ナタリー PowerPush - Last Note.

謎多きボカロPユニットの活動の裏側

本格的なロックサウンドと“青春・思春期”を想起させる歌詞の世界によって、ボカロシーンの中で際立った存在感を示しているLast Note.が、メジャー1stアルバム「セツナコード」をリリース。初期の名曲「ノイジーラバーソウル」、ニコニコ動画で100万回再生を超えた「セツナトリップ」「恋愛勇者」、さらにアルバムのために書き下ろされた新曲を含む全19曲入りの本作は、約2年半の活動の集大成とも言える作品に仕上がっている。

このアルバムのリリースに際し、メンバー2人(Last Note. / Last Note.T)に対面インタビューを実施。これまでのキャリアを振り返ってもらいつつ、Last Note.の音楽性について多面的に語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

アップしないとすぐ忘れられるから、怖いよね

──1stアルバム「セツナコード」のことを中心に、いろいろと聞きたいと思います。よろしくお願いします。

Last Note. よろしくお願いします。(ICレコーダーを見て)もう録ってますね。録音ボタンを押したとたんに緊張して押し黙りますよ(笑)。

──(笑)。インタビューって、まだそんなにやってないですよね?

Last Note. そうですね。基本、(インタビューは)メールでやらせてもらうことが多いんですよ。今回はナタリーさんくらいですね、対面でインタビューするのは。

Last Note.T(以下、T) そうですね。

──では、早速始めたいと思います。「セツナコード」はこれまでの代表曲が網羅された作品になってますね。

Last Note. はい。19曲、80分くらい収録していて、ホントにてんこ盛りな感じなので。集大成というか、これを聴いてもらえれば、Last Note.のことがわかる1枚になっていると思います。収録時間の関係で、カットした曲もあるんですけどね。

──未発表の新曲も収録されていて。

Last Note. ギリギリまで作ってました(笑)。

T できるところまではがんばりましたね。EXIT TUNESさんにも待っていただいて……。

Last Note. 「本当のデッドはいつですか?」って聞いて(笑)。まあ、締め切りがあるからこそがんばれるところもありますからね。

T ケツを叩かれて、初めて「やらなくちゃ」って。

Last Note. それがなかった頃は、楽曲をアップする時期がだいぶ開いたりしてましたからね。ヤル気がある時期、ない時期がマチマチだったというか。

T しばらくアップしないと、すぐ忘れられるんですよ(笑)。

Last Note. 怖いよね。だから、今の状況はいいと思いますね。

TMNは僕にとってカルチャーショックだったんです

──アルバムには「ノイジーラバーソウル」などの初期の楽曲も収録されてますが、そもそも、2人で一緒に音楽を作り始めたきっかけはなんだったんですか?

Last Note. 僕がPSPの「初音ミク -Project DIVA-」というゲームにはまったんですよね。「メルト」(2007年に投稿された初音ミクの楽曲。作詞・作曲はryo)とかは聴いてたんですけど、ゲームをやったときに「いい曲が多いな」って思って。歌詞の世界観もいいし、メロディも洗練されていて、「自分もこの中でやってみたいな」と。で、もともと知り合いだったTさんに声をかけたんです。

T そのときは「とりあえずやってみようかな」っていう感じだったんですけどね。初音ミクは知ってましたけど、自分で曲を作っていたわけでもなかったし。

Last Note. 「まずは何曲か作ってみよう」っていう。彼は編曲がすごくうまいので、お願いしたいっていうところだったのかな。今も編曲はぜんぶ任せてるし。

T 作曲は2人でやるんですけどね。メロディが決まったら、歌詞はラスノさん、編曲は僕っていう分担で。ラスノさんが歌詞を書いている間に、僕はフルコーラス分のアレンジを作るっていう。

Last Note. こういう話をすると、すごく効率的にやってるような感じがしますけど、実際は全然違うんですよ。「歌詞が浮かばない」とか、いろいろあって。

T うん、時間はかかりますね。

──なるほど。Last Note.のサウンドはロックが基本になってますが、2人の音楽的ルーツもそのあたりなんですか?

T 最初はB'zですね。高校のときにギターを始めて、B'zの曲を弾いてみようと思ったんですけど、やっぱり難しいじゃないですか。で、挫折しまして。その後、「小室哲哉さん率いるTMNというバンドがあって、そこで松本孝弘さんがギターを弾いていたらしい」という話を知って、TMNを聴いてみたんですけど、それがすごく衝撃的で。小室ファミリーの曲とも全然違うし、僕にとってはカルチャーショックだったんですよね。そこからですね、DTMに興味を持ったのは。

Last Note. 僕は雑食ですね。ヴィジュアル系も聴くし、ハロプロ系とかアイドルも聴くし。それがLast Note.に影響しているかって言ったら、そうでもない気がしますけど(笑)。

Last Note. feat. GUMI、初音ミク「セツナコード」 [CD] 2013年8月21日発売 / 2000円 / EXIT TUNES QWCE-00288
Last Note. feat. GUMI、初音ミク「セツナコード」
収録曲
  1. セツナトリップ / Last Note.feat. GUMI
  2. スパイラルブレイカー / Last Note.feat. GUMI、初音ミク
  3. アカツキアライヴァル / Last Note.feat. 初音ミク、巡音ルカ
  4. 放課後ストライド / Last Note.
  5. 無気力クーデター / Last Note.
  6. 有頂天ビバーチェ / Last Note.
  7. 逃走本能 / Last Note.feat. GUMI
  8. 少女暴動 / Last Note.feat. GUMI
  9. 月光戦争 / Last Note.feat. 鏡音リン
  10. ノイジーラバーソウル / Last Note.feat. GUMI
  11. デッドラインサーカス / Last Note.feat. GUMI、鏡音レン、神威がくぽ
  12. ファンタジースター / Last Note.feat. GUMI
  13. 恋愛勇者 / Last Note.feat. GUMI
  14. キャラメルヘヴン / Last Note.feat. GUMI
  15. アリスメティック / Last Note.feat. GUMI、初音ミク
  16. ハッピーチューン / Last Note.feat. 初音ミク
  17. オサナナブルー / Last Note.feat. GUMI
  18. ルートスフィア / Last Note.feat. GUMI
  19. ハローラフター / Last Note.feat. 初音ミク、鏡音リン、巡音ルカ、GUMI、Lily、IA

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Last Note.(らすとのーと)

ハードなギターサウンドによるストレートなロックチューンを得意とするボカロPユニット。2010年に動画サイトへの初投稿作「ワンステップ・レイヤード」が早くもVOCALOID殿堂入りを果たし、「セツナトリップ」などの楽曲が絶大な支持を受けた。その後2012年末に発表した「放課後ストライド」を皮切りに、同じ世界を描いたシリーズ「ミカグラ学園組曲」を始動。それまでLast Note.の素性はベールに包まれていたが、2013年にLast Note.、Last Note.Tの男性2人組ユニットであることが明かされた。同年8月にはEXIT TUNESからフルアルバム「セツナコード」をリリースする。