音楽が好きな者として、やれることはやろう

──宮田さんは「そろそろがんばらんとな」と感じていたという話が先程ありましたが、そのあたり詳しく聞かせてもらってもいいですか？

宮田　それは別にバンドに対してっていうよりも、自分がベースを弾くっていうことに対してとか、曲作るってことに対してとか。今まではなんとなく自分の中の誰かがやってる感じがあったんで。

──夢遊病みたいな感じ？（笑）

宮田　いや、一応ちゃんと弾いてはいますけど（笑）。なんて言ったらいいかな。それこそさっき渡辺の言った役割分担とかって話だと、僕は役割的には一番ちっちゃいとこを担当してたと思うんです。だから、そろそろちょっと曲とか作ったりしてがんばってみるかみたいな感じです。音楽が好きな者として、やれることはやろうみたいな（笑）。

──岡本さんは？ バンドの中の役割分担みたいなところで言うと？

岡本　今回だと、みんなが曲持ってきたときに、これを誰か客観的に見る人がいないとダメやなっていうのはありましたね。それぞれの気持ちがあんまり強く出すぎるとバラバラになる危険があるなと思って、僕なりに客観的に考えて、うまくバランス取れるようとは思ってました。

澤　なんかたまにポロッと言うたりしとったよね。

岡本　それぞれの個性は極力尊重したいけど「これは明らかにないやろ」っていうのは言っとこうかなと（笑）。

──自分自身のプレイについても思うところはありました？

岡本　そうですね。今回いろんなものを取っ払った上で、黒猫チェルシーとして捨てられない部分っていうのもあると思ったし、そこは自分がドラムを叩くときに意識したとこですね。

自分らのバンドに対して上から目線だった

──個人的にも黒猫チェルシーというバンドを、インディーズの頃からずっと観てきたんですけど、ちょっと気になってた部分というのはありまして。

澤　なんですか（笑）。

──演奏もうまくて非常にカッコいい反面、なんだかどこか必死さが足りないという印象があったんですよね。余裕でやってるというか。

澤　鼻につく感じですかね。自分らのバンドに対して上から目線というか？

──自分らのバンドに上から目線（笑）。いや、そうです、そういうことです。

澤　それはまあ確かに。そうすることによって成り立ってた部分もあるし、どこかに逃げ道を残してた部分もあったとは思います。

──自分のすべてをこのバンドに注いでいるわけではないという逃げ道が、1人1人の中にあったように思うんですよね。黒猫チェルシー用に持ってきた部分でやってますから、これ僕の100%じゃないんで、みたいな。どこかに言い訳を用意していたというか。

澤　あはは、そのとおりです（笑）。

宮田　だから今まではそういう感じがあんまり楽しくなくて。で、今回それがなくなって、すごく楽しかった。メンバー全員そうやったと思うんですけど。

岡本　うん、今回は単純に楽しかった。

渡辺　今まではどこか意識して“作ってた”ところがあったのかもしれないです。もちろんそれも好きでやってたことだからいいんだけど。でもこのアルバムは僕の場合、単純に曲とか歌詞に触れて「こうしたいな」って感じたとおりに、素直に反応して歌うことができたんですよね。そこが大きかったと思います。

「これが黒猫のアルバム!?」って驚くようなもんになってるはず

──今回はレコーディングも楽しみながら、のびのびと制作できたようですね。

澤　今までみたいな、コンセプトを決めてそこに向き合って作るっていうのは1つのやり方としてはあると思うんですけど、だけどやっぱりそれでできるものは結局想定内のものになるんですよ。例えばパンクだったりガレージだったり、音もローファイな感じでまとめようとか。そこで予想もしなかったようなことは起こらないんです。だからその都度新しいことができたとか、自分の中での成長とか、そういうものをちゃんと実感したことがなかった。その点、今回は生き生きと自分のやりたいことを詰めていく、自分の好きなもんに没頭できたアルバムやったんで、そういう意味では今までとは全然違いますね。

──確かに今回はちょっとはみ出してますもんね。

澤　そうなんですよ。だから今まで黒猫チェルシーに対してなんとなく「ああ、そういうバンドね」っていうイメージを持ってたような人にこそ、このアルバムを聴いてもらいたいし、そういう人たちがたぶん「えっ、これが黒猫のアルバム!?」って驚くようなもんになってるはずだし。だから自分らで聴いても面白いし、いいなと思えるし。

──この作品はまさに1stフルアルバムにふさわしいものになったと思うんですが、この先のバンドの展望については？

渡辺　あの、もっと面白いことをできる予感はします。今回のアルバムはなんかロマンがあったから。

──4人の400%が出ていますしね。

渡辺　それがやっと出せたと思う。だからこれからできることがいっぱいあるっていうか、上限がないのを痛感したというか。自分が作ったものでそう思えたから、この先はもっと何かできそうな気がしてます。