ナタリー PowerPush - 堀江由衣

ほっちゃん伝説を徹底検証 1万2000字インタビュー

中高一貫して暗黒時代

──堀江さんは声優としての活躍もさることながら、同時に日本武道館のステージに立つアーティストでもありますよね。探偵ごっこに夢中だった時代には「ザ・ベストテン」「トップテン」など歌番組もさかんでしたが、歌手やアイドルへの憧れはありませんでしたか?

あんまりなかったですね。どちらかというともうちょっと大人になってから、安室奈美恵ちゃんとかSPEEDとか、歌ってガッツリ踊るみたいな人たちを観て「カッコいい!」ってカラオケ行って歌ったりとか、そういうことはしてました。

──どちらかというと「ダーティペア」のほうに夢中で。

そうですね。探偵への憧れのほうが強く、「なんか事件解決したーい」みたいな(笑)、ちょっとぼんやりした子供だったので。ただ唯一「ユニットもの」は好きでした。ジャニーズとかもそうですけど、集団で同じようなキラキラしたステージに立つのは楽しそうだなぁって。のちに私もAice5(堀江由衣、神田朱未、たかはし智秋、浅野真澄、木村まどかの声優5人ユニット。2005~2007年に活動)として、子供の頃によく観に行っていた横浜アリーナでライブをやらせてもらえたんです。そのときは「あっ、あの頃思っていたことが叶った!」と思いましたね。

──中学生、高校生ぐらいになると、カルチャーに染まったりスポーツに走ったり、自我がしっかりと芽生えてきますよね。その時期はどういう女の子でしたか?

中学生の頃は、私はまだまったく自我が芽生えてなかったです、たぶん(笑)。中学校ではバレーボール部に入ったんですけど、私、運動がとにかく苦手で嫌いで。

──それでなぜバレーボール部に(笑)。

ダーティペアの相方と一緒に入っちゃったんですけど、なんか下手だし、疲れるし、もうしんどいよーみたいになって、毎日学校行くのが嫌になっちゃって(笑)。だからわりと暗黒時代なんです、学生時代って。

──中高一貫して?

中高一貫して暗黒時代ですね……。高校では「もう二度と失敗はしまい」と思って部活には入らなかったんですけど、やっぱり学校というところにいまいちなじめなくて。

声優・堀江由衣の誕生

──そんな中で、声優の道へと進む分岐点はどのように訪れたのでしょうか。

高校卒業後は短大に通ってたんですけど、短大1年生のときはちょうど声優雑誌が出始めた頃で。それで、いつもの相方がですね……。

──かなりの重要人物ですね(笑)。

私のキーパーソンなんですけど(笑)、その子が声優雑誌を持ってて、一緒に読んでたら、事務所の養成所がオーディションの告知を載せてたんです。その養成所は普通に入ると月謝が発生するんですけど、そのオーディションは無料の特待生みたいな感じの募集だったんですよ。タダでオーディションが受けられて、しかも林原めぐみさんや三石琴乃さん、椎名へきるさんと有名な方が勢揃いしてる事務所だったので「ここは間違いない、安心」みたいな。

──でもオーディションを受けるのって、プロセスも多いし、結構な勇気と覚悟がないとなかなか踏み込めないですよね。

少し遊び半分みたいなところも当時はまだあったと思うんですよね。「ちょっと受けてみようか」と言って2人でキャッキャ相談しながら履歴書を書いて。2人の中でいろんな遊びが流行ってて、その延長線上にあったんだろうなっていう気はするんですけど、そうでもないとオーディションをひとりで受けるタイプではないので、今になって思えばよかったなと。

──結果、実際にかなりの倍率を勝ち抜いて特待生として合格されましたよね。それは小学生時代からの積み重ねが生きていると思いますか?

堀江由衣

いや、関係ないと思います(笑)。全然できてなかったと思いますし。そのときは、あまり色の付いてない人が求められたんじゃないかなと思ってます。即戦力じゃなくてもいい、みたいな。

──辛いことや「やめとけばよかった」と思うことはなかったですか?

子供の頃の延長で始めたから、声優の仕事イコール「演技」だとはあんまり考えてなくて、それさえ知らずに来ちゃった業界だったので、初めはやっぱりビックリすることが多かったです。同じオーディションで受かった子たちがすごくしっかりして見えて、「置いてかれたらどうしよう」っていつも不安でしたし。基礎の発声練習をやっていた1年目にもちょっとずつお仕事をいただけたんですけど、何が求められてるのかがまずわからないし、一生懸命やるんだけど「ここ、もうちょっとこうしてください」の「こうしてください」が何を指してるのかわからないんですよ。どの現場に行ってもできないことだらけで、ずっと足を引っ張っていたと思いますし、本当に大変でした。

