ナタリー PowerPush - 井手綾香
現役女子高生シンガーが伝える ピアノと歌の可能性
宮崎県の大自然に囲まれて育まれたみずみずしい才能──今年3月にミニアルバム「Portrait」でメジャーデビューした現役女子高生シンガーソングライター、井手綾香。その芯のある凛とした歌声を、長澤まさみが出演する「ハイチオールCプラス」のCMソングに起用されている「雲の向こう」で耳にした人も多いかもしれない。
今回ナタリーでは、豪華なピアニスト陣を迎えて、ピアノと歌だけで紡がれた2ndミニアルバム「Portfolio」をリリースする彼女に初インタビューを実施。ピュアでフレッシュなありのままの姿に迫った。
取材・文/もりひでゆき
子供時代は家族みんなで歌いながらドライブを
──100頭以上もの野生馬が放牧されていることで知られる宮崎県串間市の都井岬で育ったそうですね。幼い頃はどんな少女でしたか?
私の家の前は田んぼで、横が海で後ろが山なんですよ(笑)。なので、小さい頃はよく海で貝殻を拾ったり、水切りをして遊んでましたね。
──大自然と戯れる日々を。
とは言え、そんなにアウトドア派ではなかったので、家にあった叔母さんのアップライトピアノをおもちゃにして遊んでることのほうが多かったです。ピアノってペダルを踏むと音が伸びるので、それが面白かったみたいで。それがだいたい4歳ぐらいの頃だって親は言ってますね。で、その後、小学校1年生のときからちゃんと習い始めました。
──ピアノは楽しかったですか?
基礎を教えてもらって、だんだん弾けるようになっていくのは楽しかったです。ただ、課題曲が難しくなっていくにつれて「もうムリ!」みたいな感じになっていって練習はサボってました(笑)。CMで流れているような曲とか、よく家族で聴いていた洋楽をなんとなく弾いてみたりすることばっかりやってましたね。
──アメリカ人のお母さんはプロのダンサーを、日本人のお父さんはバンド活動をされていたそうですね。
そうなんですよ。だから2人とも音楽が大好きで。家族みんなで歌いながらドライブをすることが多かったので、私も小さい頃から歌うことが大好きでした。クルマの中では、だいたい60~70年代の音楽、CARPENTERSとかTHE BEATLESとかキャロル・キングとかを聴いてました。逆に邦楽は全くわからなかったです。小学校に入ると友達と好きなアーティストの話になったりするんですけど、「誰それ?」みたいな(笑)。
中2のときに初めて作った曲は「未来への扉」
──いつ頃から作曲をするようになったんですか?
中2の頃ですね。それまでもピアノを弾きながら即興で曲を作ったりはしてたんですけど、一回弾いた曲はもう二度と思い出せない感じだったんです。もったいないなあと思いながらも、楽譜をうまく書くこともできないし。で、中2のときに、録音の機材をお父さんがオークションで見つけてくれて、お金を出し合って買ったんですよ。そこから歌入りの曲を作るようになりました。曲を作りたいっていう気持ちがあふれだしていた時期だったので、不思議とすぐに作れましたね。
──一番初めにできた曲って覚えてます?
覚えてます! 「未来への扉」っていう曲でした。そのとき初めて作詞をしたので歌詞はもうズタボロでしたね。それまで歌詞の意味をわからずに洋楽ばかり聴いてきたので、その言葉の響きがメロディに合ってるかどうかっていう感じでしか歌詞をとらえてなかったんですよ。だから全体として歌詞を読むとズタボロな内容になってたと思うんですよね。
──でも言葉とメロディの融合はすごく大事なことではありますよね。
それは歌う自分にとっても、聴いてる人にとってもすごく大事だと思いますね、うん。でもやっぱり歌詞としてちゃんと意味が通ってないといけないし、伝えたいことが伝わらないといけないと思うので、それ以降は邦楽を聴いたりしながら歌詞を勉強するようにもなりました。歌詞は今もすごく苦戦しますね。
──最初にできた「未来への扉」は、誰かに聴いてもらいました?
両親に聴いてもらったらすごくいいって言ってくれたんです。うちの親は音楽に関してはすごく厳しいのに、お母さんなんて泣きだしちゃって(笑)。で、お母さんの友達つながりで音楽関係者の方にも聴いてもらうことができて、そこからデビューの話につながっていったんですよね。
──え、初めて本格的に作った曲がデビューのきっかけになったと。すごいですね、それ。
1曲目からそういう話になっちゃって(笑)。一応自分の中では、これからがんばっていこうっていう気持ちで書いた曲ではあったんですけど、今聴くと何が言いたかったかわからない曲だったのでちょっとビックリしましたね。でも、小学校1年のときから歌手になりたいっていう気持ちはずっと変わっていなかったので、それが叶いそうだっていう現実が信じられなかったけどうれしかったです。その時点ではまだ1曲しかなかったので、早く次の曲を書かなきゃっていう焦る気持ちもありましたね。
井手綾香(いであやか)
1993年生まれのシンガーソングライター。アメリカ人でプロダンサーだった母と、福岡でバンド活動をしていた日本人の父とともに、100頭以上もの野生馬が生息する地として有名な宮崎県串間市都井で育つ。4歳からピアノを始め、2009年7月に九州限定インディーズアルバム「TOY」を発表。2011年3月にピアノと歌だけで制作されたミニアルバム「Portrait」でメジャーデビューを果たし、収録曲「雲の向こう」が「ハイチオールCプラス」のCMソングとして話題を集める。2011年8月に2ndミニアルバム「Portfolio」をリリース。現在は宮崎市内の高校に在学中。