREATHLESS / MAGUMI×ハヤシ(POLYSICS)
いつまでも“ニューウェイブ”であること
お互いのバンドの共通点は“唯一無二”
MAGUMI さっき俺、POLYSICSのことを唯一無二の存在だって言ったけど、LÄ-PPISCHのことも同じように唯一無二の存在だと思ってるんだよね。昔から俺は人と同じことをするのはダサいって思ってて、だから誰もやってないことをやりたかったの。その感覚のことをニューウェイブって呼んでたんだよね。
ハヤシ 確かに。もともと自分はニューウェイブっていうジャンルはあとで知ったんですけど、最初はDevoとかXTCとかを聴いてピコピコしてないテクノっぽいのがニューウェイブなのかなって思ってたんですよ。でものちにその年代のいろいろ枝分かれしたものを聴いていったら2トーンもそうだし、インダストリアル、ノイズすべてがニューウェイブとしてくくられていて、MAGUMIさんがおっしゃっていたように周りと違うことをやってやろうぜっていう衝動で生まれる音楽なんだなってわかって、俺ってなんてカッコいいジャンルの音楽を聴いてるんだろうなと思ったんです。
MAGUMI ロンドンパンクが1年で終わって、そのあとからはみんなが独自の音楽をやっていくようになって、そこからニューウェイブが広がっていったんだよね。そういうところが非常に面白いなと思ってたよ。で、俺たちはそれをディスコで聴いていたもんだからさ、どうしてもミクスチャーされるんだよね。俺たちがデビューする前、ライターの人たちからよく何がしたいかわからないバンドだよねって言われてたの。でも俺は「ハードロックが好きだからハードロックだけをやる」っていうほうが不思議でたまらなかったんだよね。だってディスコでなんでもかかってて、みんなどの曲だって踊ってるのに、なんで自分たちがやるときにはジャンルを決めてやんなきゃいけないんだって。Dexys Midnight Runnersだって好きだし、The Specialsだって好きだし、Blue Rondo A La Turkだって好きだったのよ。Devoだって好きだし。なんでもやらせろやって思ってたね。
ハヤシ そういう音楽がどんどん出てきた時代なんですよね、その頃って。当時の感覚を味わいたかったなと思いました。
MAGUMI その頃ナンパディスコが流行ってたんだけど、俺はそういうところじゃなくてロックとかを流すディスコに通ってたのね。そこでカッコいいのを見つけるとバンドで取り入れてみたりして。でもそれを自分たちで進化させないと面白くないかなって思ってたから、どんどんいろんなものを組み合わせたりしてたよ。LÄ-PPISCHはいろんなジャンルの新しい音楽を日本に紹介してきてフォロワー的なバンドもあとからたくさん出てきたんだけど、彼らはジャンルレスにはなりきれてなかったと思うな。
ハヤシ そうかもしれないですね。僕もLÄ-PPISCHと出会ったおかげでスカだったりファンク、あとはちょっとサイケな世界観なんかも初めて体感しました。LÄ-PPISCHのライブに行くと初めて聴くジャンルがたくさんあって驚かされるんですけど、単純に楽しいっていうところが勝ってて。それを見ていて自分もお客さんに新しいものを好きになってもらえたらいいな、伝えたいなって思うようになりました。そこはLÄ-PPISCHに出会わなかったら、芽生えなかった感覚かもしれないです。
MAGUMIとハヤシの理想
MAGUMI 今はいろんな音楽が出尽くしてて、電気以外の動力を使わないとものすごく新しいものはできないんじゃないかって思ってるんだよ、俺。だって音楽はテクノロジーの進化だったり、手法でずっと変わっていってるからさ。俺も一時期考えたのは車のエンジンで音楽を作れないかなって。アメリカのインディカーレースを観に行ったときに、本当に殺されそうなぐらいの騒音だったから、これをコンピュータでうまいことやって、エンジンの回転数でコードっぽい感じにしたらメタルよりもすごいことができんじゃないかと思って(笑)。
ハヤシ あはは(笑)。カッコよさそうですね。それをリズムにしたら現代版Art of Noiseみたいになりそうな……。
MAGUMI きっとどの方面からも苦情が来るだろうね(笑)。でもさ、ミュージシャンっていうのは面白いもんで新しい楽器買うとアルバム1枚がドンッとできちゃったりするんだよね。例えば新しいキーボードを1台買ったら、今まで聴いたことないような音がいっぱい入ってて何か閃いたりさ。