──でも「自分は声優を職業としてやっていくんだ」っていう自覚はあったんですよね。

きっとあまりよくわかってなかったですね。今でもそれがあるのかどうか私もわかんないんですけど(笑)、とにかくやらなきゃいけない状況になってると。そんな中で、できるだけ良いものにしたいっていう気持ちと、人に迷惑をかけたくないっていうその2点だけでがんばってたら……今に至ります(笑)。

──大変ながらも挫折することなく、今では第一線で活躍されているわけですよね。

とにかくいっぱいいっぱいな状態でワーッとなりながらやっていて、3~4年ぐらい経った頃に、突然ちょっとだけ周りが見え始めたんです。ちょっと専門的な話ですけど、声を当てるときってマイクの前に入るタイミングが結構大事なんです。主役のマイクにあまり入らないようにしてあげるとか、次すぐセリフがある場合はその前の人のマイクは避けるとか、暗黙の了解みたいなルールがあるんですけど、それは感覚的なものだから誰かが教えてくれるものではないんです。新人の頃の自分に対して「みんな気を遣ってくれてたんだな」とか「先輩たちが避けてくれたりしてたんだろうな」と気付いた瞬間があって、そのときに「こうするとみんなスムーズに行くんだ」とか「お芝居をこう変えれば聞こえやすくなるのかな」というのがちょっとずつわかり始めてきたんです。

歌手・堀江由衣の誕生

──歌手としてのデビューは、キャラクターソングが最初になるんですね。

はい。「フォトン」というOVAシリーズ(1997~1999年)で、アニメの初レギュラーながらいい役をやらせていただいていて、その流れでなぜかエンディングテーマを私が歌うことになって。

──突然「歌って」と言われて、特に抵抗もなく歌うことができた?

そうですね。当時、先輩の声優さんたちも歌手として活躍されていたので。

──仕事として軌道に乗ってくれば、そういうこともあるだろうと。

あるかもしれないなとは思ってたんですけど「こんなに早くあるとは」とは思いました、やっぱり。

──最初に歌ってみて、どうでした? イケると思いましたか?

いやいや全然! なんかもうホントに、ふふふふ(笑)。初めて自分の歌を聴いたときは「こんなに歌がヘタなんだ!」って思いましたね。

──そこから、声優業と同じくかなりの比重を占める“アーティスト業”がスタートするわけですけど、こちらもやはり自分の中で意識が切り替わる瞬間はありましたか?

最初の頃って「だいたいこういう曲がいいと思うんですけどどうですか」って言われて、よくわかんないまま「ハイ大丈夫です」って答えるような感じでしたけど、少しずつ「どっちがいいですか」と言ってもらえるようになって、それで「こっちがいいです」と答えるうちに、だんだんこちらの意見も聞いていただけるようになって。そこからようやく歌を歌うことの意義が見えてきて、楽しくなってきたっていうのとはまたちょっと違うのかもしれないんですけど、やりがいを感じるようになったというのは大きかったかもしれないですね。

──人前に立って歌うことには抵抗はなかったですか?

あんまりなかったですね。最初に歌でステージに立ったのはCDドラマのイベントだったと思うんですけど、キャラクターソングだと「堀江由衣」としてひとりでボンッと人前に出るというより、作品のベールを1枚かけた状態ですよね。だから少しは気楽な気持ちで挑めたというか、与えられたひとつの出来事として受け止めて「よし出ていこう、歌おう」みたいな気持ちで。ただ、やっぱりお客さんが反応してくれたりノッてくれたりするのは本当にありがたかったですし、それにだいぶ助けられたなと思います。

ニューシングル「PRESENTER」 / 2011年5月25日発売 / スターチャイルド

  • 初回限定盤[CD+DVD] 1890円(税込) / KICM-91337 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 1200円(税込) / KICM-1337 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. PRESENTER
    TV アニメ「DOG DAYS」ED 主題歌
  2. Endless Star
初回限定盤DVD収録内容
  • 「PRESENTER」MUSIC CLIP

12thシングル「インモラリスト」 / 2011年2月2日発売 / スターチャイルド

  • 初回限定盤[CD+DVD] 1890円(税込) / KICM-91326 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 1200円(税込) / KICM-1326 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. インモラリスト
    [作詞・作曲:清竜人]
  2. True truly love
  3. HOLIDAY
  4. インモラリスト (off vocal ver.)
  5. True truly love (off vocal ver.)
  6. HOLIDAY (off vocal ver.)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「インモラリスト」MUSIC CLIP
堀江由衣(ほりえゆい)

堀江由衣

東京都出身の女性歌手/声優。声優としてのキャリアをスタートさせた後、1998年に歌手デビュー。アニメやゲームのキャラクターソングも数多く手がけており、絶大な人気を得ている。現在までに“永遠の少女”然とした自身のキャラクターと重なるオリジナル音楽作品を、コンスタンスに発表している。