音楽ナタリー PowerPush - wowaka(ヒトリエ)×山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)
“ダンスロックバンド”の胸中
2014年にメジャーデビューを果たしたヒトリエとTHE ORAL CIGARETTES。この2組は同年11月にそれぞれフルアルバムを発表するなど、精力的な活動を続けている。今回ナタリーではライブ競演がきっかけで出会い、居酒屋で意気投合したという両バンドのフロントマン、wowaka(ヒトリエ)と山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)に登場してもらい、“高速四つ打ち”や“ダンスロック”が盛り上がりを見せる昨今のロックシーンについて思うことなどを語ってもらった。
取材・文 / 田中和宏 撮影 / 佐藤類
人見知りの2人が出会った
──2人は最近知り合って、飲みに行くような仲になったそうですね。
山中拓也 一緒に飲みに行ったときは楽しすぎて、2人でけっこうベロベロになりました(笑)。ほんと負のオーラも出てたと思うんですけどね。意気投合できたのは楽曲に対する感情のぶつけ方が似てたからで、僕もムカつくとかそういう感情が強めなんで、それを2人で共有して、「じゃあこの力使って面白いこと2人でやろうぜ」みたいな(笑)。
wowaka 「いろんなことがムカつく」みたいな話で盛り上がったけど、お互いすごく真面目だと思ったんですよね。悪い意味じゃなくて、集中すると周りが気にならなくなっちゃうというか。
──そもそも出会いのきっかけはなんだったんですか?
wowaka 9月にあったライブイベント「JAPAN'S NEXT vol.4」で対バンをした日が初対面で、あのとき楽屋が一緒だったんだよね。
山中 そうそう、ヒトリエとオーラルが同じ楽屋。でもお互いシャイだからいつしゃべったらいいんだろう?ってなってましたね(笑)。
wowaka お互い距離感を探りあってたけど、拓也くんが「ヒトリエ聴いてます!」って話しかけてくれて。
山中 ヒトリエは初期から聴いてましたし、ずっと対バンしたかったし、ツアーでも一緒にやりたいって思ってたんです。話す前はめちゃくちゃカタい人だと思ってたんですけど、実際はフランクな方で。
wowaka ははは(笑)。
ヒトリエがきっかけでボーカロイドを聴くように
山中 とても計算された音楽をやってるバンドなのでwowakaさんは頭もよくてドライな部分がありそうって勝手に想像してました。おこがましいですけど自分にも通じる部分があるなって思った。
wowaka 僕もオーラルを聴いた最初の印象は頭がよくていろいろ計算してできる人たちなんだろうなっていう。でもメジャーデビューシングルの「起死回生STORY」を聴いて、印象が少し変わったんですよね。計算された構築美の要素が多いのかと思っていたら、怒りやモヤモヤした気持ちをエネルギーにしてそれをバンドで表現できてる人たちだなって。それはライブパフォーマンスからも感じました。それで拓也くんには近いものを感じて、中身をもっと知りたいなっていう気持ちが実はあったんです。
──wowakaさんはヒトリエの結成前にボカロPとして活躍してましたが、山中さんはその頃からwowakaさんを知ってたんですか?
山中 いえ、ヒトリエから入ってハマってからwowakaさんが1人でやってた頃の楽曲の存在を知ったんで、時系列的には逆なんですよね。
wowaka それって珍しいと思うな。
山中 「これをバンドでやったらこうなるんや」みたいにwowakaさんの昔の曲をたくさん聴いて、“wowaka研究“みたいなことをしてました(笑)。
wowaka マジか(笑)。
山中 僕はボーカロイド曲は作ったことないんですけど、めっちゃ聴くんですよ。米津玄師さんの大ファンでもあるけど、もともとはヒトリエがきっかけなんです。
バンドマンはPVが大切
──ここでビデオクリップについてお伺いしたいんですが、2組とも凝った映像のPVがありますよね。
山中 そうですね。例えば「The BKW Show!!」(2014年11月発売の1stフルアルバム)の1曲目「嫌い」は楽曲ができたときに歌詞をしっかり伝えたいし、インパクトもしっかり残したいからPVはドラマ仕立てがいいですってフカツ(マサカズ)監督にお願いして作って、リード曲の「STARGET」は僕らのパフォーマンスが伝わるような内容にしました。今PVってバンドを知るきっかけとして8割方を占めるんじゃないかってくらい大事なものだと思うんですよね。YouTubeが普及して、そこから知ってくれるお客さんが現状とても多いなって感じますし。だからこそPVにどれだけ注力できるかっていうのは大事だと思うんですよね。
──これはwowakaさんも近い意見を持っていそうですね。
wowaka 完璧に同じです(笑)。凝った部分だと「インパーフェクション」のPVは4時間半くらいかけてタイムラプス撮影をして、3分半の映像にするっていうことをしましたね。
山中 すごいなそれ。
wowaka 「WONDER and WONDER」(2014年11月発売の1stフルアルバム)を出すにあたって、僕らもPVを2本作らせてもらったんですよ。パッケージのアートワークをやってくれた永戸鉄也さんに「5カウントハロー」、島田大介さんには「インパーフェクション」を撮っていただいて。映像も含めてアルバムを1つの作品としてぎゅっとした塊にしたかったんです。PVが2つあってどっちも見せ方が違うんですけど、片方が……って拓也くんと同じこと言っちゃうね(笑)。
山中 ははは(笑)。聞かせてください。
wowaka 僕は常々、音楽で発明をしたいなと思ってるんですね。今まで体験したことのない体とか心の動き方ができる作品や、ポップで大衆にちゃんと響くようなものをずっと作りたい。それが「WONDER and WONDER」の中で一番うまくいったのは「5カウントハロー」。アートディレクターをやってくれた永戸さんと話し合って、今まで観たことのないような映像で観た人に新しい体験をさせたいっていう気持ちを反映して作ったんです。このPVとアルバムがセットで発表できたっていうのはすごく自分たちの中で大きな成果でしたね。
山中 「常に音楽で何か発明をしたい」ってすごい素敵ですね。お客さんってバンドに非日常的な何かを求めてきてると思うし、自分にはない思想を少しでも掴みたいだろうし。ヒトリエは新しいものを見せてくれるっていうイメージがやっぱりぴったりだなって思ってます。新しいことをどんどんしていきそうだなって期待感がすごくあるし、考えてることも最高だと思います。
wowaka この対談、なんか気持ち悪い感じになってませんか?(笑)
──(笑)。ちなみに山中さん、「嫌い」のPVのイメージっていうのは監督が考えたんですか?
