ナタリー PowerPush - KANA-BOON

若手最強のライブバンドが見せた“完成度の高い未完成”という本質

あの暑い時期だからこそ作れた熱いアルバム

──そういう意味でこれは完璧な1stアルバムだと思うんですよ。こじんまりとまとまるのではなく、焦燥感と疾走感と上昇志向だけがひたすら鳴っていて。これからどんどん大きくなっていくロックバンドの1stアルバムとしてはまるでお手本のような1枚で。

谷口 とにかく自分たちの好きな曲を放り込んでいった作品ですね。どういうアルバムを作ろうとか、どういう曲順にしようとか、そんなこと全然考えてなくて。今振り返ると、言っていただいたような作品になってるのかもしれないなとは思うんですけど、全部はできあがってから思ったことで。ちょうど夏フェスの合間にレコーディングしてたんですよ。だから、肉体的には相当しんどかったんですけど、今になってみると、夏フェスのステージでの熱量が、そのまま音に反映されてるなって。

小泉 スタッフから、全部そう仕組まれてたのかもしれへんな(笑)。

小泉貴裕(Dr)

谷口 だとしたらすごいよな(笑)。

小泉 この熱い感じは、あの時期じゃないと出せなかったかもしれないですね。

──もっとじっくり1stアルバムを作りたかったっていう思いはまったくなくて、「これでよし!」って感じですよね?

谷口 そうですね。1stアルバムとしてはこれでよかったと思う。バンドの勢いと本質だけが入ってるようなアルバムになったから。

──あと、アルバムにはインディーズ時代の曲をレコーディングし直した楽曲も入ってますけど、いきなり4つ打ちの打ち込みサウンドが導入されていた「目と目と目と目」には驚きました。

谷口 どうしてもバンドサウンドにこだわっていこうという思いは特にないんですよ。打ち込みであれ、ピアノの音であれ、曲によってそれがよければどんどん入れていきたいと思ってて。さすがに全編エレクトロニカみたいな作品は作らないでしょうけど(笑)。

「生き急ぎたい」そして「先の景色を見てみたい」

──このアルバム全体を貫いている前のめりな感じ、焦燥感っていうのはいったいどこから出て来てるんでしょう?

谷口 どこからなんだろう? ただ、生き急ぎたい願望はすごく強いですね。どんどん次に行きたいし、どんどん先の景色を見てみたい。僕としてはバンドの成長に合わせて、少しずつことを進めていくようなことはしたくないんです。今、周りに求められているんだったら、その求められているものに対してすべて応えていきたい。外から見えるバンド像に忠実でありたい。

──そういうことをはっきりと言うバンドは珍しいかもしれない。

谷口 正直、バンドの成長が評価に追いつかないことも出てくるかもしれないし、そのために必死で練習もしてますけど、そこに足を絡めとられたくないんですね。これが自分のやりたかったことだから。

飯田祐馬(B)

小泉 すごいスピードでここまで来ましたからね。一気にいろんな人の目に晒されることになったし。だから、プレッシャーは強いですけど、こういう環境じゃないと成長できないこともあると思うので、そこは楽しみながらやっていきたい。

飯田 あと最近になって、「あ、自分はプロなんだな」って自覚させられることが多いので、自分の立ってる場所をしっかりと把握していかないと、と自分に言い聞かせてますね。

谷口 それはヤバいね。ちゃんとプロにならないと(笑)。

古賀 でも、ホントにヘマできないなって思うんですよね。今はまだ、品定めされているような感じがあるから。その緊張感はありますよ。ただのギターバンドのギタリストではなくて、同じギタリストから一目置かれるような存在にならないとって。

ニューアルバム「DOPPEL」/ 2013年10月30日発売 / Ki/oon Music / KSCL-2315
[CD] 2800円 / KSCL-2315
収録曲
  1. 1.2. step to you
  2. ワールド
  3. ウォーリーヒーロー
  4. MUSiC
  5. 東京
  6. 白夜
  7. 目と目と目と目
  8. 盛者必衰の理、お断り
  9. 夜をこえて
  10. 羽虫と自販機
  11. A.oh!!<Bonus Track>
KANA-BOON(かなぶーん)
KANA-BOON

谷口鮪(Vo, G)、古賀隼斗(G, Cho)、飯田祐馬(B)、小泉貴裕(Dr)からなる4人組バンド。高校の同級生だった谷口、古賀、小泉を中心に結成され、のちに飯田が合流し、現在の陣容となり、地元大阪を中心に活動を展開する。2012年に参加した「キューン20イヤーズオーディション」で4000組の中から見事優勝を射止め、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブのオープニングアクトを務め、注目度が急上昇。自身の企画ライブは軒並みソールドアウトを記録する。2013年4月には活動の拠点を東京に移し、バンド初の全国流通盤となる1stミニアルバム「僕がCDを出したら」をリリースし、夏には「ROCK IN JAPAN FES」「SUMMER SONIC」「SWEET LOVE SHOWER」など大型フェスに多数招へいされたことで知名度を全国区のものとする。そして2013年9月シングル「盛者必衰の理、お断り」でメジャーデビュー。翌10月に1stフルアルバム「DOPPEL」を発表した。