音楽ナタリー PowerPush - IKE V PROJECT

tatsuo×マオ(シド)×カリスマカンタロー 新ジャンル“V系ダンスバンド”育成プロジェクト始動

シドのボーカリスト・マオ、“ゴールデンボンバーの中の人”としても知られるtatsuo、ダンサーと実業家の両方の顔を持つカリスマカンタローがプロデューサーとして参加する「IKE V PROJECT」が始動した。

4月25日に千葉・幕張メッセで行われた「ニコニコ超会議2015」で概要がアナウンスされたこのプロジェクトは、ソニー・ミュージックレーベルズ、マーヴェリック、ニコニコ動画が携わり、ヴィジュアル系の新たな聖地とされている池袋から“V系ダンスバンド”という新たなジャンルを発信すべく立ち上げられた(参照:シド・マオ、tatsuo、カリスマカンタローが“V系ダンスバンド”育成)。プロジェクト参加メンバーの応募資格は特定のレーベル、プロダクション等との専属契約がない15歳以上の男性。バンド部門、プレイヤー部門、ダンス部門、ダンスボーカル部門の4部門で参加者を募り、審査に通った応募者は研究生としてバンドを結成し、活動していく。

今回音楽ナタリーでは、「IKE V PROJECT」のプロデューサーに就任したマオ、tatsuo、カリスマカンタローにインタビューを行い、プロジェクトのあらましや求める人材を聞いた。

取材・文 / 中野明子 撮影 / 佐藤類

始まりはお好み焼き屋

──先日の会見では「IKE V PROJECT」のアイデアは、マオさんとカリスマカンタローさんが、プライベートでお好み焼き屋で食事しているときに浮かんだとおっしゃっていました。

マオ 去年の冬だったっけ?

カリスマカンタロー そうだね。11月か12月だったね。

──ちなみにカリスマカンタローさんは2013年1月頃にご自身のブログで、ヴィジュアル系とダンスを融合させたいといったことをつづっていらっしゃいましたね(参照:SID祝1位|カリスマカンタローオフィシャルブログ「カリスマな毎日」Powered by Ameba)。

左からtatsuo、マオ、カリスマカンタロー。

カリスマカンタロー ああ! そういえば! 今思い出しました(笑)。だから約2年前から始まってるとも言えますね。

──皆さんはそれぞれプロジェクトが始まる前から面識があったんでしょうか?

マオ はい。カリスマカンタローくんとは友達の紹介で知り合って、月に1度くらい食事に行く仲で。一昨年はシドの野外ツアー(「SID 10th Anniversary TOUR 2013」)にゲストとして参加してもらって、仕事でのつながりも増えていって。tatsuoくんは同じ福岡の出身で、福岡にいた頃に対バンもしていた仲だったんですよ。上京後はお互いそれぞれに活動してたんであまり接点がなかったんですけど、最近またこのプロジェクトをきっかけに“ちゃんと”知り合った感じですね。

tatsuo “ちゃんと”ね(笑)。昨年末に突然、マオくんからラブコールから来たんですよ。まず食事しようかっていう話になって、マオくんとカリスマカンタローくんが行ったところと同じお好み焼き屋だったのですが、お好み焼きを食べさせてもらえなかったという。

マオ だってダイエットしてるって言ってたから(笑)。粉モノは避けたほうがいいかなって。だからイカ焼きを食べてもらいながら話し合いをしました。

──3人がそろって打ち合わせをしたのが昨年末ということでしたら、かなり早いスピードでプロジェクトが展開していったわけですよね。3人だけの話し合いからどうやって、事務所やレコード会社を巻き込んでいったんでしょうか?

マオ 「こういうのやるから」と事務所やレコード会社に伝えたら、すぐに「いいじゃん!」ってなったんですよ。そこからの展開が早くて。これまでの経験上、こんなにうまく物事が進んだことはあまりなくって、気付いたら会見の日を迎えた感じなんです。

ライバルがいたほうが燃える

──このプロジェクトにおける皆さんの役割は決まっているんでしょうか?

マオ

マオ 決まってますね。僕は全体を見つつ、「IKE V PROJECT」で発表する楽曲の作詞を担当すること。あとはボーカリストなので、応募してくる子の歌も見ていきたいですね。

tatsuo 僕は楽曲の制作ですね。どういう子たちが応募してくるかわからないんで、その子たちにあわせて曲を作っていくことになります。それとバンドのアンサンブルとか、楽器面のサポートになるかな。

マオ あとはバンマス的な役割を担ってもらうことになるかもしれませんね。

カリスマカンタロー で、僕は2人をワッショイする役目です(笑)。

マオ 違うでしょ!(笑)

