音楽ナタリー Power Push - 清木場俊介

今だからこそ歌える軌跡

昨年ソロ活動10周年を迎え、オリジナルアルバム「MY SOUNDS」やベストアルバム「唄い屋・BEST Vol.1」をリリースするなど精力的な活動を展開している“唄い屋”の清木場俊介からニューシングル「軌跡」が届けられた。ヒットメーカーの亀田誠治が作曲とサウンドプロデュースを担当したタイトル曲は、優しく大らかなメロディと「悲しみ乗り越えて 僕は大人に変わっていく」という清木場の宣誓のような歌詞が融合したミディアムチューン。「軌跡」というタイトル通り、彼自身のキャリアを総括し、さらに先へ進んでいく意思を感じさせる楽曲に仕上がっている。

今回が音楽ナタリー初登場となる清木場。シングルの制作話やソロ活動10年という節目を経て、35歳になった現在の心境をたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 西槇太一
スタイリスト / 笠島康平 ヘアメイク / 落合英司

亀田さんが曲を書いてくれるとしたらどんな曲になるんだろう?

──まずは亀田誠治さんが作曲、サウンドプロデュースを手がけた新曲「軌跡」のことから聞かせてください。亀田さんとはこれまでにも接点があったんですか?

会ったときに挨拶するくらいで、特に仕事上の接点はなかったです。ただ自分がソロになってから、何度か「亀田さんと一緒にやってみたいね」という話は出ていたんですよね。ずっと実現しなかったんですけど、ちょうど今年タイミングがあって。

──亀田さんと組んでみたいと思っていたのは、どうしてですか?

東京事変としての活動もそうですけど、ベーシストとしてもプロデューサーとしてもすごい人じゃないですか。あと、もし亀田さんが僕に曲を書いてくれるとしたら、どんな曲になるんだろう?という興味がすごくあったんですよね。で、今回はバラードでもアップテンポでもなく、ミディアムテンポの優しい感じの曲をお願いしたんです。“ド”バラードやアップテンポのロックは自分で書けるので、そうじゃないテイストの曲を作ってもらいたいな、と。自分の新しい部分を引き出してもらえるような曲じゃないと、一緒にやる意味がないですから。

──新しいものを求めていた?

そうですね。ソロのロックアーティストとして10年間発信してきて、さらにステップアップするにはちょうどいい機会だと思ったし。しかも、すごくいい曲で……。実はね、亀田さんには4曲くらい候補をいただいたんですよ。その中でスタッフが推していたのが「軌跡」で。僕はほかの曲がいいと思っていたんですけど、最近はスタッフさんが薦めるものをやってみたいと思ってて。これまで人に書いてもらった曲を歌うことがなかったから、自分の中に取り込むまでにけっこう時間がかかりましたけど、何度も聴いて、歌っていくうちに「なるほど、いい曲だな」と気付いたというか。そういう対応力って大切ですからね、ホントに。

──柔軟さが増してきたということですよね。

そういうふうになれたのはこの2、3年ですけどね。リラックスして音楽をやれているし、いろいろなものを取り入れることで、自分も進歩できるというか。それも10年間やってきたからこその余裕なのかもしれないですね。

清木場俊介

──「軌跡」にも「悲しみ乗り越えて 僕は大人に変わってく」という歌詞がありますが、まさにそういうことを示しているのかもしれない。

「どういう角度から見て大人なのか?」というのも人それぞれ違うとは思いますけどね。僕自身、「いいと思ったものはやる。納得できないことはやらない」というのは変わってないですし。ただ、音楽を楽しめるようになったのは大きいかな。そういう意味では、大人になれているのかもね。

──「軌跡」というタイトルも秀逸だと思います。ソロ活動10年を経て、さらに先に進んでいくんだという意思がストレートに示されていて。

お、ありがとうございます。タイトルを決めるのは苦手なんで、スタッフからアイデアをもらって、「これがいい、あれがいい」って話しながら決めたんですけどね(笑)。自分の中に「これだ!」っていうタイトルがない限り、ほとんど人に任せてるんですよ。歌詞はたくさんの言葉を使って1つのものを伝えるから、自分で完結できるんですよね。逆にタイトルって、1つか2つの言葉ですべて表さなくちゃいけないから本当に難しくて。あと、タイトルを人に振っておけば、売れなかったときにその人のせいにできるので(笑)。

──すごい考え方ですね(笑)。

言葉は悪いけど、タイトルはどっちでもいいと思ってるんです。「タイトルがいいから、いい曲」ってことはないでしょ? でも、本当にいい曲だったら、どんなタイトルでも「いい曲だな」ってことになるので。

──大切なのは中身である、と。

そうそう。タイトルは、戦略のプロであるスタッフにお願いして、僕は作るほうに徹するというか。

──清木場さんらしいスタンスですね、それも。

ええ。

ニューシングル「軌跡」2015年6月24日発売 / 1080円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-37058
「軌跡」
収録曲
  1. 軌跡(るるぶトラベル夏キャンペーンTVCMソング)
  2. Sunrise
  3. 軌跡 -instrumental-
清木場俊介(キヨキバシュンスケ)
清木場俊介

1980年生まれ、山口出身の男性シンガー。地元テレビ局のボーカルオーディションに優勝し上京し、2001年9月にEXILEのボーカル・SHUNとしてデビューする。2005年1月にシングル「いつか…」でソロデビューし、翌2006年3月にソロアーティストとしての道を追求するためにEXILEを脱退する。また2008年に所属レーベルおよび事務所を離れ、新チーム・JETを設立。2009年1月にSPEEDSTAR RECORDSへの移籍を発表し、同年7月にアルバム「Rockin' the Door」をリリースした。音楽活動の傍ら、詩や書などを作品集や個展という形で発表し、4回に渡り全国各地で個展を開催。のべ5万8000人を動員するなど音楽だけにとどまらないマルチアーティストとしての才能を開花させている。2014年にはソロデビュー10年目の節目を迎え、初のベストアルバム「唄い屋・BEST Vol.1」、オリジナルアルバム「MY SOUNDS」、シングル「幸せな日々を君と」「ROCK★STAR」など作品を多数リリース。2015年6月に亀田誠治プロデュースによるシングル「軌跡」を発表した。