音楽ナタリー Power Push - 久保ユリカ
「ありがとう」の言葉に浮かぶ顔
今年の2月にソロアーティストデビューを飾った久保ユリカが、12月7日に3rdシングル「ありがとうの時間」をリリースした。
表題曲「ありがとうの時間」は、1stおよび2ndシングルで披露したポップな曲調とは打って変わって、本人曰く「冬の温かな日常」を表現した優しいバラード。一方、カップリング曲「Happy Cuty My Snow Man」はクリスマスにぴったりな、キュートなパーティソングとなっている。
音楽ナタリー初登場となる今回は、久保が考える「声優アーティスト」の在り方から「ありがとう」という言葉に込めた気持ち、そして今年のクリスマスの予定まで、彼女にたっぷりと話を聞いた。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 星野耕作
お正月が終わったくらいの気持ち
──今年2月にソロアーティストとしてデビューされて、8月に2ndシングルを、12月に3rdシングルをリリースとなかなかのハイペースで活動されていますが、この約1年をご自身で振り返ってみていかがですか?
ホントにあっという間でしたね。アーティスト活動も声優としての活動も全部ひっくるめて、1週間くらいにギュッとまとめたような感覚というか、自分の中ではまだ2016年が始まって、お正月が終わったくらいの気持ちで今日この日を迎えているので。それくらい充実していたんだなって、今になって実感しています。
──アーティストとして活動することが決まるまでの経緯って、どんな感じだったんですか?
「久保さん、ソロで歌やりますか?」「やりますよ!」と(笑)。自分から「ソロで歌いたい」みたいな要望を出していたわけじゃないんですけど、ありがたいことに色々なご縁があって、結果タイミング的にも環境的にも一番いい状態でデビューできたと思います。
──自ら申し出たわけではなかったんですね。
そうですね。
──なぜ今それをお聞きしたかというと、久保さんがラジオの中で、ゲストにいらした高垣彩陽さんが以前久保さんは「私は歌が歌いたい」「いろんなことをやって歌がすごく好きなことに気付いた」と言っていたというお話をされていたからで。それっていつ頃の話だったんだろう?と思ったんですよ。
私が19歳か20歳のときなので7、8年前ですかね。正直、それを言ったことを自分自身がもう忘れてしまっていて。2010年に「ラブライブ!」のプロジェクトが始まってから、歌を歌う行為やユニットでのパフォーマンスが自分にとって普通になっていたというか。歌が好きとか嫌いとか考える前に、CDを聴いてくださる方やライブを観に来てくださる方を楽しませるものだっていうふうに変わっていったんですね。
──「歌が好き」とことさら意識することはなくなったと。
意識しなくなったし、そういうことを誰かに話すこともなかったので、あのときラジオで言われて「ああ、当時の私って、そんなにまっすぐに自分の気持ちを人に伝えてたんだ!」って内心思ってました(笑)。
久保ユリカ(CV:久保ユリカ)みたいな感覚
──最近は声優さんがアニメの主題歌やキャラソンのみならず、ソロアーティストとして歌を歌うことも珍しくなくなりましたが、久保さんは、例えば「声優が歌う意味」あるいは「声優だから歌えること」みたいなことを考えたりしますか?
私は特別歌が上手なわけでもないし、声も、それなりに特徴はあるかもしれないけど、思わず突っ込まずにはいられないような強烈な個性があるわけでもなく、果たして魅力的かというと……。
──いや、魅力がないってことはないですよ。
あはは(笑)。でも、やっぱり今の声優さんってホントに歌が上手な方が多いので、余計に自信をなくしていってはいるんですけど、じゃあそこで「自分に何ができるか」って考えたときに、より「声優として歌う」ことを意識するようになったなと思いまして。
──つまり?
“久保ユリカ(CV:久保ユリカ)”みたいな。キャラクターソングと似た感覚というか、ポップな曲やしっとりした曲を歌う久保ユリカを久保ユリカが演じるような感じで、楽曲に寄り添った歌い方や声の出し方ができればいいなと。そこにどこまで自分の技術がついてくるかっていうのも今後の課題になると思うんですけど。私は、声優だからこそソロデビューできたっていう感覚がすごく強いので、あくまで声優であることを大切にしたいっていう気持ちが大きいですね。
「記憶コロコロ」で素の自分を見せられた
──3rdシングルの表題曲「ありがとうの時間」は、1stシングル「Lovely Lovely Strawberry」および2ndシングル「SUMMER CHANCE!!」の表題曲と比べると、だいぶ雰囲気が変わりますね。元気でさわやかな久保さんから、しっとり落ち着いた久保さんになっています。
そうですね。ただ、ここまで劇的ではないにせよ、2ndシングルを出すときも1stシングルとは違ったものにしたいという思いがあったので、その延長線上にあるとも言えるんですよ。あと、季節ごとにシングルをリリースできていて、春の「Lovely Lovely Strawberry」、夏の「SUMMER CHANCE!!」、冬の「ありがとうの時間」なので、今回は冬の温かな日常みたいなものを表現できたらいいなって。でも一番大きかったのは、やっぱり2ndシングルのカップリング曲「記憶コロコロ」でそれまでの曲にはなかった色を出せたことだと思います。
──真夏のアイドルソング「SUMMER CHANCE!!」とは対照的な、同じ夏でも夏の夕暮れを感じさせるノスタルジックなミディアムチューンですね。先ほどおっしゃったように、曲によって久保ユリカを演じ分けているのがわかります。
正直、ライブで盛り上がるタイプの曲ではないので、生で歌ったときにどういった雰囲気になるのかちょっと不安だったんですけど、みなさん一所懸命耳を傾けてくださって。私としても「ああ、こういう私も受け入れてもらえるんだ」ってうれしくなりました。もっとも、昔から私のことを応援してくださっているコアなファンの方々は、逆に「記憶コロコロ」くらいのテンションのほうが素の私に近いと感じてくれているとも思うので、そういう方にとっては「おかえり」に近い感覚かもしれませんけど(笑)。
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- ニューシングル「ありがとうの時間」 / 2016年12月7日発売 / ポニーキャニオン
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1900円 / PCCG-1561
- 通常盤 [CD] / 1350円 / PCCG-70357
CD収録曲
- ありがとうの時間
[作詞・作曲:徳田憲治 / 編曲:スムルース] - Happy Cuty My Snow Man
[作詞:hotaru / 作曲・編曲:Tom-H@ck] - ありがとうの時間 -instrumental-
- Happy Cuty My Snow Man -instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
- ミュージックビデオDVD
久保ユリカ クリスマスイベント2016
- 2016年12月25日(日)東京都 EX THEATER ROPPONGI
- [昼の部]OPEN 13:30 / START 14:30
- [夜の部]OPEN 17:30 / START 18:30
久保ユリカ(クボユリカ)
5月19日生まれ、奈良県出身の声優・アーティスト。2002年の「第6回二コラモデルオーディション」でグランプリを受賞する。2010年、「ラブライブ!」シリーズの小泉花陽役で声優活動をスタートさせ、「Lostorage incited WIXOSS」「あまんちゅ!」などに出演。テレビではBS11「アニゲー☆イレブン!」のメインMCを務めている。2016年2月にシングル「Lovely Lovely Strawberry」でソロデビュー。8月には2枚目のシングル「SUMMER CHANCE!!」をリリースした。12月には3rdシングル「ありがとうの時間」を発表した。