音楽ナタリー PowerPush - Last Note.

想定外な広がりを見せる「ミカグラ」の世界

「ミカグラ」の醍醐味は作り手の“裏切り”

──先ほど「絵空事スパイラル」のPVが公開されるとおっしゃってましたが、ほかのアルバム収録曲も、動画で公開されるんでしょうか?

ラスノ する曲としない曲があるんですけど、なるべくやっていこうかなと思ってます。PVにするならこうしたいなっていうイメージがすでにあるので、自分も楽しみなんですよ。PVを観て印象が変わる楽曲とかも出てくると思いますし。

──ちなみにいろんなメディアに「ミカグラ学園組曲」が広がっていく中で、今回のアルバムの位置付けはどういうものになるのでしょうか?

T 「ミカグラって何?」って人でも、このアルバムを聴いてもらえればミカグラ学園というものがわかるように作っているつもりです。1曲目の「overture」からして「ミカグラ学園とはこういうところだ!」って主張しているような感じだし。

ラスノ 入り口として聴いてもらえるようにしてるけど、もちろんミカグラが好きな人に聴いてもらって楽しめるアルバムにもなっています。

T そうなんです。「ミカグラ学園組曲」というシリーズをもっと深く掘り下げられるようにも作っています。要するにこれ1枚でミカグラ学園がすべて詰まってるので、入り口としての役割も、シリーズを総括する役割も持っているのがアルバムだと思っています。

──これまでのシリーズの曲を網羅していて、さらに新曲でキャラクターの新たな一面を掲示しているわけですからね。

ラスノ 最初に「放課後ストライド」を公開したとき、視聴者の方々がいろいろキャラクターの性格とかを想像してくれていたのが面白くて。それを小説なりコミックスなりで裏切っていきたいっていうのは考えていたんです。例えば二宮シグレは「放課後ストライド」公開時の印象と、小説やコミックスを読んだ後の印象でまったく異なると思うんです。こういう意図的な裏切りが成功したのはうれしかったですし、こういう作品の醍醐味かなって思っています。また今回のアルバムでシグレの印象が変わるんだろうなっていうのも楽しみですね。

アニメにはLast Note.丸出しの新曲

──いよいよ4月には「ミカグラ学園組曲」のアニメ版がスタートして、今年はLast Note.さんに注目が集まる年になるんじゃないかって思っています。

アニメ「ミカグラ学園組曲」キービジュアル (c)2015 Last Note.・株式会社KADOKAWA メディアファクトリー刊 / ミカグラ学園組曲製作委員会

ラスノ そうなるとうれしいですけどね。

T こればっかりは始まってみないとなんとも。今までのアニメの中で最低視聴率を取ってしまったらどうしようか心配しています(笑)。

──アニメのオープニングやエンディングのテーマ曲ってどうなるんですか?

ラスノ 両方とも僕らの新曲を提供します。どちらもオープニングみたいな曲になっています(笑)。ただあんまり気負わずに、いつも通り曲を書いたつもりでいます。

T そうだね。例えばテレビをつけて初めて「ミカグラ学園」を観た人が「これがLast Note.の曲か」っていうのがわかるような、“The Last Note.”な感じにしていますね(笑)

ラスノ Last Note.丸出しな感じです(笑)。

──すごく楽しみです。ちなみに声優のオーディションを見ていてどうですか? 自分が作ったキャラに声が当てられていくわけですが。

ラスノ 恥ずかしかったですね。小説で書いたセリフが読まれるんで(笑)。

T 自分の書いたやつを朗読されるんだもんね(笑)。

ラスノ もともと1巻の頃なんて、アニメになるなんて思いもしてなくて、声に出して読まれるとは想定していないセリフだったりするんですよ。オーディションなんで100人近い人たちが次々それを読んでいくんで、「もうやめてくれ」って(笑)。でもすごい合ってる声優さんに決まったのでぜひそのへんも楽しみにしてもらいたいなと思います。

──今回のアルバムリリース後は、初めてサイン会や握手会をやられるんですよね?

ラスノ そうなんですよ。今回が初なんです。

T お客さんが1人だったらどうしよう。

ラスノ 夢に見ますからね。ポツンと自分たちだけっていうのを。だから楽しみよりも、不安のほうが大きいですね。

──ちなみに今後Last Note.がライブをすることは考えているんでしょうか?

ラスノ 今までやらないって言い続けてきたんですけど、やったほうがいいのかなと最近は思い始めてきました。でもそういうこと言っちゃうと期待されちゃうんで、やっぱやらないって言っといたほうが……。

T どういうライブにしようかっていうのもあるからね。僕がギターを弾くから、ラスノさんは歌うとか。

ラスノ 僕が人前で歌う時は死ぬときです! まだ死にたくないので、やっぱりライブはやらない方向で(笑)。

──最後にLast Note.のお2人の今年の展望を教えていただけますか?

ラスノ アルバムが出て、アニメが4月から始まって、作品にひと区切りついちゃうのかなって思う人もいるかもしれないんですが、物語はこれからもどんどん展開していきます。キャラも登場する予定ですし、それに伴って当然新曲も作ります。これからも興味のある方は追いかけてきてほしいと思っています。アルバムの収録曲も絵を付けてニコニコ動画で公開していきたいので、動画を楽しみにしてくれる人にも楽しんでほしいですね。

T 今年は「ミカグラ」だけではなくて、それ以外のオリジナル楽曲にも力を入れていきたいと思っています。なのでこれからもLast Note.を見捨てずに応援してもらえたらうれしいです。

ニューアルバム「ミカグラ学園組曲」2015年2月25日発売 / Sony Music Records
初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / SRCL-8741~3
通常盤 [CD] 2600円 / SRCL-8744
CD収録曲
  1. overture
  2. 我楽多イノセンス
  3. 有頂天ビバーチェ
  4. 絵空事スパイラル
  5. 花吹雪リフレクト
  6. 無気力クーデター
  7. 赤裸々キャンディ
  8. 十六夜シーイング
  9. 不条理ルーレット
  10. 革新的ヒロイズム
  11. 放課後ストライド
初回限定盤DVD収録内容
  1. 放課後ストライド
  2. 無気力クーデター
  3. 有頂天ビバーチェ
  4. 我楽多イノセンス
  5. 十六夜シーイング
Last Note.(ラストノート)

Last Note.とLast Note.Tの2人からなるボカロPユニット。ハードなギターサウンドによるストレートなロックチューンを得意とする。2010年に動画サイトへの初投稿作「ワンステップ・レイヤード」がVOCALOID殿堂入りを果たし、その後投稿された「セツナトリップ」などの楽曲も絶大な支持を受けた。2012年末にニコニコ動画で発表した動画「放課後ストライド」を皮切りに、同じ世界を描いたシリーズ「ミカグラ学園組曲」を始動。2013年7月には小説「ミカグラ学園組曲1 放課後ストライド」が、同年11月にはコミック「ミカグラ学園組曲1」が発刊され、メディアミックス作品として人気を博していく。2015年2月にはこれまで発表した関連楽曲と新曲を収録したアルバム「ミカグラ学園組曲」をリリース。同年4月にはアニメ「ミカグラ学園組曲」のオンエアがスタートする。