ナタリー PowerPush - 堀江由衣
ほっちゃん伝説を徹底検証 1万2000字インタビュー
「ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!」
──1998年にはソロシングル「my best friend」で個人名義のソロデビューも果たし、2000年には1stアルバム「水たまりに映るセカイ」が発表されました。その頃からライブの回数も規模もだんだんと大きくなってきたと思いますが……堀江さんと言えば、ライブでの熱狂的な盛り上がりを表すエピソードとして有名な「ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!」がありますが、これはご存知ですか?
はい(笑)。
──では、この原典は?
あー、知らないです、私。
──ニュースメディアの「電撃オンライン」さんが2004年に掲載したライブレポートで、会場の四方八方でこだまする「ほっちゃーん!」というファンの歓声が文字で表現されたものなんですよ。
アハハハハハハ!!
──ファンの間では諸説混じって意味合いが進化してますけど。ちなみにこのニュースの編集担当が、今ナタリーの編集長をやってるんですよ。
へぇー(笑)。いや、なんかこれが流行ったことだけは知ってたんですけど、私は当時パソコンを持ってなくて、情報にも全然うといので、よくわかんなかったんですよ。へぇー。ホァーッ! アハハハハハ。
──2009年の日本武道館公演(「堀江由衣をめぐる冒険2 ~武道館で舞踏会~」)は僕も拝見しましたが、1万人の歓声はすごかったです。でも、もともとはどちらかと言えば引っ込み思案だった人が、あの1万人のファンを前にすごく堂々としてますよね。しかも、あの武道館を舞台にものすごくゆるーいストーリーを展開させるという。
長いコントですからね、あれ。すいません(笑)。ほかの方にも「武道館でああいうことやったのはほっちゃんが初めてだよね」みたいな感じで言われるんですけど、あんまりほめられてる感じはしないです(笑)。でもやっぱりステージは毎回緊張します。あの武道館のときも……1、2曲目って特に緊張するので、実は工夫が施されてたんです。1曲目は私、イスに座って出てきましたけど、あれはなぜかというと、1曲目から立って踊っちゃうと緊張しすぎて息が上がり過ぎちゃって歌えなくなっちゃうから。
──あ、単純に演出上の理由じゃなかったんですね。
はい。リハーサルのときはなんともないんです。なんだったら一番元気なんですよ、1曲目だし。ですけど本番は緊張してておかしな呼吸になるから「すいません、イスに座っていいですか」って(笑)。私はホントに人前で自分をさらけ出すみたいなことが得意じゃないんだと思うんですよ。だから、ほとんど自分の言葉で喋ってるとこがなかったんですよね、武道館では。ほとんどセリフで。
──本編中はひたすら決まった世界観を演じきっていると。
セリフを覚えるのも得意じゃないから、それはそれで大変だったんですけど。それでやっとお客さんにも慣れてきた最後のアンコールパートで、ようやくフリートーク。
──堀江さんの活動を見ていていつも気になるのが、そこなんですね。そんなに前に出るタイプじゃなさそうなのにものすごい大舞台に立って、しかもすごく堂々としている。そのバランスをどう保っているのかお聞きしたかったんですよ。
やっぱり舞台に出る前ってすごい緊張しますし、「別に私が出ても……」みたいな気持ちになったりはするんですけど、それをあたたかく「待ってたよー!」って皆さんが迎えてくれるから「私はここに出てもいいんだな」みたいな気持ちになれるというか。そこはホント皆さんに支えられてきました。
「ユニット募集中!」
──ここ数年、いわゆる“声優アーティスト”の盛り上がりが活性化してますよね。堀江さんも先輩たちの活動をお手本にしてこられたとは思いますが、今ここまでシーンが盛り上がっているのは、堀江さんたちの活躍があったからこそだと思うんですよ。そういう“王者”としての自覚はないですか?
いやいやいやいや。何もしてないですからねー。
──たぶん堀江さんの登場がなかったら、声優アーティスト、アニメソングというジャンルがここまで活性化することはなかったんじゃないかと僕は思います。
ありがとうございます。それ、ぜひ書いてくださいね(笑)。
──堀江さん自身はその状況をどう見てるんだろうなと思って。そんなに考えてないですか?
そうですね……逆にそんなに力を持ってた時期があるんだったら「私なんでそんなに有効に使わなかったんだろう、それを」っていう(笑)。なんですかね、たぶん自分のやりたいことしかやってこなかったからそう思うのかもしれないですね。例えばこの業界のことを考えて「もっと盛り上げなきゃ」という気負いがあればそう思ったのかもしれないですけど、新曲を出すタイミングも不定期だったりしますし、ライブも初めの頃はあんまり興味がなかったからやってなかったですし。ライブをやるようになったのも、私が単純にライブDVDを観ることにハマったからなんですよ。
──ほかのアーティストさんのDVDを?