山中 楽曲と歌詞を渡して、それについて話し合いをして、イメージを大野(敏嗣)監督がまとめてくれました。でも撮影現場の中で僕らは「最後にこういうカット入れたいです」とかお願いして時間をもらいつつ、しっかり詰めていきました。僕、けっこうYouTube好きなんでいろいろな映像を観てるんですが、PVはこだわりが反映されてないと観る人の心に響かないだろうなって思いますし。
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- ヒトリエ 1stフルアルバム「WONDER and WONDER」 / 2014年11月26日発売 / 非日常レコーズ
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3672円 / AICL-2785~6
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3672円 / AICL-2785~6
- 通常盤 [CD] 3024円 / AICL-2787
CD収録曲
- 終着点
- インパーフェクション
- N/A
- 5カウントハロー
- ピューパ・シネマ
- 癖
- NONSENSE
- ボートマン
- なぜなぜ
- 我楽多遊び
- ゴーストロール
- センスレス・ワンダー
初回限定盤DVD収録内容
<LIVE at LIQUIDROOM 20140418>
- ワールズエンド・ダンスホール
- (W)HERE
- センスレス・ワンダー
- 踊るマネキン、唄う阿呆
- ローリンガール
- THE ORAL CIGARETTES 1stフルアルバム「The BKW Show!!」 / 2014年11月12日発売 / A-Sketch
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3240円 / AZZS-28
- 通常盤 [CD] 2700円 / AZCS-1038
CD収録曲
- 嫌い
- モンスターエフェクト
- ハロウィンの余韻
- STARGET
- 自動販売機の男
- 僕は夢を見る
- リメイクセンス
- 起死回生STORY
- 大魔王参上
- 透明な雨宿り
初回限定盤DVD収録内容
~唇ツアー2014の巻~
- 出会い街
- 机上の空論に意味を為す
- mist...
- 大魔王参上
- 起死回生STORY
- Documentary of first one-man gig
ヒトリエ
wowaka(Vo, G)、シノダ(G, Cho)、イガラシ(B)、ゆーまお(Dr)の4人からなるバンド。ボーカロイド楽曲でサウンドクリエイターとして高い評価を集めていたwowakaが中心となり、ネットシーンで交流のあったシノダ、イガラシ、ゆーまおに声をかけ、2012年より活動をスタートさせた。同年12月には「ルームシック・ガールズエスケープ」、2013年4月には「non-fiction four e.p.」と立て続けに自主制作盤を発表し、同年4、5月に初のワンマンライブを行った。同年11月に開催されたワンマンライブ「hitori-escape:11.4 -非日常渋谷篇-」にて、ソニー・ミュージックグループ傘下に自主レーベル「非日常レコーズ」を立ち上げることを宣言。2014年1月にメジャーデビューシングル「センスレス・ワンダー」を発表し、2月にレーベル第2弾作品となるミニアルバム「イマジナリー・モノフィクション」をリリースした。4月には東名阪3都市を回るワンマンツアー「マネキン・イン・ザ・パーク」を行う。11月に1stフルアルバム「WONDER and WONDER」を発表し、12月から2015年1月にかけて初の全国ワンマンツアーを開催中。
THE ORAL CIGARETTES(オーラルシガレッツ)
2010年に奈良で結成された4人組ロックバンド。メンバーは山中拓也(Vo, G)、鈴木重伸(G)、あきらかにあきら(B, Cho)、中西雅哉(Dr)。アグレッシブかつ緻密に構築されたサウンドでファンを増やしていき、2012年には「MASH FIGHT!」にてグランプリを獲得する。2013年8月、1stミニアルバム「オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証」をリリース。2014年7月にメジャー1stシングル「起死回生STORY」、同年11月にアルバム「The BKW Show!!」を発表。アルバム発売後に開催したワンマンツアーは全公演ソールドアウトとなった。