カリスマカンタロー (笑)。まあ、僕は応募者のダンスを見ることになると思いますが、あくまでもこれはバンドプロジェクトなんで、バンドにダンスを入れるとどういうことになるのかという全体像をビジュアル化する役割も担ってます。ヴィジュアル系のバンドにヒップホップの要素やファッションを取り入れたりね。僕が関わることで、マオくんが今まで考えなかったような歌詞が浮かぶかもしれないし、tatsuoくんの楽曲に影響を与えるかもしれない。僕も2人から「こういうダンスにしたら?」とか意見をもらうことになるでしょうし。ただそれぞれ役割はありますけど、+αの部分は3人で話し合いながら進めていく形ですね。正直僕らもどんなバンドが生まれるのかまったく見えないんです。応募してくれる人たちによって形態もイメージも変わっていくので。その中で生まれてくるものを大切にしていきたいですね。

──マオさんは会見で「バンド編成にダンサーが入る形などを想定している」とおっしゃってましたね。

マオ あくまでもそれは1つのアイデアですね。従来のバンドの枠にとらわれたくないし、ホントにカッコいい人たちが集まってほしいと思ってます。

──自由度が高いんですね。プロジェクト自体は来年の春先まで続く長期的なもので、審査に通った参加者は研究生としてバンドを結成して活動していくことになるそうですね。バンドは1組ではなく複数作られる予定とか。

tatsuo

tatsuo ええ。ライバルがいたほうが燃えると思うんですよ。

マオ 僕はけっこう後輩の子のライブを観に行くんですけど、よくも悪くも楽屋が和気あいあいとしていて。俺らの若い頃ってホントに殺伐としていて、お互いライバル心を剥き出しにしてた部分があったんですよね。特にボーカル同士は絶対に友達にならなかったし。そうじゃないと生き残っていけなかった。

tatsuo 食うか食われるかの世界だったよね。あの当時のヴィジュアル系って。

マオ そこで育ったからこその粘り強さが自分たちにはあると思うので、そのよさをプロジェクトの中で伝えていきたいんです。

カリスマカンタロー ダンス界も同じなんですよね。大会ではほかのチームとバチバチするのが当たり前だったし。「なんだよ、あいつら黄色い声援浴びやがって」とか嫉妬してた。会えば「ウィーッス!」って握手するんだけど、そのあと会話がないとか(笑)。tatsuoくんも言ってるけど、ライバルって必要だと思うんですよ。「みんなで一緒に上がっていこうね」なんて、世の中そんなに甘くないですよ。火花を散らすような経験をして、お互いが上がったときにこそ認め合うことができると思うんです。だから切磋琢磨する場が必要。そういう意味で、今回のプロジェクトの中でバチバチしたらいいなと思ってます。

──研究生同士が火花を散らし成長していく現場を、プロデューサー陣で作っていくと。

カリスマカンタロー そうですね。僕らも研究生に対して火花を散らすかもしれませんし。

マオ シドのマオに対してちょっと優しいイメージを持ってる人は、プロジェクトの番組を観て鬼教官みたいな一面にびっくりする……かもしれません。

tatsuo そうなんだ(笑)。

IKE V PROJECT

応募資格
  • 15歳以上の男性(応募時点で中学校卒業以上の方)
  • 特定のレコードメーカー、プロダクション、音楽出版社と専属契約の無い方
  • 国籍不問
  • 東京都内で行われる審査に全て参加できる方(交通費は自己負担となります)
募集部門
  • バンド部門(形態不問)
  • プレイヤー部門(ボーカル・ギター・ベース・ドラム各パート)
  • ダンス部門(ジャンル不問。チームでのエントリー可)
  • ダンスボーカル部門(ジャンル不問)

※バンドもしくはダンスチームでエントリーの場合、審査の過程でメンバーのシャッフルや引き抜きの可能性アリ。

マオ

シドのボーカリストとして、2008年10月にシングル「モノクロのキス」でメジャーデビュー。2010年12月には初の東京ドーム公演を行い4万人を動員するなど高い人気を誇る。結成10周年を迎えた2013年1月には初のベストアルバム「SID 10th Anniversary BEST」をリリースし、キャリア初のオリコン週間ランキング1位を獲得。コンスタントにリリースやライブを重ね、ヴィジュアル系シーンを牽引する存在として活躍している。

tatsuo(タツオ)

ゴールデンボンバーの編曲およびレコーディングをはじめ、多数の若手バンドをプロデュースしている。アニメ「SKET DANCE」の4クール分の主題歌の作曲および編曲を手がけ、BABYMETALやももいろクローバーZの編曲およびレコーディングにも携わる。日本人ギタリストとしては初めて、アメリカの楽器メーカーMusic Man社とモニター契約を結んだ。

カリスマカンタロー

明治大学法学部在学中に、ストリートダンスを普及するために株式会社アノマリーを設立。ダンスバトル大会「DANCE@LIVE」を主催するなど、ストリートダンスの普及に務め、ダンスを軸にさまざまな事業も展開している。テレビ東京系「DANCE@TV」でプロデューサー兼ダンサーとして出演するなど多角的に活動中。