そうそう(笑)。「ライブDVD楽しいー!」みたいな感じでちょっとハマった時期があって。
──自分のライブDVDを作りたいからライブをやる、みたいな。
そうなんです。単純にそういうのがきっかけだったりして。
──ちなみに、そのきっかけになったDVDは何ですか?
一番最初のきっかけになったものは何だったかなー。忘れちゃいましたけど、そこからいろいろ観始めるようになって、一番好きだったのはKAT-TUNの「海賊帆」っていうDVD。それが好きすぎて、いろんな人に「これいいから観て」って配っては、何度か買い直して……たぶん全部で6、7枚は買いました。
──もともとユニットものが好きなんですよね。何人かが集まっているがゆえの個々のポジション、それこそ「ダーティペア」も2人の関係性みたいなのがありますし、そういうのが堀江さんの中で重要なんですかね。今はソロとしての活動だけですが、今後もユニットをやる機会があればやりたいですか?
今でもめちゃめちゃ思ってて、なんでみんな入れてくれないんだろうなと(笑)。すっごい入りたいんですけど、あんまり誘われなくて。
──誘われないんですか(笑)。
なんか誘ってもらえないんですー。気付いたら同じレーベルでもユニットができてて「えっ、なんで私を呼んでくれないの!?」って。やりたーい! すごくやりたいのにホントに寂しいー。
──これを読んだ音楽関係者が、声をかけてくれるかもしれないですよ。
ですね! じゃあちょっと見出しで大きめに書いてもらえますか? 「ユニット募集中!」(笑)。ホントやりたいんですけどねー。楽しいなぁ、ユニット。
2013年には……
──確固とした目標みたいなものはあります? ここを超えたいとか、誰々を超えたいとか、そういった具体的な目標、到達点は。
そこまでハッキリした目標は、仕事上では今のところないですね、実は。目標を定めてそこに向かっていく努力をするほうがわかりやすいでしょうし、そういうふうに生きている人が大好きですし憧れるんですよ。だけど自分でやるとうまくいかないというか、うまく目標を設定できなかったりして。でも、1つひとつの作品で、監督さんとか音響監督さんとか、かかわってくださる方みなさんに満足してもらえるように結果を出したい、というのは常に考えています。プライベートの目標としては、2013年には結婚したいと思ってますけど(笑)。
──ずいぶん具体的ですね(笑)。
期限決めないとずっとできないかもと思って。あと、占い的に良いって言われたんです(笑)。「2013年、2014年の運勢が良いから、ちょっと結婚とかいいですよ」って言われてて。
──では「堀江由衣はどうあるべき」という指針はありますか?
私の仕事はエンタテインメントなので、歌には私の思いももちろん反映されるんですけど、受け取る人にはひとつの“遊び道具”と思ってほしい、と考えています。ゲームソフトのように、1回クリアして終わりじゃもったいないから、できるだけ長く遊べないかなと。ライブの構成でも、今まであんまり注目されてなかった曲をライブのおいしいところに持ってくると、それだけで注目度が変わって「改めてこの曲を好きになりました」って言ってもらえることがあるんですよ。そうやって曲が育っていくように、長く一緒に遊べる曲を作れたらいいなっていうのはなんとなく念頭に置きながらやってます。
──やっぱりファンありきのエンタテインメントというか、ファンを喜ばせたいという気持ちがすごく強いんでしょうか。
そうですね。聴いてくださる方にはただ楽しんでほしいですし、何よりも飽きないで観てもらえればいい。その一瞬だけ楽しくて、ちょっとだけ幸せな気持ちになって、次の日に筋肉痛はあるけれども心が元気になって通勤通学ができるような。そのぐらいでいいですし、それがすごいことだと思ってるんです。
──なるほど。よくわかります。
ホントに楽しんでほしいっていうだけですね。面白いと思ってもらえるんだったら、別に「ホアーッ!!」ってニュースになっても全然いいし(笑)。曲も出したあとはすべて受け取り手の側にあるものだと思うので、ホントに楽しいと感じてもらえるものを提供していければいいなっていう考え方ですね。
CD収録曲
- インモラリスト
[作詞・作曲:清竜人] - True truly love
- HOLIDAY
- インモラリスト (off vocal ver.)
- True truly love (off vocal ver.)
- HOLIDAY (off vocal ver.)
初回限定盤DVD収録内容
- 「インモラリスト」MUSIC CLIP
堀江由衣(ほりえゆい)
東京都出身の女性歌手/声優。声優としてのキャリアをスタートさせた後、1998年に歌手デビュー。アニメやゲームのキャラクターソングも数多く手がけており、絶大な人気を得ている。現在までに“永遠の少女”然とした自身のキャラクターと重なるオリジナル音楽作品を、コンスタンスに発表している。