ナタリー PowerPush - 杉本恭一

LÄ-PPISCHデビュー25周年目前! ソロ新作「Macka Rocka」リリース

タイトルにはなんの意味もないですね

──というわけで、そろそろニューアルバム「Macka Rocka」の話に入ります。ものすごいどうでもいい話をすると、今回のアルバムタイトルを聞いて、ボクが最初に思い出したのが、キラーカンの「ふるさと真っ赤っか」っていう演歌だったんですよ。

いいじゃないですか、キラーカンさん! よくふざけて「ニッカポッカ」っていうつまらないシャレを言われて、それは冷めますけど(笑)。

──「キャロラインベッキー」という曲のタイトルにまず驚いたんですよ。キャロライン洋子とベッキーを足したようなタイトルだけど、まさかと思ったらホントにそうだったっていう(笑)。

そうです。素晴らしいでしょ(笑)。ホントにそうだったっていう。タイトルにはなんの意味もないですね。

──でも、この曲に一番言いたいことが詰まってる感じがしましたね。

ほう。確かに、非常に濃度は濃いですね。

──今の日本の問題なりを、なるべくふざけて語ろうとしてるというか。真面目になりすぎずに。

うん、そのとおりですね。

──真面目になりすぎないというか、真面目になれない感じが、らしいなと思いますけどね。ドリフ体質というか。

そこに使命を感じてはいないんですけどね。多分好きなんでしょうね。

──照れがあるんですか? なんなんですかね?

インタビュー風景

だいたいそういうふうに「シャイだから、照れ屋だから」ってうことで解決されることが多いんですけど、いっつもその発言で、腹の中ではムカムカしてるんですよ(笑)。

──そうだったんですか(笑)。

何言ってんだよ、みたいな。人格否定されてるような気になっちゃう(笑)。

──だって、原発問題とかを織り込んだ曲に天才バカボン感を混ぜる必要ってまずゼロですよね。

そうですね。「47歳の春だった」って歌ってますから(笑)。まあ……バカボンってすごいですよね。あの曲(「元祖天才バカボンの春」)は素晴らしいですよね。

──今年の春にいろいろあったわけですよね、47の春に。信じてたことも変わるようなことが。

それを声高々に「47歳」って歌う人もいないでしょうね。

──アピールしなくていいところですもんね(笑)。

それは自分でも思ってます。

──シャイではなくて、何か余計なことをしたいタイプ。

うん、それでも構わないですけど、なんかシャイって言われるとイラッとくる。

──ダハハハハ! よく言われるんですか?

なんかそれで解決されようとすることが嫌なんじゃないですかね。もっといろいろ、自分に限らずみんなだってあるだろうと。

──そういう性格だと気になるのが、昔のLÄ-PPISCH本「ワンダーブック」(1988年 / JICC出版社)のメンバー全員の手相を見る企画で、確か上田現さんとMAGUMIさんが「すごい変わり者だ」みたいなこと言われてたのに、杉本さんだけ「この人はすごい普通だ」みたいなことを言われてたんですよ(笑)。

ハハハハハ、今はそんなこと言われたら逆に「おお、そうか」って思うかもしれないけど、このときだったら言われたくないでしょうね。

──だって「ごく一般的な手相だね。普通の人で普通の運勢だよ」って言われてましたからね(笑)。

じゃあ普通の人生にしてくれよ!

──ダハハハハ! これ、ひどいと思ったんですよ。「取り立てて言う運勢じゃないよね」って(笑)。

つまり、そのとき持ってた手相は普通に平凡な人生歩めるものだったんだ。

──それなのに、多分自ら平凡じゃない道に突っ込んでいったというか。

そうでしょうね。多分俺もMAGUMIも現ちゃんも、みんなそうなんだと思うけど。最初すっごくがんばって。「こんなんじゃロックミュージシャンとしてダメだろう」とかって、勘違いしてたところがあるんですよ。「がんばってなんなきゃ、ミュージシャンに」って。

──なんか奇行とかしなきゃいけないんだっていう。

うん。自分を表現することの前に、目指してるなりたいものにまだなりたいときだったですね。全て間違ってましたけど(笑)。

来年はLÄ-PPISCHでなんか作りたいなと思ってる

──こうしてソロやるのって、しんどい部分と気楽な部分とどっちが大きいですか?

