音楽ナタリー Power Push - リミックスアルバム「加山雄三の新世界」発売記念特集

加山雄三×PUNPEE×コムアイ(水曜日のカンパネラ)

異才たちの歳の差トーク

Twitter検索はしてるから

──加山さんとしては、作品全体の印象はいかがでしたか?

左から加山雄三、コムアイ、PUNPEE。

加山 若い人と老人が、タッグを組んで何十年前の曲を今の形にして、これからのリスナーが聴くというのは、本当にうれしいことだよね。

コムアイ 水曜日のカンパネラのリミックスも、今と昔を同時進行させて、2個の時空を一緒にまとめるっていうコンセプトでした。

加山 THE King ALL STARSが生まれたときも、メンバーに「50年前の曲じゃないですよ、今でも通用しますよ」って言われて「音楽をやっててよかったな」と思ったし、今回もそういう感触がある。そこで思い出したんだけど、うちの息子がまだ2歳ぐらいだったときに、Simon & Garfunkelの「El Condor Pasa」、つまり「コンドルは飛んでいく」を聴いた瞬間に、それまで走り回ってたのが、ピタッと止まって聴き込んだんだよね。何百年も前から歌い継がれるインディオの曲を、Simon & Garfunkelが再構築したら、世界中で大ヒットして、内容のわからない日本の子供にもストレートに響いた。そうやって時代や国境を超える旋律があることに、そのとき改めて気付いたんだ。音楽は時間や空間すべてを超越するんだよね。現実にそれが今回もできたと思うし、彼や彼女の力によって、自分の曲がさらに新しく聴こえるかも知れないとしたら、こんなにうれしいことはないよ。だから、リスナーがどういう評価をしてくれて、どんな感想がTwitterに上がってくるかが、すごく楽しみだ。

コムアイ あはは! 私たちと一緒だ(笑)。

加山 感想を書き込んでほしいね。

コムアイ じゃあ、Twitterに書くと加山さんに読んでもらえるんですね。

PUNPEE アカウントは持ってるんですか?

加山 持ってないんだけど、検索はしてるから。

コムアイ エゴサするんですね(笑)。

VRでやる「バイオハザード7」、もう怖えーのなんの!

──PUNPEEさんとコムアイさんはアルバムを聴いての感触はいかがですか?

コムアイ ゼミの講評みたいで、どの曲を聴いても「あー! こういうやり方もあったんだ!」って思いましたね。そこに入れてもらえてうれしかったです。

PUNPEE どの曲も面白かったんですけど、石田さん(ECD)の「君といつまでも」は、楽曲、リリック、内容、構成、すべてひっくるめて、とにかく密度がとてつもないですね。

コムアイ 加山さんの声のグルーヴを生かしながら、もっと世界観をぐにゃんぐにゃんにしていったのはすごいですよね。

──正直、聴いていると涙するような、魂の1曲でしたね。では、もしPUNPEEさんとコムアイさんのお二人が、加山さんをプロデュースするとしたら、どういったアプローチを想像しますか?

左からコムアイ、PUNPEE。

PUNPEE やっぱりラップをしてもらいたいっすね。ダメだと言われながらも(笑)。あと、Auto-Tuneをかけて歌ってもらいたい。

コムアイ 私は加山さんのコンサートのVJを考えたいです。LEDとかプロジェクションマッピングで、どうやったら加山さんのステージで面白い演出ができるかなって。そういうアプローチも加山さんは楽しんでくれそう。

加山 際限なく楽しめるのが音楽だよ。オリジナル曲だけではなくリミックスだのなんだのって、無限に遊べるから。

──いまだに音楽は遊べますか。

加山 遊べるさ。「バイオハザード」をやらないで済むぐらい楽しいよ……いや、今は新曲作れって言われてるのに、「バイオハザード7(レジデント イービル)」に夢中で滞っちゃってるんだけどさ(笑)。

──新作のバイオもやられてるんですね。

加山 やっとゲットしたんだよ、「PlayStation VR」。

──しかもVRで!(笑)

左からPUNPEE、加山雄三、コムアイ。

加山 もう怖えーのなんの!(笑) 声裏返って大騒ぎしながらやってるよ。

コムアイ 全然追い付けない(笑)。

加山 最初は体験版でやって、「こんなに面白いと、ほかの仕事ができなくなって危ねえな」と思って手を出さないでいたら、カプコンから送られてきたんだよ。それでやりだしたらもう止まらない(笑)。「バイオハザード1」は、どこから敵が出てくるかわからない怖さがあったじゃない?

PUNPEE 戸を開けたら急にゾンビが出てきたり。

加山 「7」も暗闇の中で音だけ聞こえて、振り返ったらいきなり目の前に表れたり。それをショットガンでぶっ飛ばしたりさ。

コムアイ あっはっは!(笑)

PUNPEE もうクリアしたんですか?