ハヤシ ああ、特にポリはそれがけっこうありますね。音色でアイデアが降ってきたりとか、そこでイマジネーションが広がってっていうのがすごく多いので。実際microKORGが出る前と出たあとでやっぱり音が変わりましたもんね。世の中の電子音楽もそうですけど、ロックにそれがエフェクター感覚で導入されて、新しいものができていったっていうのは10年前ぐらいのことでしたかね。あれは1つの革命だったと思います。
MAGUMI そうだね。ハヤシには本当自分に飽きずにどんどん新しいものに挑戦していってほしいなあ。俺の歳になるまであと15年あるからね。それ考えたらあと15年は最低でも楽しめるんだよ。
ハヤシ 今のはすごくグッと来ましたね。うれしいお言葉をありがとうございます。僕はさっそく次のMAGUMIさんのアルバムを聴きたいなと思ってるんですよ。MAGUMIさんのステージでの立ち姿が変わらないっていうのが本当にカッコいいなと思っていて、これからもカッコいいジャンプを決め続けてほしいなと思ってます。
MAGUMI 大丈夫大丈夫。俺たちは永遠の中堅なんでね。俺たちバンドブームの中心みたいに見られてるけれども、実際はその3年くらい前にデビューしてるから、デビューして2年くらいで中堅になっちゃってるわけ。だから永遠の中堅なの(笑)。
- ニューアルバム「Demonstration」
- 2014年5月14日発売 / ATSUGUA RECORDS / 3240円 / ATS-52
- 収録曲
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- Beautiful World
- Parting Dance
- Q Dub
- 死角のシルエット II
- Electric Discharge
- Demonstration
- 砂の家
- 水槽
- Abracadabra
- Back Yard
- トルコ行進曲
- Liar
- Good Bye Sunshine
- ニューシングル「Electric Discharge」
- 2014年5月14日発売 / ATSUGUA RECORDS / 1080円 / ATS-51
- 収録曲
-
- Electric Discharge
- 死角のシルエット
- Ghost Town
MAGUMI AND THE BREATHLESS
(マグミアンドザブレスレス)
MAGUMI(Vo, Tp)、永井秀樹(G, Cho)、袴塚徳勝(B, Cho)、カサマツマサヨシ(Dr)、島本亮(Key, Sax, Cho)、直江誠治(Per)からなる6人組バンド。LÄ-PPISCHのフロントマンとして知られるMAGUMIのソロアコースティックユニットにリズム隊を加えて2009年に結成された。2011年に2枚のシングルと1stアルバム「delight」をリリース。その後3年間はライブを中心に活動してきた。そして2014年5月には2ndアルバム「Demonstration」とシングル「Electric Discharge」を2タイトル同時リリースする。
POLYSICS(ポリシックス)
ハヤシ(G, Vo, Syn, Programming)、フミ(B, Vo, Syn)、ヤノ(Dr, Vo)からなるニューウェイブロックバンド。1997年、高校生だったハヤシを中心に結成。1999年にアルバム「1st P」をインディーズからリリースし、2000年にメジャーデビュー。独自の音楽性と過激なライブパフォーマンスで人気を集める一方、2003年にはメジャー1stアルバム「NEU」をアメリカでリリースし、初の全米ツアーも実施するなど海外での活動も本格化させる。2010年3月には初の日本武道館公演を実施し、初期メンバーのカヨ(Syn, Vo, Vocoder)がこのライブを最後にバンドを卒業した。以降は3ピースバンドとして活動を続け、バンド結成15周年を迎える2012年に記念アルバム「15th P」、翌年2013年10月にはミニアルバム「MEGA OVER DRIVE」を発表。2014年1月にはニューアルバム「ACTION!!!」をリリースした。
2014年5月16日更新