うーん……しんどいのも楽しいのも同じ線ですかね。全部自分でできるっていうところじゃないですかね。多分、もうバンドやるのはすごく難しい年齢だと思いますよ。もうみんな自分のやりたいことも明確になってるし、しかもできる実力も持ってきてるから。久々に年に1回ぐらいLÄ-PPISCHで集まっても、みんな会うたび力つけてきてるし、やりたいことも持ってるから。そういう中で何分の1だけ出すっていうふうにやりたいことを分けてはできないですね。やるなら、やっぱりソロっていう形で、いろんないいミュージシャンたちに力を貸してもらってっていうのが一番いいかな。

──結成25周年でLÄ-PPISCHも復活するみたいですけど。

そうですね、来年。やろうと思ってます。

──それは新しく作品を出すくらいの勢いで?

今はまだ内容について3人でいろいろ意見出し合ってる段階ですけど。でも、なんか作りたいなとは思ってますよ。もちろん新しいものを聴きたい人もいるだろうけど、久々にやるときにオール新曲でツアーやられたら楽しいですかね?

──確かにそれは結構ブルーになりますね。ただ、古い曲だけになるのも現役感がなさすぎて寂しいんですけど。

ああ。まだ何も決まってないですけど、何か作りたいなとは思ってます、今のところ。

──ユニコーンぐらいゆるく活動できればいいのかもしれないですけどね。ボクが阿部B(阿部義晴)さんをインタビューした時点では「再結成は100%ない!」くらいの話だったんですけど。

うん、そういう気持ちはわかりますよ。それが一気にガガガガッて動くことって多いじゃないですか。そういうふうに冷める人もいるだろうけど、もうみんなそういうことも気にしてないですよ。

──ある程度オッサンになるとケンカもしなくなるでしょうしね。

そうですね。そんなケンカしてまでやるエネルギーで再結成するとしたら、やんないね。ケンカした時点で終わりでしょうね。

──ただ、もちろんLÄ-PPISCHでしかできないことってあるわけですよね。

やっぱり確実にそうですよ。もうLÄ-PPISCHって俺たちの母艦になってるじゃないですか。MAGUMIにしろ上田現にしろtatsuにしろ雪好にしろ。そのあといろんなもの聴いた人にも。だから自分たちのものであって、自分たちでないみたいような感覚ですよね。だから、なんか自分たちで作っておきながら「はあーっ」と思う瞬間が多いですね。

──そんなわけでインタビューは終わりますけど、新譜の話をろくにしてないので、何か伝え忘れたことなどありましたら。

なんにもないです(キッパリ)。

──ないんですか(笑)。大丈夫なんですか? もっといろいろアピールしていいですよ!

何もないですね(笑)。もう十二分です。

──了解です。今日はどうもありがとうございました!

インタビュー風景

ニューアルバム「Macka Rocka」 / 2011年10月26日発売 / 2300円(税込) / iLHWA RECORDS / ILH-001

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収録曲
  1. Birth
  2. Fantasia
  3. RED MONKEY
  4. ENCORE
  5. Piece of Cake!
  6. キャロラインベッキー
  7. KY? O....... IC! H I
  8. オー・ソレ・ミオ
  9. moon
  10. Antique Radio
杉本恭一 & The Dominators
「Tail Peace Tour 2011」
  • 2011年12月3日(土)愛知県 名古屋ell. SIZE
    OPEN 18:00 / START 18:30
  • 2011年12月4日(日)大阪 梅田Shangri-La
    OPEN 18:00 / START 18:30
  • 2011年12月17日(土)東京都 原宿アストロホール
    OPEN 18:00 / START 18:30
杉本恭一(すぎもときょういち)

1964年熊本県出身。1984年にLÄ-PPISCHを結成し、1987年にメジャーデビュー。1996年には初のソロアルバム「ピクチャーミュージック」をリリースし、自らが率いるバンド、analersでも精力的な活動を行う。2003年にLÄ-PPISCHが活動を休止した後はソロを中心にリリースやライブを続け、2011年10月に6枚目となるソロアルバム「Macka Rocka」を発表した。現在は上田健司とのユニット、穴場でも活躍中。