加山 まだまだ、そこまで時間がないね。「新曲作ってください」って事務所に怒られてるから(笑)。

──それはそうですね(笑)。最後に、PUNPEEさんやコムアイさんのような、若いアーティストに期待することはなんでしょうか?

加山 まだまだ人生の先は長いから、いろんなことに手を出して、どんどん膨らんでいってほしい。音楽には際限なく楽しむ方法があるし、人生を自由に楽しむ大きな材料になると思うんだよね。どんどんその可能性を追求してほしいし、そのキッカケにこのアルバムやリミックスがなったら、こんなにうれしいことはないね。

V.A.「加山雄三の新世界」 2017年3月8日発売 / 2500円 / ドリーミュージック / MUCD-1380
「加山雄三の新世界」
収録曲
  1. お嫁においで 2015 feat. PUNPEE
  2. 蒼い星くず feat. ももいろクローバーZ×サイプレス上野とロベルト吉野×Dorian
  3. 夜空の星 feat. KAKATO×川辺ヒロシ
  4. ブラック・サンド・ビーチ~エレキだんじり~ feat. スチャダラパー
  5. 旅人よ feat. RHYMESTER
  6. 夕陽は赤く(yah-man version)feat. RITTO×ALTZ
  7. 海 その愛 feat. 水曜日のカンパネラ
  8. 君といつまでも(Together Forever Mix)feat. ECD×DJ Mitsu The Beats
加山雄三(カヤマユウゾウ)
加山雄三

1937年、神奈川県横浜市生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、1960年に東宝と専属契約を結び芸能界入りする。1961年7月に主演映画「若大将」シリーズがスタートし、挿入歌「夜の太陽」で歌手デビュー。1966年にシングル「君といつまでも」が大ヒットを記録し、その後も多数のヒット曲を発表する。弾厚作名義で作曲家としても活躍し、自身の楽曲のほか、日本テレビ系「24時間テレビ『愛は地球を救う』」のテーマソング「サライ」などの作曲を担当。2013年に宮城で開催された野外フェス「ARABAKI ROCK ROCK FEST.2013」への出演をきっかけに翌2014年に、キヨサク(MONGOL800)、佐藤タイジ(シアターブルック)、名越由貴夫(Co/SS/gZ)、古市コータロー(THE COLLECTORS)、ウエノコウジ(the HIATUS)、武藤昭平(勝手にしやがれ)、タブゾンビ(SOIL & "PIMP" SESSIONS)、高野勲、山本健太、スチャダラパーと共にロックバンド・THE King ALL STARSを結成。同年に加山自身の最後の全国ツアーとして「若大将EXPO ~夢に向かって いま~」を47都道府県で行った。4月21日には生誕80年を記念して東京・東京国際フォーラム ホールAで一夜限りのスペシャルライブを開催する。

PUNPEE(パンピー)
PUNPEE

東京都板橋区在住のラッパー / トラックメーカー。2006年に「ULTIMATE MC BATTLE 2006」東京大会で優勝し、翌2007年に弟の5lack、同級生のGAPPERと共にPSGを結成する。2009年10月にPSGとしてデビューアルバム「David」を発表し各方面で話題に。2014年にはPUNPEE単独で清涼飲料水「レッドブル」のCMソングやTBS系「水曜日のダウンタウン」の音楽を手がけ、お茶の間にもその存在感を示すようになる。2015年7月に発売されたRHYMESTERのアルバム「Bitter, Sweet & Beautiful」ではプロデューサーとして5曲、フィーチャリングゲストとして2曲に参加。2017年1月には宇多田ヒカルの「光」をPUNPEEがリミックスした楽曲「光(Ray Of Hope MIX)」が配信リリースされ、iTunes Storeの全米チャートで日本人アーティスト最高位となる2位を記録した。

水曜日のカンパネラ(スイヨウビノカンパネラ)
水曜日のカンパネラ

水曜日のカンパネラ 主演・歌唱担当のコムアイと、作曲・編曲担当のケンモチヒデフミ、それ以外担当のDir.Fからなる音楽ユニット。2012年夏にデモ音源「オズ」と「空海」をYouTubeにて公開し、2013年3月に東京・下北沢ERAにて初ライブを実施した。ライブではコムアイのみがステージに立ち、彼女の趣味の1つである“鹿の解体”を行うなどの個性的なパフォーマンスで注目される。2015年には「ヤフオク!」のテレビCMにコムアイが出演。同年11月にはCMでオンエアされた楽曲「ツイッギー」を含むアルバム「ジパング」をリリースし、音楽誌の年間ベストアルバムに選出されるなど大きな話題を呼ぶ。2016年3月、アメリカ・テキサス州オースティンにて開催された「SXSW 2016」でライブを行い、ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル・Atlantic Japanからメジャーデビューすることを発表。同年6月にEP「UMA」、2017年2月にフルアルバム「SUPERMAN」をリリースした。2017年3月8日には初の東京・日本武道館公演「八角宇宙」を開催。